Perfumeのステージを彩る「身体性」と「テクノロジー」の舞台裏 25年の歩みを振り返る展覧会を訪れて

身体×テクノロジー×音楽のシンクロ

 ここからのChapter2は、「軌跡と奇跡」がテーマとなっている。高さ5メートル、幅7メートルの大きなスクリーンが設置されており、「だいじょばない」や「TOKYO GIRL」などを踊る彼女たちが写し出される。Perfumeは2019年4月、世界最高峰の野外フェスとも言われている『The Coachella Valley Music and Arts Festival 2019』に出演。「だいじょばない」の楽曲でリアルタイムエフェクトの演出を披露し、大きな話題となった。スクリーンの左上には当時の映像が流れている。

Perfume - 「だいじょばない」 Live at Coachella 2019

 スクリーンには声、ドラム、シンセサイザーの波形が表示され、曲に合わせてどの部分を抽出しているのかが視覚的にわかるようになっている。テロップで歌詞が表示されているのも新鮮で、どんな言葉のときにどんな動きで表現をしているのかを照らし合わせながら見ると、より曲の世界観が理解できるような気がする。

 次は本展のメインである、60メートルに及ぶ空間を使ったギャラリーだ。手前には三角錐のスクリーンが設置され、「FUSION」を披露する彼女たちが写し出されている。この映像は、さまざまな角度で撮影した被写体を3Dデータ化し、背景と合成することで空間ごと3Dデータ化できる「ボリュメトリックビデオデータ」という技術が使われている。今回は過去に披露した「FUSION」のライブ映像をもとに3D化がされており、立体的な3人の姿を楽しむことができる。

 ちなみに「FUSION」といえば、2017年11月に披露したNTTドコモとのプロジェクト『FUTURE EXPERIMENT』の企画「VOL.1 距離をなくせ。」で発表したパフォーマンスも衝撃的だった。3人が東京、ロンドン、ニューヨークで同時に踊る様子をリアルタイムでひとつの映像にするという試みだ。「FUSION」は、ほかの楽曲とはひと味違う景色をいつも見せてくれる存在だ。

 また1時間に1回、このギャラリー空間のすべてがシンクロする演出が披露される。筆者が訪れた際に披露された「edge」はPerfumeのなかでもトップレベルに尖った楽曲で、2008年の武道館公演『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!』で初披露された際は、衝撃を受けたファンも多いだろう。ぜひ会場で体感してほしい。

 このエリアでは見るだけではなく、実際に体を使ってPerfumeのライブ演出で用いられる技術を体感することができる。2018年におこなわれたライブ『Reframe』では「無限未来」をドローンとARを使って披露した。手の動きを事前にトラッキングし、ダンスに合わせてレーザーを照射するというものだ。

 会場では実際にマーカーを手に持ち、自分の動きに合わせて光線が集まってくる体験ができる。レーザーが生き物のように自分の動きとシンクロし、まさにレーザーと一緒に踊っているような不思議な感覚になる。少しだけ、自分もPerfumeの視点に立ったような気持ちを味わえる展示だ。

 次に体験したのは、2015年に開催された世界最大規模のフェス『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』で披露した「STORY」の演出だ。『SXSW』では、実際のライブ映像とCG映像が合成され、現実とバーチャルを行き来するという演出を披露した。裏側では3Dスキャンやモーショントラッキングなどさまざまな技術が使用されており、これらによって「ライブ会場」という規模感を飛び越えた、大きなスケールのパフォーマンスを可能としたのだ。

 展示では、4台のカメラと、身体の動きを読み取れる『Kinect(キネクト)』という機器を使ってその世界を体験できる。自分はステージに立っているだけなのに、スクリーンで見るとどこか別の世界へ転送されたような映像を見ることができる。

 マイクスタンドが3本立っているこのステージでは、実際に来場者がステージに立ち、その動きに合わせて変化するバーチャルな影を楽しむことができる。2021年8月に開催された『 [polygon wave]』で「マカロニ」を披露した際に使用された技術だ。ライトに照らされてできていた影かと思いきや、彼女たちから離れても影は独立してダンスを続けている。そこで初めて影は事前に撮影されたもので、彼女たちはシンクロして踊っていたのだということがわかる。

 しかし今回は来場者の影をリアルタイムで生成し、途中からPerfumeの影に変形していくという、もう1段階レベルアップした演出が用意されている。

 60メートルのギャラリーの裏では、長さ50メートルにわたってPerfumeの年表やディスコグラフィーが展示されている。“近未来型テクノポップユニット”だった彼女たちが、テクノロジーと音楽とともにどんな25年間を歩んできたのかを知ることができる。

 ボイスツアー(チケット別売・800円)では3人の声で“あの頃”のエピソードトークが聞けるので、ぜひ一緒に楽しんで歴史をなぞってみてほしい。

 最後は、Chapter3の「IMA IMA IMA」という新曲が流れるギャラリーだ。“架空のテレビ局の歌番組スタジオ”がテーマとなっており、設置されているボタンやフェーダーを操作することで、実際にその場の照明や映像、レーザーなどを操作することができる。

 「IMA IMA IMA」は10月30日にリリースされるニューアルバム『ネビュラロマンス前編』に収録されている。配信は9月20日に開始となっているが、ここでは一足早く新曲を楽しみながら、テレビ番組の世界観で作られたセットを楽しむことができる。

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