スクエニ新作『エンバーストーリア』に向けられるシビアな目線 “サ終続出”から挽回する一作となるか

 スクウェア・エニックスは10月9日、完全新作となるモバイル/PC向けタイトル『EMBER STORIA(エンバーストーリア)』を発表した。

 2023年以降、提供するモバイルゲームを次々と市場から撤退させてきたスクウェア・エニックス。同社が満を持して送り出す完全新作は、悪しき流れを断ち切れるだろうか。

スクウェア・エニックスが贈る完全新作の戦略RPG『エンバーストーリア』

【公式】スクウェア・エニックス 完全新作ストラテジックRPG『エンバーストーリア』| ファーストトレーラー

 『エンバーストーリア』は、スクウェア・エニックスが贈る完全新作の戦略RPGだ。舞台となるのは、幾多の世界が滅びを迎えた後、最後に生まれたとされる世界・レンゴク。「魂を試される場所」とも呼ばれるこの大地は、大半が魔獣の跋扈する領域となっており、人間にとっては過酷な試練の場所として知られている。プレイヤーは、この地の底に眠る資源(リソース)を集めるために建造された独立行動艦「アニマ・マルカ」の司令官(マスター)候補生として、同盟メンバーとともに、レンゴクの中心にある「塔(キザハシ)」の制覇を目指していく。

 特徴となっているのは、敵勢力とのバトル、大型魔獣の討伐など、RPGではおなじみの要素と、「建設」「研究」「訓練」「資源生産」を駆使し拠点を発展させるというシミュレーション的な要素を融合したゲーム性。前者では、リアルタイムで変化する戦況を読み解き、部隊を的確に指揮することが勝利へとつながっていくという。

 基本プレイ無料・アイテム課金型で、モバイル(Android/iOS)とPC(DMM GAMES)に対応する。2024年10月14日現在、各プラットフォームでは事前登録を受付中。配信開始時期は現時点で未定となっている。

相次いだモバイルゲームの撤退。『エンバーストーリア』はゲームチェンジャーとなれるか

【公式】スクウェア・エニックス 完全新作ストラテジックRPG『エンバーストーリア』| 世界観紹介

 スクウェア・エニックスが手掛ける新作ということもあり、注目を集めている『エンバーストーリア』。一方で、同社は2023年以降、モバイルゲームを次々と市場から撤退させている。現在までの約2年間でサービスを終了させた著名なタイトルは以下のとおり(括弧内は稼働期間)。

『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』(2021年11月~2023年1月)
『ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ』(2022年1月~2023年2月)
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 -魂の絆-』(2021年9月~2023年4月)
『聖剣伝説 ECHOES of MANA』(2022年4月~2023年5月)
『魔法科高校の劣等生 リローデッド・メモリ』(2022年6月~2023年8月)
『SINoALICE —シノアリス—』(2017年6月~2024年1月)
『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』(2014年1月~2024年1月)
『ディシディアファイナルファンタジー オペラオムニア』(2017年2月~2024年2月)
『鋼の錬金術師 MOBILE』(2022年8月~2024年3月)
『NieR Re[in]carnation』(2021年1月~2024年4月)
『トワツガイ』(2023年2月~2024年7月)
『ドラゴンクエストチャンピオンズ』(2023年6月~2024年7月)
『ドラゴンクエストけしケシ!』(2021年12月~2024年7月)

 その顔ぶれを見ると、鳴り物入りでリリースされた話題作ばかりであることがわかる。これだけの数が2年という短い期間に幕を閉じたのだから、極めて異例な出来事であったと言えるだろう。特徴的なのは、大半がリリースから2〜3年でサービスを終了させている点。モバイルゲーム市場の急拡大にともなって乱発されたタイトルたちが、一部の例外を除き、この2年で軒並み、その歴史に終止符を打つこととなった。

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 また、スクウェア・エニックスは2024年3月期決算のなかで、デジタルエンタテインメント事業の一部の主要コンテンツ開発を中止したことによるコンテンツ等廃棄損、220億8,700万円を特別損失として計上している。2024年2月実施のアナリスト向け決算説明会では、開発体制の抜本的見直しを進めているとも発表した。「今後はタイトルの発売を減らし、クオリティの高いタイトルにリソースを集中する」。これは同社代表取締役社長の桐生隆司氏が当時語った言葉だ。その観点に立つと、『エンバーストーリア』は、そうした社内の逆風を乗り越えて発表されたタイトルということになる。ここには、同タイトルに賭けるスクウェア・エニックスの意気込みのようなものを感じることもできる。

 そうした背景を裏付けるように、『エンバーストーリア』の制作スタッフには著名なクリエーターの名がラインアップされている。公式サイトにて明かされている情報によると、メインキャラクターデザイナーを『ファイアーエムブレム 覚醒』や『ファイアーエムブレムif』『ポケモン GO』などの代表作で知られるイラストレーターのコザキユースケ氏が、コンポーザーを『FINAL FANTASY XIII』『サガ フロンティア2』をはじめ、数々のゲーム作品の音楽を手掛けてきた作曲家の浜渦正志氏が、メインシナリオを『サガ フロンティア リマスター』ヒューズ編や『インペリアルサガ』などを代表作とするシナリオライターのベニー松山氏が務めているという。一方のキャストには、髙橋ミナミや竹達彩奈、遠藤綾、小野賢章、中村悠一、伊瀬茉莉也、内山昂輝といった、いまをときめく声優たちの名が並んだ。

 これらの要素から考えるかぎり、『エンバーストーリア』は、スクウェア・エニックスがかなりの自信を持って送り出すタイトルとなるのではないか。しかしながら、直近でまとまった数の作品を“整理”したことから、少なくともモバイルゲームの領域において、「スクウェア・エニックス」という看板には“サービス終了”のイメージが先行してしまっている。そのクオリティには、これまで以上にシビアな目線が向けられることになるだろう。

 また、『エンバーストーリア』が分類されるシミュレーションRPGのジャンルは直近、レッドオーシャン化しつつある。2024年3月には『ユニコーンオーバーロード』がアトラスより発売され、その完成度の高さが話題となった。基本プレイ無料・アイテム課金型のタイトルでは、おなじくモバイル/PC向けに展開された『鈴蘭の剣:この平和な世界のために』も及第点と言える評価を獲得している。『エンバーストーリア』は同ジャンルの後発タイトルとして、このような作品たちと比べられていくことになる。

 明かされているシステムには、『アークナイツ』や『勝利の女神:NIKKE』といった中韓発の人気作品からの影響も感じさせる『エンバーストーリア』。スクウェア・エニックスの並々ならぬ意気込みをうまくクオリティへと昇華できるのであれば、“ゲームチェンジャー”となる可能性も十分にあるだろう。

 はたして『エンバーストーリア』は、名のある作品たちに肩を並べる存在となれるだろうか。今後の動向を見守りたい。

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