THE YELLOW MONKEYのライブを“不滅”にするためにーーマネージャーらに聞く、アーティスト専用プラットフォームを作った真意

イエモンのライブを“不滅”にするために

 THE YELLOW MONKEYが4月27日に開催した東京ドーム公演を、10月9日より動画配信プラットフォーム『TYM STORAGE』にて公開した。同プラットフォームはTHE YELLOW MONKEYがこれまで行ってきた様々なライブ映像を月額・年額制で見ることができるもの。今回公開された東京ドームのライブ映像は、映像作品『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024“SHINE ON”』Blu-ray/DVDリリース同日より配信を開始する、というかなり異例の配信・発売方法を取っていることでも話題だ。

 そこで今回はTHE YELLOW MONKEYのマネジメントを務めるTYMS PROJECTの代表取締役・青木しん氏と、『TYM STORAGE』(https://tymstorage.jp/)を制作・運営する株式会社ドワンゴ/KADOKAWAグループの萬晃太氏による対談を実施。ストリーミング全盛の時代において、アーティストが独自のプラットフォームを持つ意義や、プラットフォームを通したファンとのコミュニケーションのあり方、アーティストの意思に即した手法の選び方などについて、じっくりと語ってもらった。(編集部)

パッケージ作品を超えてユーザーにライブ映像を届ける手段を探して

株式会社ドワンゴ/KADOKAWAグループの萬晃太氏(左)とTYMS PROJECTの代表取締役・青木しん氏(右)
株式会社ドワンゴ/KADOKAWAグループの萬晃太氏(左)とTYMS PROJECTの代表取締役・青木しん氏(右)

──THE YELLOW MONKEYが再集結した2016年以降、音楽業界においてサブスクリプションサービスがスタンダードとなりました。メンバーや事務所のみなさんはこれらのサービスに対して、どういったスタンスをとってきたのでしょうか。

青木しん(以下、青木):いわゆるサブスクと呼ばれるものに関して、ふたつの概念が存在しますよね。ひとつはTHE YELLOW MONKEY再集結後のファンクラブサイトのように、過去の携帯サイトからの流れで月額いくらという支払いの形。もうひとつが映像コンテンツを配信するということで、特にコロナ禍以降は世界的にもNetflixなどが一気に広まったじゃないですか。ライブに関しても有料無料問わず、そういう形でしかライブを提供できなかった時期がしばらく続いたことで、そういった文化が着実に根付いていきましたよね。

 あと、スマホひとつにしてもそうですけど、カメラや映像に関するテクノロジーが急成長したのも大きいのかなと。わかりやすいところで言うとドローンを使った撮影がまさにそれで、近年はライブ映像の撮影でも積極的に取り入れられている。作り手側の技術の向上が重なったことでクオリティの高い映像がたくさん供給された結果、映像配信サービスもどんどん栄えていった。それがコロナ禍以降の流れなんでしょうね。

 THE YELLOW MONKEYは歴史あるバンドなので、販売されたものや販売を前提としていないものも含め、豊富な映像アーカイブが存在しますし、これまで一部のプラットフォームで単発で出したりすることは何回かありました。特に再集結して以降はファンも若干の入れ替わりがあり、若いファンは90年代の映像になかなか触れる機会がなくて勿体ないという気持ちが漠然とあったんです。同時に、フィジカルが売れなくなってきている時代において別の形で収益を得る必要もありました。できるだけ多くの人にライブ映像を観ていただきたいけど、大規模ライブを映像収録および作品化するにはかなりの制作費がかかることにもなります。そこにおいてうまくバランスが取れないだろうかと模索していく中で、『TYM STORAGE』のアイデアが生まれたわけです。それがちょうど昨年後半のことでした。

TYMS PROJECTの代表取締役・青木しん氏
TYMS PROJECTの代表取締役・青木しん氏

──なるほど。『TYM STORAGE』の準備自体はいつ頃から始まったものだったんですか?

萬晃太(以下、萬):昨年9月くらいに我々のもとに開発の話が飛び込んできて、そこから急ピッチで作業を進めました。今年4月の東京ドーム公演がバンドにとっても大きなタイミングでしたので、そこに合わせてリリースしていこうということで打ち合わせさせていただきました。

──かなりのスピード感ですね。

萬:KADOKAWAやドワンゴの強みでもあると思うんですけど、やはりプラットフォーム作りが一番得意なところではあったので、そういう意味で今回青木さんが抱えてらっしゃった「こうありたい」という考えにすごくフィットしたのかなと思います。

──ドワンゴをパートナーに選んだ理由は?

青木:一番はタイミングですね。実際、サービスを実現させるためにいろいろとアポを取っていたんですけど、その中でドワンゴさんとお話したときの感触が一番よくて。ドワンゴさんとはニコ生を通じて、解散中から再集結後まで、それこそコロナ禍においてもいろんな形でご一緒させていただきましたし、ファン層的にも親和性が強いという実感もありました。しかも、そういう企画を通じて非常に自由に、いろんなことができましたし、そういう点でも『TYM STORAGE』と相性がいいんじゃないかと思ったんです。

萬:青木さんに刺さっているかどうかわからないんですが、ドワンゴからハード面でアプローチさせていただいたところでいくと、ちょうど『sheeta(※)』という新しいシステムをローンチしたタイミングでした。『sheeta』はニコニコの今まで良かった部分と新しい技術を融合しようというコンセプトでやっていて、高画質かつ高音質、プラスアルファでドワンゴが得意としていたコメント機能やファンコミュニティのコンテンツ作りを融合させたサービス。それを青木さんにお伝えさせていただいて、ライブというファンの方々が集まって盛り上がるという部分との親和性も高いんじゃないかということで評価いただいて、開発に着手したというところがあります。

 あともうひとつ、『ニコニコチャンネル』の有料会員数が現在125万超に達していて、サブスクサービスとして実績を持っているのが強みでしたので、そのあたりも安定したサービス運営ができるというのを評価していただいたところがあります。さらに、ライブですとストリーミング配信のパワーがすごく重要になってくるんですけれども、例えば同時接続で10万人以上においても安定した配信がお届けできるというところも、今までドワンゴがやってきた実績の中でノウハウがあったので、そのあたりも評価していただけたら嬉しいなと思っていろいろお話させていただきました。

『TYM STRAGE』トップページ
『TYM STRAGE』トップページ

──プロジェクトが立ち上がってからローンチまで約半年という短期間の中で、作業を進めていく中で加わった仕様など、当初想定していなかったものはありましたか?

萬:最初はWEB版のみのローンチ予定でしたが、途中からスマホアプリ開発にも着手しました。通常、アプリ開発にはすごく時間かかるのですが、今回はベーシックな作業と並行してアプリの独自機能を盛り込んだオリジナルのアプリを作らせていただいています。あと、タイムコードと映像を連動させる機能も導入させていただいて。概要欄にセットリストの曲名を載せて、その隣にタイムコードも載せることで、タイムコードをクリックすると該当の楽曲部分から再生できるような仕様になっていて、ライブ映像を視聴するのに何か役に立てるのかなと思ってこういった機能をいろいろ追加しております。

株式会社ドワンゴ/KADOKAWAグループの萬晃太氏
株式会社ドワンゴ/KADOKAWAグループの萬晃太氏

──お話を聞いていると、DVDやBlu-rayといったパッケージを購入して家で観る際の、ガイド画面での操作に近いものを感じました。

萬:そうですね。そこはオーダーをいただいたときから、できる限りパッケージを越えたいという思いがありました。

青木:DVDでもBlu-rayでも、ディスクをプレイヤーに入れたあとはリモコンひとつですべて済むという操作性の良さがあるじゃないですか。『TYM STORAGE』の強みはその操作性に加えて、映像を持ち運べることが大きな強みだと思うんです。トップ画面もそうだし操作方法もそうですけど、どこにいても観たいものにすぐたどり着ける。パッケージでは不可能だったことを実現できるプラットフォームにしていきたいなと。

萬:嬉しかったのが、SNS上でユーザーの方が「ライブ映像を通勤時間に観て気分が上がった」とおっしゃっていて。それは今までのDVDやBlu-rayでは体験できなかったことだと思いますし、持ち運べるライブ映像としてユーザーの方に評価いただけてよかったなと思っています。もちろん、これまでも他社のプラットフォームを使うことで同じようなことはできたとは思うんですが、『TYM STORAGE』は当初からTHE YELLOW MONKEYが発信するプラットフォームなんだという“公式感”にこだわっていたので、そういったところでの差別化もできているのかなと。コアファンのユーザーの方々に公式のもので自分のライブ体験を高めていただけて、なおかつ外で楽しんでいただけるというのは我々が一番嬉しいポイントでもあります。

青木:先ほどのドワンゴさんをパートナーに選んだ理由にもつながりますが、ユーザーに所有感や公式感を持ってもらうのは大きなポイントだと思っていて。デジタルでありながら所有している感覚を体験できるのは、このサブスク時代においてはとても大切な考え方ですし、THE YELLOW MONKEY専用プラットフォームだからこその見せ方ができれば、ファンの方の満足度も上がる。この2つが実現可能という点で、ドワンゴさんとタッグを組むことは大きなメリットがあると思いましたし、同時にほかのプラットフォームとの棲み分けや共存も可能なんじゃないかと考えました。

──過去のアーカイブや新規の撮り下ろし映像など、豊富なコンテンツの見せ方や活かし方に関してもいろいろ工夫やこだわりがあったのではないでしょうか。

萬:そうですね。僕が一番ドキドキしたのが、4月20日に配信させていただいた『メカラウロコ・27』というコンテンツ。まだ商品化されていない映像なんですが、こういう公式プラットフォームだから公開できたということでファンのみなさんの間でもすごく話題になっていたんです。パッケージ化するとジャケットデザインやプレス、プロモーションなどのプロセスを経て、時間をかけて流通にまで至るわけですが、プラットフォームだと自分たちのタイミングでお客さんに届けることができる。このように商品化されていない貴重な映像がまだまだたくさんあるわけで、過去のコンテンツ資源を活かして新しいマネタイズを実現するというのはすごくやりたかったことだったので、青木さんからこの作品をご提案いただいたときはみんなでガッツポーズしたのを覚えています。

『TYM STORAGE』内の『メカラウロコ・27』視聴ページ
『TYM STORAGE』内の『メカラウロコ・27』視聴ページ

青木:僕自身はオリジナリティがあるものをどんどん作っていきたいなと思っていて。THE YELLOW MONKEYはロックバンドなので、ライブ作品が多くなるというのは大前提としてありますし、今後もそこを中心にしていきたいなというのもありつつ、メンバーみんなソロ活動もやっているので、それぞれのソロ作品にもフィーチャーしたいなと考えているところです。ソロ作品ってそのバンドのファンでも手が届かないという人も正直多いと思うんです。特に映像作品となると決して安いものでもないので、『TYM STORAGE』という場所を通じてバンドのファンにもメンバーのソロを知ってもらうきっかけになってほしいですし、どんどん交流が広がっていったらいいなと。しがらみとか契約の問題とかあるかもしれませんが、ここまでさまざまなレーベルに協力いただいてやれているので、そこも将来的には強みにしたいなと思っています。

──さらに画期的なのが、10月9日にパッケージとしてリリースされる4月の東京ドーム公演の映像が、同日に『TYM STORAGE』でも配信されるということ。この構想はパッケージ化が決まった時点であったのですか?

青木:もちろんレーベルとの擦り合わせなど大変なこともたくさんありましたが、『TYM STORAGE』でも配信したいという話は結構早い段階から決めていました。

萬:もちろんライブ作品のパッケージってファンのみなさんにとってかけがえがないものだと思っていて。デザインだったり特典映像だったりとパッケージならではの特徴もたくさんありますし、サービスとしてイコールではないと思っているので、僕はプラットフォームでの楽しみ方とBlu-rayの楽しみ方は違うものだと認識しています。事実、今回のようにフィジカルの商品が販売される作品をプラットフォームで同日に配信するという場合でも、プラットフォーム側のマネタイズもしっかりできている。そこに関しては購入していただくユーザーの心理もそれぞれ違うと我々も思っているので、同じコンテンツではあるんですが共存できると認識しています。

 もちろん、自宅にBlu-rayプレイヤーがないという方も少なくないと思います。我々が調べたデータによると、だいたい50%くらいの方がプレイヤーを持っていない世帯だという実態があって、パッケージを購入しても映像を観られずに飾ったままというケースも考えられるので、パッケージはパッケージとしてファンの方々に楽しんでいただきつつプラットフォームでライブ映像を並行して観ていただくという共存を目指していきたい。かなり無理のあるオーダーだと思っていたんですが、「新しいユーザー体験ができるだろう」と青木さんにもご賛同いただいて、今回の10月9日配信に至ったというところはありますので、ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです。

──パッケージを買う層とストリーミングで楽しもうという層は、決してイコールではないですものね。パッケージとして手元に残しておきたいという層というのは確実に一定数いて、そういう人たちも先ほどおっしゃったように出先で東京ドーム公演の映像を楽しむこともできるわけですから。逆に、配信で観た人たちが特典映像にも興味を持ってパッケージを購入するという“お試し”的な楽しみ方もあると思うので、配信がパッケージの足を引っ張るとも考えにくい。

青木:再集結後、特に20代から30代のファンの方が増えているんですが、『TYM STORAGE』は年額プランと月額プランを用意しているので、なかなかパッケージに手が届かないという方が飛び込むきっかけにもなるのかなと感じています。

今のライブと昔のパフォーマンスを結びつける“ストレージ”に

2024年4月に行われた東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024』より
2024年4月に行われた東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024』より

──せっかくの機会なので、青木さんにその東京ドーム公演についてもお話を伺えたらと思います。青木さんは4月の公演をどのような思いで迎えたのでしょう。そして、実際のライブを観てどのような感想を持ちましたか?

青木:そうですね……東京ドームをやるという決定の前には、年末恒例の12月28日の武道館公演を見送った経緯もあって。12月と4月、たかだか4〜5ヶ月の差ですけど、次が決まっているという状態を作ろうみたいなところもあったので、武道館がなくなるという中で東京ドームは当初、漠然と違う目的だったというか。それに、東京ドームに限って言えば前回の2020年11月3日とも違う心境で迎えている……当日、MCでも吉井(和哉)が言ってましたけど、「歓声があればできると思っちゃった」と。それって思わず出てきた、すごくリアルな言葉だなと思うんです。なので、できないなとか中止とかはまったく考えていなかったです。あと、やめたほうがいいかなとも思わなかった。

──僕も当日、会場でライブを拝見しましたが、吉井さんのコンディションに対しての不安は確かにあったものの、ロックバンドとしての壮絶な生き様をまざまざと見せつけられた印象が強くて。あの衝撃から半年を経て今度はパッケージとストリーミングを通じて改めて振り返ることで、当日とはまた違った感情で向き合えるんじゃないかという気がしています。

青木:そうであってほしいですね。

萬:それこそ『TYM STORAGE』というサービス名を決めるときに、タイムトラベルみたいな役割も込めようっていうことを青木さんをはじめTYMS PROJECTのみなさんとお話させていただいていて。僕も会場で観させていただいたんですけど、今回のコンテンツの1時間24分あたりのところで「人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)」という曲を披露しているんですね。バンドにとっても25年ぶりに披露した1曲なんですけど、25年という歴史もこのプラットフォームであればあっという間につなぐことができる。東京ドームが終わったあとに「人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)」の聴き比べみたいなことをファンの方がされていたんですが、このサービスだったら25年前の映像と東京ドームの映像をすぐに見比べることもできるわけです。

──「人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)」に限らず、バンドがこれだけ長く続けば今後「○○年ぶりに披露」という過去の楽曲もどんどん増えるわけで、そのたびに『TYM STORAGE』を通じて今と過去を行き来することができると。

青木:それはBlu-rayや、それこそVHSの時代ではすぐにはできないことですからね。

萬:東京ドーム公演当日は1曲目の「バラ色の日々」だけを配信したんですけど、終演後に「この曲はこのライブ映像でも観られる」という一覧をセットリストに沿って作ったんです。そうやって曲ごとに紐づいた様々なライブ映像を楽しむこともできれば、何年のライブ、どこの会場などでタグ付けもできるので、そこも『TYM STORAGE』の強みだと思っています。

青木:音楽のサブスクは今や誰もが利用していて、どこでもすぐに聴けるようになりましたけど、ライブ映像に関して同じような楽しみ方が『TYM STORAGE』でもできると思っていて。僕はもともとライブアルバムが好きなので、その感覚でライブ映像をいろんな場所に持ち運んでもらいたいですね。

 先ほど萬さんから『TYM STORAGE』というサービス名についてのお話がありましたが、実はこのサービス名はメンバー発信なんですよ。もともとは『THE YELLOW MONKEY LIVE COLLECTION』とか『LIVE SHOWCASE』といったキーワードを、我々スタッフからメンバーに提案していたんですけど、それを元にメンバー4人でいろいろ意見を寄せ合っていて。で、確かHEESEYだったと思うんですけど、再集結後のTHE YELLOW MONKEYは“TYMS(=THE YELLOW MONKEY SUPER)”と銘打って活動することが多いので、「Sで始まるといいんじゃない?」ということで「Storage」というワードが上がってきたんです。「Storage」には倉庫や貯蔵、保管という意味もありますし、過去のいろいろな宝物が詰め込まれているイメージとピッタリなんじゃないかということで、メンバー4人ともしっくりきて決まったという経緯がありました。なので、ユーザーの方々が自ら飛び込んで、自分の観たいものをどんどん探していく遊び場的なイメージというのもあるのかなと思います。

──みんなで集まってそれぞれ違った宝物を探す、秘密基地みたいなニュアンスもありそうですよね。その基地では、同時視聴会も毎月開催されています。これもストリーミングサービスだからこそできる強みですね。

萬:そこはすごく大事にしています。プラットフォームがファンの傍らにあったら永遠に接点が持てるというコンセプトのもと、同時視聴会を企画させていただいているのですが、同じライブ映像をひとりで観ることともまた違って、月に1回ないし2回はお客さんが集まって、過去のライブを観て感想を言い合うことで新しい発見もあるんじゃないかと。これもドワンゴが長年培ってきた、ファンの方々を熱狂させるノウハウのひとつでもあるので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

青木:あと、同時視聴会でのコメントのやりとりなどはコアファンのみならず新規ファンにも発見の場になるんじゃないかと思っていて。この夏にTHE YELLOW MONKEYは複数のロックフェスに出演しましたが、そういう場で初めて彼らのライブを観たという若い世代も少なくなかったと思います。そういう世代が過去のライブ映像に手軽に触れられるという点でも、『TYM STORAGE』は新たな扉を開くために重要な役割を果たしてくれるはずと信じています。

──ファンクラブとはまた違った形で、アーティストとファンがライブ映像を通じてつながっていくという点においては、ここまでの半年でどの程度手応えを感じていますか?

青木:ファンクラブで提供しているコンテンツはバックステージやバラエティ的な動画など、メンバーへの親しみを感じられるようなものが中心となっていますが、TYM STORAGEは純粋にステージでのパフォーマンスや作品にじっくりと没入してもらえる場として機能していると考えています。

 『TYM STORAGE』には、各映像コンテンツごとにコメント機能やシェア機能があるので、ライブ会場で募るアンケートやSNSでの感想とは少し違った形で、よりダイレクトにその作品へのユーザーの反応が可視化されるんですよね。自分の目線でライブを観ていると見えない部分というのも存在するじゃないですか。好きなメンバーだけを追いかけていると、ほかのメンバーの名シーンを見逃していたとか。さっきの同時視聴会の話もそうですけど、他のユーザーのコメントを観ながら視聴することでまた楽しみ方が増えていくでしょうし、提供する側にも新たな発見があったりします。ローンチからまだそんなに時間は経ってないですけど、個人的にはそう感じていますし、今後もそこを大事にしていければなと思っています。

──今後『TYM STORAGE』を通じて試してみたいことは何かありますか?

青木:パッケージ化されていない過去のライブ映像をいろいろ引っ張ってきたいと考えていて。たとえば、90年代のHDCAMとかベータカムみたいに、すでに媒体としてサポートが終了していて今後残していくことが難しくなりつつある素材に関しては、ちゃんとデジタルデータに起こしたうえで整理して形にして残していったほうがいいのかなと思っています。なかには、売りものを想定していない記録用の映像も多々あるんですが、そういったものも見せたいという気持ちが正直あって。クオリティ的には商品にはできないけど、ファンが集まる公式の場だからこそできるものをどんどん提供していきたいです。あと、10月15日からは全国ツアーも始まりますし、せっかくなのでツアーを活かしたリアルタイムでできるようなことも試してみたいですね。

萬:アーティストの方がレジェンドになればなるほど、歴史があればあるほど貴重なコンテンツが眠っていると思うので、そういったものを丁寧にプラットフォーム化していくというのは使命なんじゃないかなと思っていて。それを実践する中で、ファンの方のダイレクトなメッセージとアーティストの意思が相互に交わるという、すごく貴重な体験も生まれると思うんです。ドワンゴはこれまでもプラットフォームを通じてリアルな世界をつなげてきた実績があるので、アーティストとファンがリアルにつながっていけるサービス設計を今後も作っていけるように注力していきたいと考えています。

■ドワンゴのファンクラブ運営サービス「sheeta」:https://www.sheeta-info.com/
国内最大級の動画プラットフォーム「ニコニコ」を運営する、ドワンゴのIT技術とノウハウにより開発された、最新型のファンクラブ運営サービスです。sheetaだから実現できる「新しいファンクラブ」モデルが、人や作品を愛する全ての方々をつなげ、市場ニーズと収益の最大化に貢献します。2,000以上のファンコミュニティの運営経験と、ドワンゴ独自の映像配信技術がファンクラブサービスを次世代にアップデート。ファンクラブ運営に必要な基本機能はもちろん、ドワンゴのインフラ・特許技術が可能とする、最高品質の「生放送」「動画配信」機能(ブロードキャスト機能)をはじめ、さまざまな集客・収益化機能を標準搭載。価格別にコンテンツが出し分けられるため、様々なファンニーズに対し、最適化された入会動機をご提供いただけます。

■THE YELLOW MONKEY:https://theyellowmonkey.jp/
吉井和哉、菊地英昭、廣瀬洋一、菊地英二のラインナップで1989年12月から活動。グラムロックをルーツに持つ独自のグラマラスなスタイルで人気を博し、ライブ動員、CD売上ともに90年代の日本の音楽シーンを代表するロックバンドとなるも、2001年1月に活動を休止し、2004年に解散。
2016年1月、再集結を発表。22万人を動員した全国アリーナツアーを皮切りに精力的に活動し、2018年には全シングル・アルバムの全世界配信を開始。
2024年4月には3年ぶりの東京ドーム公演を開催し成功をおさめ、5月29日に記念すべき10枚目のアルバム『Sparkle X』をリリース。10月15日よりアルバムを携えての全国ツアーがスタートする。

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