レオス・ヴィンセントが体現する“一流への道筋” パッションでにじさんじを引っ張る、狂気の科学者
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。
育成プロジェクトである「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」からも新規ライバーがデビューし始めており、現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与え始めている。
先週からローレン・イロアス、レオス・ヴィンセント、オリバー・エバンス、レイン・パターソンからなる「エデン組」についてフォーカスし始めたが、オリバーにつづき、今回はレオス・ヴィンセントについて書いていこう。
初配信前から垣間見えていたユーモアのセンスとクリエイティビティ
レオス・ヴィンセントは、7月19日にSNSに初投稿し、22日午後に初配信を迎え、デビューを果たした。じつは初配信を迎える19日から22日までの間、SNSには独特な画風と愛らしいゆるキャラを描いたイラストのみを投稿し、挨拶やコミュニケーションを一切とることなく初配信を迎えた。にじさんじからデビューする“変わった新人”の振るまいは、当時から話題を呼んでいた。
— レオス•ヴィンセント🥼🌱😺にじさんじ (@Leos_Vincent) July 19, 2021
— レオス•ヴィンセント🥼🌱😺にじさんじ (@Leos_Vincent) July 20, 2021
— レオス•ヴィンセント🥼🌱😺にじさんじ (@Leos_Vincent) July 21, 2021
肝心の初配信はというと、開始前のオープニングにはSNSで何度も投稿していたゆるキャラが大行進するアニメーション映像が流れ、配信がスタートすると、自分自身のことよりゆるキャラ「まめねこ」のことを話すばかり。
しかも、まめねこを紹介するために何枚ものスライドと絵を用意していたが、「デビューするまでにいろんなことをしなくてはならず、途中で断念した……」と途中で制作を断念したことを明かし、紹介を終えてしまう流れとなった。
デビュー早々に自身のミスを謝りつつ、自身の内にある壮大なクリエイティビティと勢いを発したレオス。「謎のキャラクター・まめねこの紹介に時間を割いて、途中半端でストップする」という、不可思議かつ鮮烈な印象を残したこのデビュー配信は、見ているこちらがおもわず「何を見せられた?」と感じてしまうほど。とはいえ、レオス・ヴィンセントのパワーを感じずにはいられなかった。
初配信を終えた翌日23日には、クリアするのも難しい高難易度ゲーム『超魔界村』のノーコンティニュークリアに挑戦。いちど死ぬと最初のステージからやり直し、クリア条件は全ステージ2周&ラスボス討伐とかなり厳しい条件が求められるのだが、約9時間ほどかけて無事クリアを果たした。
またVTuberとしては珍しく喫煙者であることを明かしており、「家の椅子は全部バランスボールなんです」「ジムも通っているんですよねぇ」などと話しながら、途中でタバコ休憩を挟むという、健康なのか不健康なのかわからないトークを披露していた。今となっては懐かしく、当時としては衝撃的なインパクトを誇っていた。
『超魔界村』配信の開始前に「多分いけるんじゃないかな」と投稿していたのだが、まさに有言実行してみせたレオス。約1年ぶりとなる新人ということでかなりの注目が集まっていたなか、このときすでに彼のYouTubeチャンネル登録者は10万人を超えており、当時のにじさんじリスナー・ファンがどれほど彼に注目していたかが伝わるだろう。
多分いけるんじゃないかな
— レオス•ヴィンセント🥼🌱😺にじさんじ (@Leos_Vincent) July 23, 2021
先のイラスト/アニメーションの話からも分かるように、レオスはイラストを得意としており、現在でもゲーム配信のなかで何かを描いたり、公式番組内でフリップ回答の際にちょっとしたイラストを添えたりと、その絵心・画力・アイディアを楽しむことができる。かなり丁寧に描いていることもあれば、ギャグ調のイラストをポンッとと描いたりなど、デビュー時からその才能は光っていた。
特に彼がデビューしてすぐ、2021年8月20日に配信された夏休み特別企画『にじヌ→ン』において、共演者・加賀美ハヤトのマスコットを考えた際には、某ジャンプマンガの凶悪な兄弟を模した「死にすら値しない人」を描き、司会のリゼ・ヘルエスタやゲストとして出演した叶から「ちょっと待って?大丈夫ですか?」「なんか聞いたことあるな?」とツッコまれていた。
このワンシーンでみせた画力とセンスは、先に書いたデビュー配信のインパクトともに「レオス・ヴィンセントとはどんな男か?」ということをファンに知らしめることになった。
絵については幼稚園のころから描き続けており、現在はiPadを使っているとのこと。インディーゲーム『パスパルトゥー:アーティストの描いた夢』をつかった配信を何度かしており、ゲーム内で絵を描いて楽しんでいる。美術展などに足を運ぶこともあるようで、『パスパルトゥー』をプレイする際の配信タイトルには、ルーヴル/メトロポリタン/エルミタージュ/ニューヨーク近代美術館など、有名美術館をあげているあたり、彼自身も相当意識していそうだ。
レオスといえば、語尾を「○○ですねぇ~」「△△なんだけどぉ~、もぉー!」と伸ばし気味にしたり、心持ち遅めにしゃべっている影響で、すこしネットリとした丁寧口調で話すのが特徴的。
そのなかでもユーモアの心を忘れず、ポロっと、あるいは狙い澄まして笑える言葉を零すことが多々あるところも、そんな魅力を引き立てる。
デビューしてすぐ、先輩である笹木咲とのコラボ配信中、先にミスして死んだ笹木がブツブツと独り言を口にしているのに耐えかね「うるさいのよぉ、貴女はぁ!」と、新人らしからぬ勢いでツッコミを入れたこともある。
にじさんじの先輩たちや見ず知らずのタレントたちを前にしてでも、大げさな口調と表現を軸にして、大胆に煽り・イジり、ときに冷静にツッコむ会話術も、彼のいる場ではいまやお決まりの名物となった。そんないまの彼に繋がる、ある種の“プロトタイプ”なシーンこそが、前述した笹木との配信には詰め込まれている。先輩後輩関係なく、イジる・イジられる・煽り・煽られる、そんな立ち位置を決定的にしたコラボ配信だ。
そんな彼は、とある仲良しコラボの誕生のキッカケにもなっている。にじさんじ公式企画『にじさんじ甲子園2022』において、自身がドラフトした壱百満天原サロメを投手に、樋口楓を捕手としたバッテリーを「ですわバッテリー」というコンビ名を命名し、その後配信中・大会中で使われることになった。
サロメは球技やチームスポーツが大の苦手であり、企画への参加辞退を運営側に伝えていたのだが、連絡がうまく伝達されずにそのままドラフトされてしまったという裏話がある。だが、偶然この時に「ですわバッテリー」として樋口と組み、そしてお互い関西生まれという共通点もあったことで、その後樋口とサロメは公私ともに仲良くなっていった。彼がひっそりと成し遂げたレガシーともいえる。
このように、さまざまなコメント、一言に彼のセンスが垣間見えるのだが、それが思いっきり発揮されるのが、大型企画や公式番組といった場所だろう。
特に3Dビジュアルを手に入れて以降の彼は、180センチの大柄な体で身を張り、大声を上げ、時にウィットに富んだ一言や場の呼吸をうまく読んでのボケ・ツッコミと、縦横無尽の活躍を見せている。とくに彼の“大声”が配信で炸裂した際には音割れが発生するレベルであり、ウトウトしていたリスナーがおどろいて飛び起きるほど。
「マッドサイエンティスト」というプロフィール、それにピッタリな白衣とスーツ、青い髪色の短髪にメガネというビジュアルを持つレオス。たしかに知性派で絵心もある彼だが、実際にデビュー直後から数年の動きを見てみると、頭脳をフルに働かせつつも、“ここぞ!”という肝心要な瞬間にはパッションや気合いで押し切っていくような、どちらかといえば「パワータイプ」な人物として知られていったのだ。