動画制作で会社が赤字、裏方が退社…“YouTuberの法人化”が成功しにくい理由を考える

 YouTuberの会社経営に関しては今年3月、高学歴YouTuberグループ・えびすじゃっぷ(登録者数67万人)が財務状況の悪化により、メンバー・たくがYouTuberと保険会社の営業を兼業すること、2023年末にスタッフが全員退職していたことを発表。借金が1億2000万円あることも明らかになり、大きな話題になった。

たくが会社員に戻ります

 たくの兼業については1年以上赤字だったこと、リーダーのフジが1年ほど会社の預金残高を確認していなかった時期があり、会社を1度畳むという提案話がチーム内であがったことなどが明かされており、これ以上ない経営難だったことは確か。フジはその当時について、「自分が社長だっていう認識がなかった」と振り返っており、経営判断に対する認識の甘さがあったことがわかる。なお6月にえびすじゃっぷは過去最高収益を叩き出し、現在の経営は順調のようだ。

 ではYouTuberが会社を立ち上げ、動画を制作するとなぜうまくいきにくいのか。前提としてYouTuberたちが法人化することのメリットには、所得税や経費に計上できる項目を増やすなど節税的な部分のほか、社会的信用といったところがある。特にYouTuberという職業は認知度は年々高くなってきているものの、事業継続性の不透明さもあり、社会的信用度はまだ低いように感じられる。企業と組み、さまざまな活動をするうえでは社会的信用は欠かせないものであり、こういった背景もYouTuberたちが法人化する理由と考えられる。

 そうして法人化をしたYouTuberのなかには、スカイピースやえびすじゃっぷのように、メンバーのほかにスタッフ(社員)を給料制で雇い、スタッフが編集や買い出し、運転など活動のサポートを担当しているケースがある。一方YouTuberの報酬は、動画の再生数や広告費などの成果報酬や案件などで変動があり、収益が大きい月にモチベーションが上がることは容易に想像できる。グループの場合、メンバーも固定給で働いている場合もあるが、収益が順調なときに一般の企業のようなボーナスやなにかしらの還元がなければモチベーションの維持や労働環境への不満を抑えることは難しい。メンバーやスタッフへの給与はもちろん、残業代の支払いやそのほかの還元は、そもそも会社の財務状況を把握していなければできないもの。今回取り上げた2組においては、過去においてこの財務面の把握ができていなかった点は否めない。

 動画クリエイターたちは、「動画で視聴者を楽しませたい、喜ばせたい」という気持ちが強く、会社のお財布事情が二の次になってしまう……。こういった財務面の後回しがYouTuberの法人化がうまくいきにくい要因のひとつのようだが、スカイピースは今回の1件をバネに経営を軌道に乗せられるのか。7月15日に結成8年を迎えたスカイピースの快進撃に期待したい。

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