ぶいすぽっ!随一の“ゲラ笑い”コンビ 英リサ&橘ひなのが吹かせた“新しい風”を追って

 現在のVTuberシーンにおいて、バーチャルタレントの活躍する分野は日々拡がっている。そのなかで年々支持を強めているのがBrave groupが手がけるVirtual eSports Project「ぶいすぽっ!」である。

 業界においてさまざまな趣向のプロジェクトが存在するなかで、「ぶいすぽっ!」が特色としているのは、eスポーツに特化した事務所であること。とくにFPSジャンルを得意とするメンバーが多く、なかには各タイトルにおける認定ランクで上位に食い込む者もいるほどだ。

 現在所属するメンバー20人は昼夜問わずゲーム配信をおこない、プロジェクト内外で催される大型大会や企画へ参加するなど、ここ数年ですこしずつ存在感を示してきた。配信を通じて印象的なシーンを生み出してきたことで、コラボ商品や商品広告にも起用されるようになっており、所属タレントが様々な形で活躍する場面が増えてきている。

 現在の運営体制となってから約4年ほど、シーンをリードする「ホロライブ」「にじさんじ」にも劣らない「ぶいすぽっ!」の魅力が広く知られつつある。今回はそんな「ぶいすぽっ!」メンバーから、英リサと橘ひなのの2人について書いていこう。

英リサ・橘ひなの 2人のパーソナリティと魅力とは?

 英リサは2020年8月11日にSNSに初投稿、8月15日に初配信をおこないデビューした。

 明るい黄緑色のロングヘアー、薄い青灰色の瞳、白を基調としたドレッシーな装い、公式ビジュアルではスンっとすました表情が描かれ、「バーチャルお嬢様」であると紹介されている。そんな彼女といえば、ぶいすぽっ!内でも随一のおしゃべり好き。周囲とのコミュニケーションで場をワっと沸かせる話し上手な一面を見せている。

 そんな彼女も初配信ではかなり緊張した様子を見せており、何度となく水を飲んでは話しだそうとするが、もともと予定していたことすらうまく話せず、配信後には運営スタッフから指導が入ってしまったという。結果、その後のデビューメンバーには「初配信リハーサルをさせる」という習わしが生まれたという。

 そんな彼女も、いまではぶいすぽっ!メンバーを中心に親しい面々が増えたことで、相手に合わせてテンポよく話題を振っていくトーク上手へと成長した。ボケやツッコミを小気味よく入れていくトーク術は、さまざまな人から親しまれる彼女の持ち味の一つだ。

 くわえて最近では意図しない聞き間違い・言い間違いで、いわゆる“ライン超え”な発言でたびたびリスナーをざわつかせたり、羞恥心とは無縁と言わんばかりの言葉選びやその話題の振り幅で会話相手を振り回したりと、良い意味で“ぶっ飛んだ”振る舞いすら見せるように。そして最後には大声で豪快に笑いとばしてしまうことが常だ。

 また声がクリアでよく通る彼女は、頭の回転も早く、多人数が参加する会話では複数人の話しを聞きつつ「それってつまり○○ってこと?」とパッと話しをまとめてしまうことが何度もある。こうしたパーソナリティも踏まえてか、PR関係の配信では英が司会・進行役に抜てきされることも増えており、本人がどう思っているかは定かではないが、「ぶいすぽっ!のトーク担当」という地位を築きつつある。

 ぶいすぽっ!メンバーらしく、ゲームが得意であることはもちろん、マンガやアニメの知識・愛情はぶいすぽっ!内でも指折り。これまで彼女が好きだと話した作品は数え切れないほどあるが、特に『イナズマイレブン』への偏愛はリスナーも知るところである。

「小学校の時に好きだった男の子がニンテンドーDSで『イナズマイレブン』をやってて、共通の話題作りのために『どんなゲームなの?』って聞いて、アニメDVDをレンタルしたりゲームもやったんだよね」

「基山ヒロトっていうキャラが好きすぎてさ、夢小説とかめちゃくちゃ漁ってて、『こいつと私ってどうあがいても別次元だから結婚できないんだ……』ってなって、夜寝るまえにめっちゃ泣いた」

 こういったエピソードを聞くだけでも、彼女が“オタク”としてどれだけ深みにハマったのかが伝わるだろう。先日発表された最新タイトル『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』ももちろんプレイしており、『イナズマイレブン』公式アンバサダーを務めるゲーム実況者・テレペガが主催する大会にも出場者として参加している。今でも彼女が並々ならぬ愛情を持ち合わせているのが伝わる出来事だ。

【イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード】信じてくれる仲間がいる限り、俺は何度でも立ち上がる(ストーリーモード来たからやるよ)【ぶいすぽっ!/英リサ】

 そんな英リサから1日遅れ、2020年8月14日にデビューしたのが橘ひなのだ。

 8月11日にSNSに初投稿、8月14日にYouTubeで初配信を果たした橘ひなのは、薄い青紫の瞳、ピンクと黒とツートーンにカラーリングしたロングヘアと、キュートなビジュアルが魅力である。

 これまで4年近い活動のなかでさまざまなビジュアルが制作されてきたが、軍服、バニーガール、地雷系を思わせるジャージ姿など、それぞれテイストが全く異なる衣装を身にまとってきた。どの衣装も彼女らしいガーリーなイメージを醸し出しており、多くのファンを魅了し続けている。

 そんな橘は、デビュー以前はさまざまなアルバイトをこなしていたと話している。塾の事務・コンビニ・古着屋・コーヒーレディ・キャバクラと、業種の異なる仕事を渡り歩いてきたという。配信でその頃の思い出話や当時の心境を話していたこともあり、理不尽な対応に悩まされたことやセクハラ被害を受けたことなども明かしている。

 橘は当時のことを「わたしはわりと結構『イヤだ』『キモい無理』と言えるからあれだけど、言えない子もいっぱいいるよね」と振り返っていたが、彼女を筆頭にぶいすぽっ!メンバーには勝ち気な性格のタレントが多く、ゲーム好き・ゲーム上手ということと同じくらい、気も鼻っ柱もつよく、負けず嫌いな一面を感じさせてくれることが多い。

 こういったバックボーンもあり、メンバーが集まったコラボ配信ではグループをまとめたり、ツッコミ役となることも多い橘、その実“おしゃべりグループの半歩外から見ている”ポジションにいることが多いようにもみえる。

 これは同期である英や、活動途中からぶいすぽっ!に加入した小森めと、後輩である八雲べになど、トーク上手なメンバーがぶいすぽっ!内に増えたことも関係しているかもしれない。トーク上手・おしゃべり好きな彼女らの言動をみながらリアクションしようすることが増え、すこし離れたところからピシャリと一喝するような立ち位置・振る舞いが増えたのだ。そんな彼女の振るまいが頭に残っていたのだろう、Neo-Porteの柊ツルギが思わず口にした「お局さん」という言葉には、橘ひなののファンやリスナーもおもわず膝を打っただろう。

 一方で、一発芸やコント好きで笑い上戸な橘は、おしゃべり好きなメンバーとの関わりが深く、相性も非常に良い。オフの日の彼女について「ベタベタしがち」「お酒が入るとキス魔になる」「乙女」と話すぶいすぽっ!メンバーは多く、橘本人も“おしゃべり好き”“陽気な盛り上げ役”に見られるだろう。実際には「人見知り」「騒がしい場所が苦手」という一面も持ち合わせており、大勢のストリーマーが集まるサーバー企画ではグループを組んだ上でソロ活動にいそしむこともしばしば。

 そんな彼女の好きなもの・嗜好を一言で表すながら、ズバリ「平成にまつわるもの」だろう。ゲーム・マンガ・アニメの知識・ネットカルチャーへの造詣深さはぶいすぽっ!内でも指折りであるが、カラオケを使った歌配信の選曲をよく見てみると、そのほとんどが2000年代のJ-POPやアニソン・ボカロ曲ということはよくある。

 くわえて、かつてMobageに存在した1万人以上が参加するなりきりチャットサークルで管理人を務めていたことを話しており、そういった作品・カルチャーへの理解度は抜群に高い。『第6回 Crazy Racoon Cup Apex Legends』では、特別ルール「夏の思い出ポイント」というネタに乗っかって、夏の淡い恋小説をしたためたほどだ。

 そんな彼女のパーソナリティや嗜好性でファンの人気をがっちりとつかみ、2024年6月時点で彼女のYouTubeチャンネル登録者数は約73万人を超え、Twitchチャンネル登録者数も約47万人超えと、両チャンネルともぶいすぽっ!メンバーのなかでもっとも多い。

 同時視聴者数に関してはプレイするゲームによりけりだが、通常配信の最大視聴者数は5,000人から8,000人ほど。カジュアル大会や企画に出場して盛り上がった際には数万人以上の視聴者を集めることもこの1年で増えてきた。いまやぶいすぽっ!の顔役の1人と言っても過言ではないのが、橘ひなのである。

 彼女がぶいすぽっ!の中でもっとも親しいメンバーは、何を隠そう英リサだ。デビューが1日違いということで、同期としてデビュー時から現在まで、多くの場面で2人は配信をともにしてきた。

 ここまでは英リサと橘ひなのを個々に追いかけてきたが、ここからは2人がどのようなタイミングで共に活動をしてきたのか、英(はなぶさ)・橘(たちばな)による通称・はなばなコンビの歩みを振り返ってみようと思う。

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