リスペクトと次元が交差する、夢の一夜 VΔLZ×DRAMATIC STARS『劇的演舞』ライブレポート

 にじさんじ所属のVtuber、弦月藤士郎、長尾景、甲斐田晴によるユニット・VΔLZと、『アイドルマスターSideM』315プロダクションに所属する天道輝、桜庭薫、柏木翼の3人によるユニット・DRAMATIC STARSによるコラボARライブ『VΔLZ×DRAMATIC STARS COLLABORATION LIVE ~劇的演舞~』が7月21日に開催された。

 過去に2度、YouTube番組での共演を経て絆を深めてきた二組。双方のファンにとって待望の“次元を超えた”コラボライブの模様をレポートする。

 ステージの大型スクリーンにユニットロゴ、ライブタイトルが映し出される。メンバーカラーを背景に6人のシルエットが浮かび上がり、一人一人の個性を反映したソロダンスで登場した。趣向を凝らしたライティングと様々な角度からのカメラアングルから、それぞれの存在感を際立たせていく。

 6人による自己紹介のコーナーでは、全員がこの日を待ち望んでいたことを明かし、これまでの共演を振り返る。「DRAMATIC STARSの皆さんとなら絶対最高のライブができるって思ってました!」「俺たちもVΔLZとなら絶対楽しいライブができるって思ってるぜ!」と興奮気味に語る姿からは、今回のライブがお互いの信頼関係の上に成り立っていることが見て取れた。

 『劇的演舞』という公演名の由来がDRAMATIC STARSの「DRAMATIC」から“劇的”、VΔLZ=「ワルツ」の“円舞”をアレンジしたタイトルだと明かされると、6人の声を合わせたコールで、ライブが開幕した。

トップバッターはDRAMATIC STARS 互いを刺激し合う、劇的な演舞の始まり

 一曲目はDRAMATIC STARSによる「STARLIGHT CELEBRATE!」。特別なライブの幕開けにふさわしい、煌めきにあふれた楽曲だ。カラフルなライトやスクリーンのエフェクトによって、彼らのカラーを印象付けていく。

 続く「Change to Chance」では一転、照明やセットデザインをがらっと変化させ、クールなステージを演出。3人もスタイリッシュで激しいダンスを披露し、ギャップを見せた。アイドルとしての幅広い音楽性にくわえて、スキルフルなパフォーマンス力を示した形だ。

 スクリーンに映し出されたDRAMATIC STARSのロゴがVΔLZのものへ変化すると、VΔLZがステージに登場すると「SHOOTING DELTA」がスタート。「みなさん盛り上がってますか? 僕たちも負けずに歌っていきたいと思います!」とVΔLZ楽曲の中でもアイドルらしさを感じさせてくれる楽曲で、みごとにDRAMATIC STARSからのバトンを受け取ってみせた。

 さらにライブ初披露となった「黎明の轍」では、赤い彼岸花や炎をモチーフにした背景で、VΔLZらしい和の世界観を熱く描き出す。表情や身振りの細かい部分まで情感たっぷりに表現され、VΔLZも負けじとスキルを前面に押し出した形だ。

 MCタイムには「DRAMATIC STARSが盛り上げてくれた」「負けてられないと気合いが入った」とVΔLZが口々に語り、DRAMATIC STARSも「ステージ裏で聴き入った」「思わず口ずさんじゃった」と、ここまでのお互いのステージを褒め合い、楽しんでいる様子だ。

それぞれの個性が輝き、魅力を伝え合うソロメドレー

 続いてのブロックはソロメドレー。明かりが落ち、長尾景ひとりの姿がステージに浮かび上がり、彼の楽曲のなかでも高い人気を誇る「Universe」を披露。力強いボーカル、美しいロングトーンで広大な世界観を描き出していくと、曲のアウトロでは天道輝がステージへ登場。ポーズを決め、そのまま「Beginning Tomorrow」へとつないでいく。長尾が「交代だ」とばかりにグータッチを決めステージを去ると、天道のソロがスタート。軽快なステップを繰り出し、全身で星のきらめきを表現する。

 次に上手から弦月藤士郎が大きく手を振りながら登場。曲は「wanderland」だ。笑顔を絶やさず軽やかなEDMのリズムに甘い歌声を載せ、ステージを自由に泳ぐかのようなパフォーマンスを見せてくれた。すると、今度は柏木翼がステージに登場し「スカイスケープノート」がスタート。弦月がイメージカラーにあわせた光でライトアップされた滑走路をバックに、冒頭のサビを柏木と共にダンスしステージを去っていく。柏木はときおりカメラにも手を振りながら、伸びやかなボーカルとしなやかなダンスで魅了した。

 柏木と入れ替わるようにして、大きく手を振りながら登場したのは甲斐田晴。爽やかで前向きな楽曲「Shiny Sunny Step」へとスムーズに繋げていく。ファルセットで歌いこなす高音のメロディが心地良い。曲の最後には桜庭薫がステージへ。甲斐田と目を合わせながら手を振り、そのまま「My Starry Song」のソロパフォーマンスへ移る。ステージに一人残った桜庭は美しい声とその高い歌唱力、ステージを自分だけの色に染めていく。

 あっという間の時間が過ぎ、ここでようやくひと息。それぞれの歌声やパフォーマンスの個性、楽曲の世界観や空気感を味わえる、ここでしか見られない贅沢なメドレーだった。それも、ただ曲を歌い継ぐだけではなく、テーマや曲調に合わせグラデーションのように楽曲が繋がれていき、コラボの組み合わせもお互いの魅力を引き出した秀逸な演出だ。

 さらに、今回のライブではお互いの楽曲のカバーもおこなった。DRAMATIC STARSは「浮世の演舞」をカバー。和風アレンジが魅力の難曲を、高い歌唱力で歌いこなしていく。和風の曲調とDRAMATIC STARSの組み合わせは新鮮だが、3人の声が不思議とマッチしていて、要所要所でVΔLZが有する演劇性をなぞることで、彼らなりのリスペクトを示したようだった。彼らが歌うことで、楽曲のシリアスな側面がなりをひそめ、どこか明るい空気を醸し出していたのが印象的だ。図らずもDRAMATIC STARSの個性によって「浮世の演舞」の新しい解釈を提示した形となり、これはVΔLZのファンにとってもうれしい驚きだったと思う。

 VΔLZは、過去に長尾がカバーしたこともあり期待度の高かった「MOON NIGHTのせいにして」をカバー。こちらも本家へのリスペクトを全面に押し出した、丁寧で細やかなパフォーマンスだ。何よりVΔLZの3人の歌声やパフォーマンスからは、「この曲とDRAMATIC STARSが大好きだ」という気持ちがあふれんばかりに伝わってくる。この曲の楽しさや爆発力、そして妖しさはVΔLZの持つ物語性とも相性が良く、楽曲のパワーと二組の相性の良さを再認識させたステージだった。きっと、互いのファンがそれぞれのユニットの魅力をさらに深く知るきっかけになっただろう。

 お互いをねぎらい、一人ずつ今回のライブの感想と感謝、そしてお互いへのリスペクトを語ると、いよいよライブは終盤へ。

 最後の曲は、今回のライブのために作られたコラボレーション曲「Amazing Moment」。キャッチ―で前向きなメロディ、二組のニュアンスを多分に含むワードが散りばめられた歌詞、息の合ったダンスや掛け合いと、VΔLZとDRAMATIC STARSの絆をぎゅっと詰め込んだような一曲だ。顔を見合わせ笑顔を交わしたり、それぞれのハンドサインでこの特別な時を喜ぶ6人の姿が、バーチャルとは思えないほどリアルに伝わるのは、高いAR技術にくわえて、このライブを作るすべての人の想いが本物である証だろう。

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