電動シェーバーに“AI”を搭載して何が変わるの? 最新の6枚刃機種を試してみた

 スマホ、PC、ゲーム機、カメラ、XRデバイス……時代と共に進化を続けるガジェットたち。近年はAIの登場によって、搭載されるソフトウェアの進化も著しい。その波はついに「ひげそり(シェーバー)」界隈にも届いた。

 Panasonicが9月に発売した「ラムダッシュPRO 6枚刃」シリーズは、そんなAIを活かした機能を搭載したシェーバーだという。

 今回、実際にこの「ラムダッシュPRO 6枚刃」シリーズの中から『ES-L690U』を使う機会を得た。シェ―バーの国内マーケティング担当の福島千夏さんに本機の魅力を伺いながら、その剃り心地を体験してみた。

■ラムダッシュAI ナビ搭載のシェーバーとは? どんなもの?

左が2023年に発売された『LAMDASH PALM IN』

 

 Panasonicのシェーバーといえば2023年に発売された手のひらサイズの『LAMDASH PALM IN』の大ヒットが記憶に新しい。ワイヤレスイヤホンのケースのようなフォルムに、なめらかでスッキリとしたデザインが特徴で、そのシェーバーらしからぬ見た目が多くのユーザーの心を射止めた。

 現在、Panasonicのシェーバーのフラッグシップにあたる最新シリーズ「ラムダッシュPRO 6枚刃」だ。トップグレードである『ES-L690U』のほか、『ES-L670U』、『ES-L650U』、『ES-L650D』の計4モデルが存在する。

 今回は最新鋭、最高性能を誇る『ES-L690U』について紹介したい。

 まずは冒頭で紹介したラムダッシュAIナビを活用した機能について。「ラムダッシュAIナビ」と呼ばれる機能でヒゲの濃さを捉え、ヒゲが濃いと判断した際は「BOOST(ブースト)」モード、薄いと判断したときは「SOFT(ソフト)」モードへ、一秒間に233回の検知によって常に切り替え続ける。

画像:Panasonic

 現在BOOSTモードなのか、SOFTモードなのかは、ヘッドに搭載されたLEDの色から判別できるので、ヒゲを剃りながら、ある程度剃った箇所、まだ全然剃ってない箇所などを直感的に判別できる。さらにシェービング後、モニターでBOOSTとSOFTを使用した割合も確認できる。

深剃りなのに肌にやさしい

『ES-L690U』の断面

 ここからもう一歩「ラムダッシュPRO 6枚刃」について深く知るために、福島さんに、“担当者として推したいポイント”を3つ伺った。

まず福島さんが挙げたのは、「深剃り」と「肌へのやさしさ」だ。

 「“深剃り“と”肌へのやさしさ“は、最もユーザーの方が求める要素です。同時に、この2つを両立することは難しいのではないか、と多くの人が考えていることもアンケートからわかりました」と福島さん。筆者も特に疑いなく、“そういうもの”だと認識していた。「よく剃れるのに、肌にやさしい」という一見矛盾するかのような理想的な使用感は実際にヒゲを剃ってみることで強く感じた。後ほど詳しく見ていきたい。

 福島さんが2つめに挙げたポイントは外刃の「刃穴の配列」だ。内刃に被せてある網のようなパーツと理解いただければよいだろう。従来は6角形の刃穴がほぼ垂直に並んでいたため、ヒゲをとり逃がしてしまうことが多かった。本機からは、刃穴自体にやや角度をつけて配置位置を調整することで、刃穴に毛が入る確率を高めたということだ。

従来の刃穴(画像:Panasonic)
新しい刃穴(画像:Panasonic)

 そして福島さんが3つめに挙げたのが、ヘッド内にリニアモーターを搭載している点だ。ヘッドの可動域が確保されると同時に、モーターの力がダイレクトに刃のストロークに変換される。本機に搭載されたリニアモーターは1分間に1万4000回のストロークを行う。ラムダッシュ史上最高速(※パナソニック シェーバー ラムダッシュにおいて。2024年7月30日現在。)のものだ。これもPanasonicがモーターから自社開発しているからこそ成せる技術だ。

実際に剃ってみた感じは......?

 ここからは実際に使ってみた感想をお伝えしよう。

 筆者は基本的にT字カミソリタイプのユーザーだ。薬局で買えるT字カミソリを特にこだわりなく使っている。3000円程度で購入した海外メーカーの電気シェーバーも持っているが、ざっくりとしか剃れず、ヒゲが残ってしまうので、結局仕上げはT字に頼らざるを得ない。いわゆるハイエンドモデルを使ったことがないこの状況が5年程度は続いているので、最新の電気シェーバーというものに馴染みがなかったのが正直なところだ。

 シェービングを始める前に、まずは効果を確認するため、パナソニックが開発した、ヒゲの状態を計測する専用機器を使って、ヒゲの本数チェック。認識はかなりざっくりなようで、0.3mm以上の毛の本数は78本ということはないだろうとは思うが、一応このような結果。一緒に毛流れの分析も表示されるのでおもしろい。

 分析が終わったらいざ剃毛。筆者はそこそこにヒゲが長い状態で臨んだため、最初慣れるまでは、外刃にうまく食わせるのに少しだけ苦戦。慣れてからは、1度目のストロークである程度の短さまでカットされ、2度目で見た目も感触も完全に剃り落とすようなイメージでシェービングできた。

 反り心地は極めてパワフルで気持ち良い。しかし堅牢なボディのお陰で、過剰な振動が伝わってきたり、駆動音がうるさいと感じたりすることもなかった。重厚感の漂うデザインのわりに、剃っていて「重い」「疲れた」と感じることはなかったのは意外だった。

 個人的に最も驚いたのが喉元に近い位置の仕上がりだ。この部分はT字で念入りに剃り上げても、毛流れの方向のせいか手で触るとザラザラとした感触が残ってしまう。角度や方向を変えながら2、3度剃り直してようやくきれいに剃れる場所だった。「ラムダッシュPRO 6枚刃」では、それほど念入りに剃ったつもりもなかったのだが、指先で触れて毛の感触がまったく残っていなかった。

 さらに冒頭で福島さんが挙げた「“深剃り”と“肌への優しさ”」だ。先ほど述べたように、T字カミソリタイプと同じかそれ以上のレベルで深剃りできるのに、シェービング後、肌はまったくヒリヒリしていない。自分の場合T字カミソリで入念に剃った後、数か所わずかに出血することも珍しくないが、出血はおろか肌へのダメージらしいダメージは本当に感じなく、素直に電動シェーバーの性能に感服するばかりだった。

 気になった点もお伝えしよう。短めの毛はあっという間に剃れるが、長めの毛はやや取り残してしまうことが多かった。顎下に1本だけ残ってしまったような毛をなかなか捉えることができず、何度も往復させる必要があった。もちろんうまく捉えれば、きれいに剃れるので、自分の毛質や毛流れ、シェーバーの使い方をすり合わせていく必要はありそうだ。

顎下にぽつぽつと長い毛が残っている

 終わったらシェービング後の本数チェック。ご覧の通り0.3mm以上の毛の本数は2本となった。

 ちなみに剃り終わったあと、BOOSTとSOFTの割合が表示される。BOOSTが35%、SOFTが65%となっているが、今回は取材の都合上途中で一度停止させてしまったため、最後の1~2分のみの結果だ。体感的には7:3ぐらいのイメージだった。

真の魅力はその手触り

 正直、「ラムダッシュPRO 6枚刃」に搭載されたラムダッシュAI ナビ自体には予想を大きく超えるような驚きはなかったが、非常に優秀なガイドだと思う。より直感的にヒゲを剃ることができるのだからストレスも感じづらい。しかし絶対に必要かと問われればそんなことはないし、シェービング後のBOOSTとSOFTの割合確認もおそらく毎回気にするものでもない。つまりラムダッシュAI ナビの有無によってこの製品の価値が大きく左右されると思わない。けれど、このシェーバーには強い魅力がある。

 「ラムダッシュPRO 6枚刃」の最大の魅力は“道具”としての質感だ。手に持ったときに感じる確かな重み。シェービング中の振動を手元に伝えすぎない堅牢な造り。柔軟に動くヘッド。美しい曲線を描くハンドル。ザラリとした表面。どれをとっても素直に上質だと感じた。

 毎日使う道具に求めるべきは、こういった物としての手触りだ。ある程度の金額を払うのならばなおさら。高い性能や多様な機能はもちろん嬉しいが、この物としての“強さ”があるからこそ活きてくるのだろう。

 価格は税込みで6万8310円(編集部調べ)と決して安いとは言えない。しかし毎日使うからこそ、肌に触れるからこそ、ある程度コストをかけるべきかも、とも思う。性能、質感、価格。バランスのとれた、誠実な製品だった。そろそろ本格的なシェーバーを一本持っておこう、と考えているならぜひおすすめしたい。

◯参考情報
https://panasonic.jp/

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