にじさんじ7周年で“更なる一体感”を見せつけた8人のライバー 『OVERTURE Nighttime Stage』ライブレポート

大成功の裏にあった、それぞれの葛藤と努力

 ここからはすこし違う角度から本ライブの構成、ならびにその先の話題にフォーカスしてみよう。

 今回のライブは計8人。男性4人、女性4人と分けられていることはすぐに気づくが、じつはモチーフカラーが赤・青・黄・白(もしくは灰・銀)といった4色2人ずつに分けられ、しかも2018年から2023年までの6年のなかで、1年につき1人~2人の割合でバランスよくピックアップされているのがわかる。

 またよく見てみると、ゲーム配信(特にFPSタイトル)を通してこれまでに何度も絡んでいたり、公式番組の出演などを通して顔を合わせたことが多い面々でもある。

 一方で、8人の間に大きな差があるとすれば、歌・ダンスといった音楽ライブにまつわる経験値であろう。

 甲斐田晴はROF-MAOとVΔLZで、風楽奏斗はVOLTACTIONで、星川サラはソロ活動として、えるはかつてボーカルユニット・RainDropsのメンバーとして活動していた。グループやソロ活動とまではいかずとも、レオスは昨年のアニバーサリーフェスのライブ出演をしている。

 一方で、アルス、ローレン、ソフィアの3人は3Dモデルをつかったイベントや収録の経験はあっても、今回のような音楽中心のライブイベントに出演するのは初めて。実際、ライブ中のMCでは「最初は1曲踊るのもぜんぜんムリだった」とアルスが語るなど、想像よりも険しいスタートだったのは想像しやすい。

 さらに、“慣れている側”である風楽は前日にVOLTACTIONの初ライブ『Dynamic VOLT』で約2時間のパフォーマンスをこなしており、それまでの準備もふくめれば本ライブへの出演が相当大きな負荷であったことは想像に難くない。

 さて、この8人。全員が揃っての事前配信をしており、その際にはレッスンを通して育んだ仲の良さを思いっきりみせてくれていたわけだが、後日おこなわれた星川サラの個人配信で、彼女はとんでもないことを告白している。

 「準備期間の最初の方、最初なんだから当たり前なんだけど、全員集まったときに距離があった。個々ではそれぞれ仲が良いとかはあるだろうけど、全員集まったときの全体の空気は距離があった。最初だししょうがない、徐々に仲良くなっていくだろうと思っていた」

 「だけど、ライブも近づいてきて、全体曲の練習を初めてしたときに、その空気があまり変わらなくって。レッスンのときに、先生だけに返事をするみたいな。ワイワイするわけでもなく、ただやることをやる、みたいな感じの空気……。べつに悪いわけじゃないんだけど、去年を思い返したときに『この時点で空気感がちょっと違ったな』と思って、すごく焦りを感じた」

 「そこで初めて気付いたの、委員長の偉大さに! この人についていけば絶対大丈夫と思える安心感があった。当時はそこに気付けなかったし、逆にいまの自分には(それが)ないということに気づいて、『なにか考えて行動を起こさないといけない』と思って……大分意識が良くなったと思う」

にじフェス&OVERTUREライブの裏話させてくれの会【星川サラ/にじさんじ】

 その後、彼女はレオスに声をかけ、全員を集めて熱い想いを語ったという。「Virtual Strike」のラップパートは、こうした話し合いの結果生まれたようだ。

 ここでは星川の発言だけをピックアップしたが、レオスも振り返り配信のなかでこの件に触れている。他の出演者もまたすぐにスタンスに変化をみせたようで、大なり小なりライブイベントに向けての意識改革が必要だったと8人全員が感じていたことが伺える。

【雑談】にじフェスお疲れ様でしたの会【レオス・ヴィンセント】

 これまでのにじさんじでは、音楽メインのイベントを開催する際、どうしてもステージに立った経験のあるメンバーが出演することが多かった。ソロ活動やグループ活動に臨むメンバーは数年前よりもグッと増えており、そもそもライブの場もある程度限られているとなれば、仕方の無いことでもある。

 それに加えて個々人によって志向する活動も違えば、今回のアルスのようにデビューから5年以上が経過して初めて音楽ライブに出演する、というメンバーもまだまだ多い。端的に言えば「リアルライブ出演経験の差」が目に見えている状態なのだ。

 もしも星川やレオスがライブ練習の温度感や一体感に違和感を覚えていなければ、今回ライブの盛り上がりはまったく別種のものになっていた可能性がある。

 そんななか、5年ぶりとなる全国ツアー『にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin'in the Rainbow!』が開催されることが発表された。

 出演メンバーはすでに発表されており、そのなかには山神カルタ、先斗寧、小清水透、伊波ライ、レヴィ・エリファ、倉持めると、オリバー・エバンス、星導ショウ、栞葉るりなど、これまた有観客の音楽ライブに初めて出演するメンバーがチラホラと見受けられる。

 今回の出演メンバーが「共通衣装」を着れることに達成感や喜びを覚えていたように、来たるライブを経て大きな達成感や嬉しさを覚えるメンバーやファンがいるかもしれない。だが、あえていうのであれば、「選ばれただけではなく、何をステージで表現し、心に残してくれるか」も重要だ。

 予定されている公演の多くでライブ経験者と未経験者が混じっており、先にあげた星川やレオスのように、経験者が未経験者を引っ張り、よりよいライブ公演へと向かっていこうと動くこともありえるだろう。

 練習・本番・内容すべて含め、ワンチームとなって結束し、よりよく仕上がるように協力し合う。そうして互いを理解し、各々を高める流れは、“にじさんじの未来”にとって必要な期間になるのかもしれない。

 全国ツアーの初日は約2ヶ月後の2025年5月10日・仙台公演。そこから半年以上にわたって全国各地で開催されるライブの数々がどのような内容となるか、心待ちにしておこう。

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