歌広場淳×アルランディス“異次元・格ゲーマー”対談 格闘ゲームとの「出会い」がもたらしたもの

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「歌広場淳のフルコンボでGO!!!」。今回は、「ホロライブ プロダクション」の男性VTuberグループ「ホロスターズ」に所属する、アルランディスとの対談を行った。

 同じく「ホロスターズ」所属の律可とも、以前から『ストリートファイター6』(以下、『スト6』)での対戦会を通じて交友があった歌広場淳。この対談は、律可から紹介を受ける形でアルランディスのことを知り、彼の投稿した“歌ってみた動画”に聞き惚れた歌広場淳が、即座にアルランディスをX上でフォローし……などの紆余曲折があって実現したという経緯だ。

 リアルアーティスト・歌広場淳と、バーチャルタレント・アルランディス。次元を超えて邂逅したふたりは、“音楽”と“格闘ゲーム”という共通の話題によって、お互いへの理解を急速に深めていく。

律可「アルランディスはぶっ込んでくるタイプ」

歌広場淳:いきなりなんですけど、アルくんは今回のように対談形式で誰かとお話をする機会って多いんでしょうか。やっぱり、もう慣れっこだったり?

アルランディス:いえ、1対1のインタビューならまだしも、対談となると片手で数えられるくらいしか経験がなくて。めちゃくちゃ緊張してます(笑)。あっ、僕も歌広場さんのことを“歌兄”って呼んでもいいですか?

歌広場淳:もちろん! むしろ、ありがとうございます(笑)。

 僕もこの連載をきっかけに、ふだん関わりのないジャンルの方にも積極的にお話を聞きたいと思っていて。それで今回、VTuberのアルくんをお誘いしたわけなので。VTuberの方とのガチ対談は初めてだから、緊張の度合いは同じかもしれないです。

アルランディス:そうですよね。『スト6』で拳を交えたことはあっても、なかなかこうやって腰を据えてしゃべる機会はなかったですから。しかも、ジャンルはおろか次元すら違いますし。

歌広場淳:まさに、“次元が違う”ですね。2次元のVTuberと3次元の僕とで。ちなみにアルくんは、3次元の人との絡みというと、これまでにどんな機会があったんですか?

アルランディス:声優さんとお話をさせていただくことは、結構多いです。以前、僕のYouTubeチャンネルの「居酒屋ARN」という飲酒雑談企画で、声優の伊藤昌弘さんと森嶋秀太さんにゲスト出演していただいたことがあったりもしたので。

【飲酒雑談】#居酒屋ARN でかく語りき -GUEST:伊藤昌弘様/森嶋秀太様【アルランディス/荒咬オウガ/ホロスターズ】

歌広場淳:なるほど、声優さんなら自然と会話も弾みそうですよね。ホロスターズとして音楽活動もされているわけですけど、音楽関係の方と接する機会はありましたか?

アルランディス:ああ、音楽関係の方ですか。えーっと……。

歌広場淳:あ、その間はもしかして「ゴールデンボンバーをアーティストの枠に入れていいのか」的な?(笑)

アルランディス:いや、違いますよ!? 僕、そんなぶっ込み方ができるほど尖ったヤツじゃないですって!

歌広場淳:いやいや、あのですね。今回アルくんと対談させてもらうにあたって、僕とアルくんが知り合うきっかけになってくれた律可ちゃんにもご報告させてもらったんですよ。

 そこで一応、僕から「アルくんとどんな話をしたら盛り上がると思いますか?」って聞いてみたんですけど。そうしたら律可ちゃんが「いや、勝手にぶっ込んでくるタイプなので、ノープランでいいと思います」って言ってくれたんですよね。

アルランディス:たしかに、僕はめちゃくちゃ喋るタイプではありますけど(苦笑)。

 いやでも、アーティストの方との絡みは、これまでほぼなかったですね。唯一、ビートまりおさん(※1)とは仲良くさせてもらっているんですけど、最近はどちらかというと格ゲー関連の話題で盛り上がることのほうが多いので、もはや音楽つながりとは言えないかもしれないです。

※1……同人音楽ユニット「COOL&CREATE」主宰。作詞/作曲/編曲家、歌手。2020年より同名VTuberとしても活動する。

歌広場淳:そこでも格ゲーがコミュニケーションツールになっていると。僕とアルくんも格ゲーがつなげてくれたご縁ですし、そのことに感謝しつつ……僕もいまやアルくんやホロスターズのみなさんに興味津々なので、今日は根掘り葉掘りお話を聞かせてもらえたらうれしいです!

アルランディス:こちらこそ、よろしくお願いします!

VTuberのライブを初体験した歌広場淳「想像の180億倍よかった」

歌広場淳:6月8日に開催されたホロスターズの5周年記念ライブ、『HOLOSTARS 5th Anniversary Live -Movin’ On!-』。僕も拝見したんですが、ド肝を抜かれました。想像していた180億倍よかったです!

アルランディス:うわ、億いっちゃった! ありがとうございます!!

歌広場淳:会場の豊洲PITにも大勢のファンの方が詰めかけていましたし、ものすごい盛り上がりでしたね。

 出演されたホロスターズのみなさんも、やはりそれぞれ胸の内に抱えているものが違うんだなということが伝わってきて、ジーンときました。とくに一期生の方々を見ていると、並々ならぬ思いがあったのだろうな、と。

アルランディス:おおお! そこまで深い視点で観てくださって、感激です!

歌広場淳:ライブ終盤にあった一期生4人のMCでは、花咲みやびさんの周年を祝ってあげるみたいなシーンもあったりして。

 VTuberさんのライブって、僕にとっては未知の領域だったので、どんな雰囲気なのかイメージすらできないレベルでした。けれど、実際に体験してみたら「2次元か、3次元か」なんて大した問題じゃないんだなと。もう、感動しっぱなしでした。

アルランディス:めっちゃうれしいです! 僕らも5周年ライブに向けて、ダンスの練習、歌の練習、MCの練習……と、めちゃくちゃ時間を割いてきましたから。

歌広場淳:これまで、なんとなくVTuberという存在を理解できていた気持ちでいたけど、全然わかってなかったんだなと思い知らされましたね。

 僕もいま、ゴールデンボンバーで全国ツアーをしているんですけど……このあいだ、格ゲーマーのどぐらさん、小路KOGさん、フェンリっちくんが僕らのライブを観に来てくれたんです。そうしたら、お三方とも「(ライブ中の歌広場淳は)僕の知っている歌兄とは別人でした」と言ってくれたんですよ。

アルランディス:ああ、僕も同じようなことをよくファンのみんなから言われます。「ふだんの配信でコメントとやり取りしながらゲームをしているアラン(アルランディスの愛称)とは違って、ステージで歌って踊っているアランはまさにアイドルでした!」みたいな。

歌広場淳:やっぱりそうだよね。『スト6』でガイルを使って「溜めが間に合わない!」とか、「通常対空が出んがや!」とか言っている人とは全然違った(笑)。

アルランディス:そうそう(笑)。ライブに出させていただくたびに、そういったギャップのようなものを感じてもらえているようでうれしいです。ふだんからアイドルらしくしていないからこそ、こういった場で新たな一面をお見せできるような側面があって。

歌広場淳:ああ、そういうことか。僕はてっきり、ふだんアイドルをしている人だからこそ、ゲームをやってムキになるアルくんが珍しく思えて、そこに魅力を感じるファンの方が多いのかなと想像していたんですけど。

アルランディス:いや、逆ですね。やっぱり活動のメインは配信なので、日ごろゲームをやりながら喋っているようなヤツが、意外にも歌って踊れるというところにギャップを感じてくれている方のほうが圧倒的に多いと思います。

 ふだんの配信では「こう見えてもアイドル事務所に所属しているんでね!」とギャグで言っているくらい、アイドルしていないんです。番組企画の罰ゲームで体を張ったりもしているので、リスナーから「アイドル事務所じゃなくて芸人事務所だろ」とツッコまれる始末で(笑)。

 そんな僕らだからこそ、ライブという滅多にない機会では全力を出し切りたいですし、自分の素直な気持ちをみなさんに届けたいという気持ちがあるんです。

歌広場:なるほど。僕ですらあれだけ感動したのだから、ふだんのアルくんたちをよく知っているファンの皆さんは、なおさらグッとくるものがあったのだろうなと思います。

 「グッとくる」といえば……個人的には、アンコールを受けてみなさんが再度ステージに上ってくるときに、ちゃんとTシャツに着替えてきていたのにも心を掴まれました。そこにツッコむのも野暮かもしれないんですけど、「律儀にやるんだ(笑)」って。

アルランディス:あれ、いいですよね! リアルのアイドルライブにおける“お約束”みたいなものもちゃんと押さえている感じがして、僕も大好きなシーンです(笑)。

アルランディス「格ゲー界隈って、なんて温かい場所なんだろう」

歌広場淳:ホロスターズのみなさんのなかで、格ゲーをがんばっている人というと、よく知っている律可ちゃんとアルくんの2トップが一番に思い浮かびますが、かなりのめり込んでいますよね。

アルランディス:そうかもしれないですね。僕としてはがんばっているつもりもなく、楽しみながらやっていたらいつの間にかこうなっていた、って感覚なんですけれど。ゲームとしておもしろいのはもちろんのこと、格ゲーのコミュニケーションツールとしての側面にも助けられていますね。

 たとえば、こうして歌兄とお喋りすることに関しても、格ゲーという共通の話題がなかったとしたら「あの、ゴールデンボンバーの歌広場淳さんですよね。『女々しくて』大好きです……!」みたいな話題から入ることになっていたと思いますし。

歌広場淳:その一手目を打った後、「さてどうしたものか」ってなるよね(笑)。

アルランディス:そうなんですよ。あとはもう「今日天気いいっすね」とか、「今朝なに食べました?」くらいしか切れるカードがないですから。

 格ゲーという共通の趣味を通じて、さまざまなジャンルの方と絡める機会が増えたので、本当にありがたいです。それこそ『スト6』が発売される前までは、今ほど広くいろんな方と交流を持ってはいなかったので。

歌広場淳:そう聞くと意外かも。だって、これまでも配信自体はたくさんしていて、そのなかでさまざまなゲームをやってきているわけじゃないですか。『スト6』が発売される前までは、どんなジャンルのゲームをメインでプレーしていたんですか?

アルランディス:強いて言えばFPSが多かったんですが……。そもそも僕、あまりゲームが得意じゃなかったんですよ。

歌広場淳:えっ、そうなんですか?

アルランディス:そうなんです。だから『スト6』では一番上のランクのMASTERになれて、MR(※2)も1650前後まで上げることができたのは、自分としても意外でした。「俺、こんなところまで登って来れることもあるんだなぁ」って。

※2……マスターレート。『スト6』のランクマッチにおける上位ランク「MASTER」到達者に付与される、レーティングポイントのこと。

 『Apex Legends』や『VALORANT』などのFPSをやっていたころは、いわゆる上級者と呼ばれるようなランク帯には全然手が届かず。そこそこのレベルで楽しみつつ、新しいゲームが出たら次はそれを触ってみよう、といった感じで浅く広くプレーしていました。

 誰かとFPSをやるにしても、VTuber同士で絡むことが多かった。そんな調子だったのに、『スト6』を始めた瞬間からこれまでにないような出会いが頻発するようになったんです。1対1で対戦するゲームなので、気付けばこんなにお友だちが増えて……みたいな状況は想像していなかったですね。

 それまで喋ったことがなかった強豪プレイヤーの方々や、プロゲーマーの方々が話しかけてきてくださったり、こちらからの質問にも親身に答えてくださったり。「格ゲー界隈って、なんて温かい場所なんだろう!」と思いながら、おかげさまでぬくぬくと過ごさせてもらっています。

歌広場淳:もともと、格ゲー界隈に対して「怖そう」などのイメージはあったんですか?

アルランディス:まったくなかったと言ったら嘘になりますけど、僕は格ゲー界隈に限らず、対戦ゲーム全般において、「上手い人と交流を持つには自分も上手くないとダメなんじゃないか」と考えていた節がありました。

 それだけに、「格ゲーマーのみなさんってめちゃくちゃ優しいな!』って思いましたね。格ゲーを始めたての僕に対して、プロの方々がこれほど近い距離で教えてくださったり、対戦してくださったりと、まさかそこまで手厚く迎え入れてくださるなんて思いもよらなかったです。

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