ヤンキーもの? いや、これは新たな「青春バトルアクション」だーーアニメ『WIND BREAKER』の戦闘シーンに感じた“『HiGH&LOW』と通ずる魅力”

アニメ『WIND BREAKER』に感じた魅力

 現在、アニメ版がABEMAなどで配信中の『WIND BREAKER』は、講談社の公式漫画アプリ「マガジンポケット」で連載中のヤンキー漫画が原作……と言うのは少し違うだろう。本作は確かにヤンキーがたくさん出て来るが、しかしただヤンキー漫画かと言えば、少し違うように思う。では真のヤンキー漫画とは? この定義を語り始めると、今度は火薬庫にロケットランチャーを打ち込むことになるだろう(どんなジャンルでもそうだが、定義の話は戦争である)。しかし、基本的に間違いないのは「ヤンキーとはアウトローであり、アウトローとは一般社会と相いれない存在である」この前提があることだ。

 ところが本作のヤンキーたちは、いわゆる必要悪どころか、完全な正義の味方として描かれている。そうなると果たしてヤンキーと呼べるのか? そういう問題が出て来るが、これに関しては素晴らしい解決策がある。いまを遡ること約10年前、LDHが世に放った『HiGH&LOW』シリーズが発明した「青春バトルアクション」という系譜である。本作『WIND BREAKER』もヤンキー漫画と言うより、同シリーズに近しい、新たな青春バトルアクションと呼ぶべき作品だ。

アニメ『WIND BREAKER』は原作より「青春」にフォーカスした作品

 主人公・桜遥(さくらはるか)は、超不良高校として名高い風鈴高校でてっぺんを獲るために入学するが、そこはド不良の集団でありながら、街を荒らす悪党たちをブチのめし、地域住民に愛される武闘派集団「防風鈴(ぼうふうりん)」として結束していた。これまで特異な容姿ゆえに、周囲から白眼視され、ケンカばかりしてきた桜は、防風鈴の中で周囲に愛されて必要とされる環境に戸惑いながら、それはそれとしてケンカもしつつ、少しずつ成長していく。

 『WIND BREAKER』のアニメは、原作の魅力を再現しつつ、青春バトルアクションとしての 再解釈も取り入れているように感じる。私が感心したのは、本作がアニメ化にあたって主人公の、ひいては原作の「青春」部分にフォーカスしていることだ。

 主人公の桜は、半分だけ白髪のオッドアイという、かなり特徴的な見た目をしている。この見た目のせいで周囲から排斥され、ついに「ケンカが強ければ居場所を作れる」という価値観で生きるようになってしまった。アニメの第一話は、そんな桜の心象風景から幕を開ける。周囲の罵倒に耐えながら、危うい綱渡りをするシルエット。それがあるとき、遂に限界を迎えて落下してしまう。アニメならではの演出だ。その後も桜を取り巻く人々の優しさと、桜自身が内面に抱える善性を丁寧に(しっかりと尺を割いて)描いていく。そして「地域住民から愛される不良」という、一見すると矛盾しているように見える存在を「あり!」にしているのだ。もちろん色鮮やかなグラフィティに彩られた風鈴高校の校舎や、色んな意味で個性豊かな生徒たち、そして甲子園球場ばりに自然に覆われている校舎など、ファンタジックなビジュアルの数々も、本作を「青春バトルアクション」とし成立させるのに一役買っている。

心理描写により映える“高水準のアクションシーン”

 こうしたキャラの心情をしっかり描いたうえで、良質なアクションシーンに突撃するからありがたい。第一話のケンカのシーンから、アクションは100点満点だ。素手の殴り合いは地味になりがちだが、主人公の戦闘スタイルがアクロバットで、それを追いかけるカメラ(視点)も立体的で楽しい。それに実写では無理なアニメ的な誇張も決まっている。防風鈴の面々が登場してからは、キャラごとにアクションのカラーが異なり、有無を言わせぬパワー型や、華麗な中国拳法など、これも見ていて楽しい。アニメにおける肉体的な格闘アクションという点では、かなりの高水準を実現していると言えるだろう。

 こだわりのあるアクションシーンと、丁寧な心理描写、そして次々と出て来る個性豊かなキャラクターたち。本作には見所が盛りだくさんだ。たしかにただ「ヤンキーもの」として本作に臨むだけではなく、新たな「青春バトルアクション」として考えれば、本作はまさに理想的な形だと言えるだろう。桜が防風鈴という優しい空間で過ごす日々と、次々と現れる強敵たちとの戦いのなかで、どう成長していくのか? アニメも原作も、今後が楽しみである。とりあえず僕は杉下京太郎が好きです。

(C)にいさとる・講談社/WIND BREAKER Project

■『WIND BREAKER』ABEMAで地上波同時・3日単独先行配信中
放送日時:毎週木曜日夜24時26分より放送中
放送チャンネル:ABEMAアニメチャンネル
URL:https://abema.tv/video/title/26-219 
※放送開始後1週間、最新話を無料で視聴可

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