ソニーが投入した4K「BRAVIA」2024年モデルの全容とは? 独自の「XRプロセッサー」は液晶・有機ELの全モデルで高画質を実現

 ソニーの「4K BRAVIA」の2024年新製品が発表された。有機ELと液晶テレビで合計4シリーズ、計12モデルをラインナップしている。シリーズ毎の特徴や進化点などを解説していきたい。

 ソニーではこれまで、パネルの種類(液晶や有機EL)によって薄型テレビの型番を使い分けていた。しかし2024年の新製品からは型番を共通化し、シリーズ名も「BRAVIA 9」「BRAVIA 8」といった具合にパネルの区別がなくなっている。

 ソニーは近年、独自のXRプロセッサーの処理能力を活かして“映像の自然な美しさと音の臨場感で、圧倒的な没入感を実現”することを目指している。今回の変更も、どの表示パネルであってもXRプロセッサーによって高品質を実現できるという自信の現れということだろう。

 2024年の新製品では、XRプロセッサーがもともと行っていた緑検出と顔検出の機能を進歩させた。木の葉の緑色まで検出して精細感をアップし、人物の顔については正面だけでなく、横顔や大人数が映っている場合でもきちんと識別して自然な表情を再現できるようになっているそうだ。

進化したMini LEDバックライトを搭載した「BRAVIA 9」、「BRAVIA 7」

Mini LEDバックライトを搭載した4K液晶テレビの最上位「BRAVIA 9」シリーズ。写真は最大サイズの85インチで、この他に75インチと65インチモデルをラインナップする。
Mini LEDバックライトを搭載した「BRAVIA 7」シリーズの85インチモデル。

 

 各シリーズの特長としては、液晶テレビの「BRAVIA 9」と「BRAVIA 7」はどちらもMini LEDバックライトを搭載している。これは液晶テレビのバックライトに小型サイズのLEDを採用したもの。その結果LEDの搭載数が増え、分割駆動のエリアも細分化できるので、より映像の内容に則したバックライト制御が可能になり、自然な画が楽しめるわけだ。

「BRAVIA 9」シリーズに採用されているMini LEDバックライトの基板。写真中央の黒いチップがゴマより小さい超小型LEDドライバーで、その周囲に見える丸い部品がMini LEDチップ。

 

 上位モデルの「BRAVIA 9」では、バックライトコントロール技術のXR Backlight Master Driveも大幅に進化した。液晶テレビのバックライト制御では、XRプロセッサーの後段にあるLEDドライバーで制御を行っている。今回はソニーセミコンダクタと共同開発した超小型LEDプロセッサー(ゴマ粒よりも小さい)を使うことで一層きめ細かい制御が可能になっている。

 なおソニーではこれまでも自社製LEDドライバーを使っており、階調処理能力(ビット数)は一般的なLEDドライバーよりも高いスペックを備えているそうだ。弟モデルの「BRAVIA 7」には従来タイプのLEDドライバーが使われているが、こちらも階調処理という点では新型LEDドライバーと同等の能力を備えている。

従来モデル「X95L」(左)と、新製品「BRAVIA 7」(右)の画質比較。画面全体の明るさや、背景の黄色い壁の発色などに違いがある。

 

 その他「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」とも液晶パネルの表面に量子ドットフィルターを加えることで色の再現性を改善している。視野角改善用のエックス ワイド アングルと、低反射フィルターのエックス アンチ リフレクションは「BRAVIA 9」だけの採用だ。

 内蔵スピーカーは、「BRAVIA 9」ではテレビの上部にビームツイーターを新搭載。フルレンジ、ツイーター、サブウーファー、ビームツイーターをL/Rそれぞれに配置したAcoustic Multi-Audio+によって、包みこまれるような立体音響を楽しむことができる。

有機ELの「BRAVIA8」とQD-OLED(量子ドット有機EL)パネル搭載の「A95L」

有機ELパネルを搭載した「BRAVIA 8」の65インチモデル。

 

 有機ELテレビの「BRAVIA 8」は「A80L」シリーズの後継モデルという位置づけで、画面の明るさを最大1.2倍に向上させたのがトピックという。

純度の高い色再現が可能なQD-OLEDパネルを採用した、ソニー有機ELテレビの最上位モデル「A95L」シリーズ。

 

 従来の型番を踏襲しているのが、QD-OLED(量子ドット有機EL)パネル搭載の「A95L」シリーズで、画面サイズや主な仕様は前モデルの「A95K」シリーズと同様となる。進化点はピーク輝度がアップしたこととノイズ制御の改善で、より力強くクリーンな映像を楽しめる。

 その他の2024年モデルの特長としては、Studio Calibrated画質の搭載も見逃せない。これは、ソニーと動画配信サービス各社との協業で開発された、クリエイターの意図を忠実に再現できる画質モードで、Netflix画質モード、Prime Video画質モード、SONY PICTURES CORE画質モードの3種類が用意されている。

 もうひとつ、Voice Zoom 3機能も採用された(「A95L」シリーズは除く)。新搭載されたAIサウンドセパレーション機能により、人間の声を正確に抽出し、音声だけを好みの音量に調整できる。音声以外の音量は変わらないので、セリフが聞きにくい場合などには役に立つはずだ。この機能はソニー製サウンドバーと繋いだ場合にも有効という。

サウンドバーと組み合わせて、ボイスズーム機能のデモも行われていた。スポーツ中継でアナウンサーの解説をきちんと聞きたい場合などに便利そうだ。

 

 同じくソニー製サウンドバーとの組み合わせでは、テレビの内蔵スピーカーとサウンドバーをひとつのオーディオシステムとして動作させるAcoustic Center Syncにも対応した。サウンドバーをつないだ状態で音場補正を行い、一体感のある音声を作り出すもので、「BRAVIA Theater Quad(HT-A9M2)」「BRAVIA Theater Bar 9(HT-A9000)」「BRAVIA Theater Bar 8(HT-A8000)」で動作する。

 付属リモコンは、ネットサービスの呼び出しボタンにFODキーが追加されるなど、操作性に配慮した変更が加えられている。その他にスマホアプリのBRAVIA CONNECTからもコントロール可能で、テレビの各種操作に加えて、サウンドバーの音場設定なども簡単に行える。

 インターネット関連の機能としては、PSリモートプレイも搭載されている。PSリモートアプリを立ち上げて高速インターネットで接続すると、離れた場所にあるPlay Stationを操作できるというもの。例えばリビングにPlay Stationが置いてある場合でも、寝室のブラビアから遠隔でゲームを楽しむといった使い方を実現してくれる。

付属の着脱式スタンドは、テレビラックの大きさやサウンドバーとの組み合わせによって4種類の使い分けが可能。

 

 設置面では、「BRAVIA 9」「BRAVIA 8」「BRAVIA 7」の3シリーズには4 Wayスタンドが付属する。これはスタンドの取り付け位置を本体の外側/内側のいずれかで選べるもので、サウンドバーと組み合わせた場合のために高/低の2段階(合計4種類)が準備されている。テレビラックの横幅や愛用システムに応じて選び分けるといいだろう。

■製品情報
商品名:Mini ELD 4K液晶テレビ「BRAVIA 9」シリーズ
型名:『K-85XR90』、『K-75XR90』、『K-65XR90』
発売日:8月10日
価格:オープン価格
市場推定価格:『K-85XR90』 1,100,000円(税込)前後、『K-75XR90』 825,000円(税込)前後、『K-65XR90』 660,000円(税込)前後

商品名:4K有機ELテレビ「BRAVIA 8」シリーズ
型名:『K-77XR80』、『K-65XR80』、『K-55XR80』
発売日:8月31日
価格:オープン価格
市場推定価格:『K-77R80』 935,000円(税込)前後、『K-65XR80』 550,000円(税込)前後、『K-55XR80』 418,000円(税込)前後

商品名:Mini ELD 4K液晶テレビ「BRAVIA 7」シリーズ
型名:『K-85XR70』、『K-75XR70』、『K-65XR70』、『K-55XR70』
発売日:8月31日
価格:オープン価格
市場推定価格:『K-85XR70』 715,000円(税込)前後、『K-75XR70』 550,000円(税込)前後、『K-65XR70』 440,000円(税込)前後、『K-55XR70』 352,000円(税込)前後

商品名:QD-OLED 4K有機ELテレビ
型名:『XRJ-65A95L』、『XRJ-55A95L』
発売日:8月10日
価格:オープン価格
市場推定価格:『XRJ-65A95L』 770,000円(税込)前後、『XRJ-55A95L』 605,000円(税込)前後
※「市場推定価格」は、発売前の製品について、市場での販売価格を当社が推定したものである。なお、製品の実際の販売価格は、各販売店により決定される。

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