『アストロボット』の“サルゲッチュ要素”はなぜ話題に? ピポサル捕獲アクションが愛され続ける理由
9月6日にソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売された『アストロボット』。同作品はハプティックフィードバック機能など、PlayStation 5の特性をふんだんに生かした3Dアクションゲームとして、ユーザーからの評価だけでなくクリエイター陣や各種メディアも含めて注目を集めた。
「アストロ」と呼ばれるロボットが主役を務め、離れ離れになった仲間(ボット)を探すべく銀河を冒険する『アストロボット』。同作品は箱庭フィールドの中でプレイする3Dアクションという側面だけでなく、過去のプレイステーション(PS)系列タイトル(150種類以上)をフィーチャーしているのが特徴だ。
『アストロボット』には「ゴッド・オブ・ウォー」や「アンチャーテッド」など、人気シリーズの世界観や特殊ギミックを再現したステージがふんだんに用意されている。また、作中にはPS系列タイトルのキャラクターに扮した「VIPボット」と呼ばれるアストロも登場する。バラエティ豊富なステージ攻略にくわえ、こうしたPS作品の歴史を感じられるオールスター的演出も同作品の大きな魅力と言ってよいだろう。
そんな『アストロボット』だが、“とあるステージ”の存在がSNSを中心にユーザーの関心を引き寄せた。捕獲用のアミを引っ提げ、逃げ回るアストロを捕まえる再現ステージ。その名も「ピポピポ ピポゲッチュ」(ピポゲッチュ)だ。
PS作品のエッセンスを詰め込んだ『アストロボット』において、なぜピポゲッチュはとりわけ多大な注目を浴びたのか。まずは同ステージの元ネタになった作品『サルゲッチュ』を振り返りつつ、その要因を改めて考えたい。
ありそうでなかった“サル捕獲アクション” デュアルショックをフル活用したゲーム性も話題に
『サルゲッチュ』がPlayStation用ソフトとして発売されたのは今から約25年前、1999年6月24日のことだった。リリース当時のパッケージイラストを見ると、全面に大きな目玉が特徴的なサルが並んでいる。このキャラクターは「ピポサル」と言い、頭に被ったヘルメット(ピポヘル)の影響で知能が通常時よりも高く、悪に目覚めた一匹のサル「スペクター」のもと、人間の手を離れて暴走するようになった。
スペクターが乗っ取ったタイムマシンの影響により、さまざまな時代へ送り込まれたピポサルたち。主人公の少年「カケル」を操り、時を越えて逃走したピポサルを素えて捕まえる……というのが、タイトル名どおりのアクションゲーム『サルゲッチュ』である。
3Dフィールドを縦横無尽に駆け巡り、逃げ延びようと走り回るピポサルをアミで捕獲する。それまでにも『スーパーマリオ64』のように、箱庭フィールドを舞台にした3Dアクションゲームの名作はすでに存在していた。しかし『サルゲッチュ』は「箱庭フィールド+捕獲アクション」というありそうでなかった路線を打ち出し、ピポサルのキャッチーさも相まってか、単なるアクションゲームという枠組みを越えてソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)の看板IPになるまで成長を遂げた。こうした人気の所以には、同作品が「デュアルショック専用ソフトだった」のも大きいだろう。
アナログスティック搭載型コントローラーと言えば、いまとなってはもはや当たり前の入力機器である。片方のスティックでキャラクターを動かし、もう片方のスティックでカメラ視点を操作する……といったシチュエーションは、昨今のアクションゲーマーであれば日常的にこなしている動作ではないだろうか。
ところが、25年以上前にPlayStation向けに「デュアルショック」が登場した頃、2本のアナログスティックをフル活用する作品はそう多くなかった。”キャラクターの移動ならアナログスティック1本で事足りる”。そうした状況下でリリースされたのが、発売元のソニーが「右スティックに朗報」とまで謳った『サルゲッチュ』だった。
同作品は左スティックでカケルを動かし、右スティックは冒険に役立つアイテム「ガチャメカ」の操作に用いるのが最大の特徴である。スティックを倒した方向へ振り下ろす「メカボー」と「ゲットアミ」。スティックを回すと移動速度がアップする「ダッシュフープ」や同じく回した分だけ空を飛べる「トビトンボ」等々、作中のあらゆる場面でアナログスティックのフル活用が求められた。ギミック満載のステージを攻略しつつ、さまざまな妨害をくぐり抜けながら一匹また一匹とピポサルたちを捕まえる……。難易度もしっかりと歯ごたえがあり、『サルゲッチュ』はデュアルショック専用ソフトの名に恥じない多彩なアクションを存分に堪能することができた。
新作が出ないまま14年 再現ステージに垣間見えた「サルゲッチュ」らしさとノスタルジー
初代『サルゲッチュ』を大まかに振り返ったところで、話を再び『アストロボット』に戻そう。同作品のピポゲッチュがSNSを中心に反響を呼んだ理由には、やはり原作再現度の高さが関係していると見てよいだろう。と言うのも、ピポゲッチュはシンプルに「サルゲッチュだ!」と一目で分かるほどに完成されていたからだ。
同ステージの攻略条件は、「フィールド内に隠れたボットを捕まえる」というもの。ボットの見た目はもちろんピポサルにそっくりであり、主人公のアストロもカケルを模したコスチュームに身を包んでいる。くわえて捕獲用のゲットアミだけでなく、ボット(ピポサル)の居場所を探るためのガチャメカ「サルレーダー」が使えるのもうれしいポイントだ。フィールド内で9体のボットを捕まえると、上述した『サルゲッチュ』の悪役・スペクターが登場。カケル対スペクターという原作でおなじみのバトルが繰り広げられ、最初から最後まで「サルゲッチュ」シリーズの雰囲気に浸れる満足度の高いステージだと言えるだろう。
ネット上で同ステージに関する意見を探すと、元ネタに対する開発陣のリスペクトを評価するコメントが多く見受けられた。そうした声に付随する形で、「懐かしい」とノスタルジーを感じるユーザーも一定数いたように思われる。
アクションゲームに端を発した『サルゲッチュ』は、2000年代の前半から後半にかけてブームを築き上げた。ゲームにはじまり、漫画・アニメ・映画・玩具など、実に多種多様なメディアミックス展開を果たしたのだ。そうした状況下でナンバリング作品とスピンオフ作品も続々とリリースされたのだが、同シリーズは2010年12月発売の『フリフリ!サルゲッチュ』を最後に14年近く新作の影は見えていないのが現状である。
『アストロボット』に登場した他のPS作品群は、新作が作られ続けているIPも多い。一方の『サルゲッチュ』はシリーズ展開が長らく発表されていない中での原作再現となった。ゆえにリアルタイムであのころの『サルゲッチュ』を体験した世代を含め、いまもなお新作を待ち続けるシリーズファンの心をガッチリと掴んだのではないだろうか。
『アストロボット』に含まれる一部ステージとは言うものの、再現度の高さとノスタルジーの両面で大勢の耳目を集めたピポゲッチュ。依然として『サルゲッチュ』の新作は見られないままだが、今回の件は同シリーズの根強い人気が垣間見える好例だったと言えるだろう。初代『サルゲッチュ』は現在PlayStation 4/PlayStation 5向けにダウンロード配信されているので、興味があればチェックしてみてはいかがだろうか。
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