話題の新作FPS『CONCORD』は成功するか カギは既存タイトルの“課題”解消にあり
ソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)は5月31日、PlayStationプラットフォームにおける新作情報番組「State of Play」を配信した。
新規IPから人気シリーズの最新作、待望の移植・復刻に至るまで、注目情報が目白押しとなった今回の配信。本稿ではその概要をまとめつつ、SIEがより力を入れているであろうひとつのタイトルについて、成功の可能性を考える。
「アストロ」シリーズから期待のフルゲームが登場
まずは話題を集めた主なタイトルを振り返っておきたい。今回の配信のなかで最も大きなインパクトを残したのは、SIEジャパンスタジオ・Team ASOBIによって開発された「アストロ」シリーズの最新作『アストロボット』だったのではないだろうか。PlayStation VR向けのタイトルとして第1作『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』が登場して以降、第2作『ASTRO's PLAYROOM』がPlayStation 5のプリインストールタイトルに選ばれるなど、PlayStationプラットフォームの魅力に花を添える存在として認知されてきた同シリーズだが、今回発表された『アストロボット』によって、ついにフルゲームのひとつとして、そのラインアップへと加わることとなった。
公式によると、プレイヤーは散り散りになったアストロの仲間たちを探しながら、6つの銀河と80以上のステージを探索するという。各地で課されるミッションの遂行にあたっては、新たに15以上のパワーアップが追加されているそう。PlayStation 5専用コントローラー・DualSenseに搭載のハプティックフィードバック、アダプティブトリガーといった機能をフル活用したユニークなゲーム体験が特徴のようだ。
こうしたインプレッションは、PlayStation 5ならではのものと言える。直前には、前世代機・PlayStation 4に肉薄する販売台数を上げていることがSIEから発表されていた同機。成熟期を迎え、リリースされる同タイトルは、約3年半のキャリアを代表する1作となる可能性も秘めている。
『アストロボット』は2024年9月6日発売予定。6月7日には予約の受付もスタートする。
さらにサードパーティーからは、「モンスターハンター」シリーズの最新作『モンスターハンターワイルズ』も注目を集めた。2023年12月にその存在が明らかとなり、続報が待望されていた同タイトル。PlayStation 4で2018年に発売となった『モンスターハンターワールド』に代わる“シリーズ完全版”としての役割が期待されていることもあり、多くのファンの熱視線が注がれた。
配信と同日に公開されたカプコンによるトレーラーには、シリーズならではの大自然のなかで育まれる人々やモンスターたちの姿が収められている。それだけで期待に胸を熱くするには十分すぎる内容だった。
『モンスターハンターワイルズ』は2025年発売予定。対応プラットフォームは、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PCとなっている。
また、移植や復刻のカテゴリでは、『SILENT HILL 2』リメイクの存在も忘れてはならない。2001年にPlayStation 2で発売された同作のオリジナル版は、ホラーアドベンチャーの金字塔として、さらにはシリーズの最高傑作として広く認知されてきた。昨今の復刻のトレンドのなかで、リマスターやリメイクが切望されてきた作品のひとつだ。2022年には開発中であることを知らせる初報が届いていたが、その後はまったく音沙汰のない状態となっており、それだけに界隈の驚きも大きかった。
今回の発表にあわせて公開されたPlayStation.Blogの紹介記事において、シリーズプロデューサーの岡本基氏、クリエイティブディレクター/リードデザイナーのマテウシュ・レナート氏は、「高い期待に応えられるようにブラッシュアップの時間を十分に取り、自信をもって作品をお届けできるタイミングを慎重に判断しました」「オリジナルに敬意を払った最高のリメイク作品になりました」とアナウンスしている。この言葉に心が沸き立ったファンも多かったのではないか。
『SILENT HILL 2』リメイクは、2024年10月8日発売予定。配信と同日の5月31日には、予約の受付もスタートしている。
SIEがパワープッシュする新作FPS『CONCORD』 ヒットの可能性は?
一方、フリークの注目度とは裏腹にSIEが露出に力を入れていたのが、ファーストパーティーによる新作FPS『CONCORD(コンコード)』だ。最新情報が目白押しとなった約36分の配信のなかで、同社はその紹介に10分ほどを費やした。この事実からは『CONCORD』に対するSIEの本気度をうかがえる。
開発を手掛けたのは、同社傘下のFirewalk Studios。SIEは2021年より同スタジオと新規IPのパブリッシングパートナーシップを締結していたが、2023年4月に当時の親会社である米・ProbablyMonstersからの買収を確定させていた。翌月の2023年5月には、『Concord』(原題)として開発中であることが明かされ、イメージ映像によるティザートレーラーが公開となっている。
アナウンスによると、同タイトルは5対5によるキャラクター主導型のマルチプレイヤーシューティングであるとのこと。プレイヤーは「コンコードギャラクシー」と呼ばれる賑やかなSF世界を舞台に、宇宙船「ノーススター」に搭乗するフリーガンナーとしてバウンティハンティングに身を投じていく。
State of Playで流れたゲームプレイ映像では、総勢16名にも及ぶ個性的なキャラクターたちが、ピストルやマシンガン、ライフルといったおなじみの武器を片手に、独自のスキル、投擲武器などを駆使しながら、敵と戦う様子が確認できた。特筆すべきは、ジャンルの他タイトルとくらべても美しい部類に入るであろう映像表現。まだ実際にプレイできているわけではないため、未知数な部分もあるが、十分にヒットの可能性が眠るタイトルとなっていたように感じた。
SNS上の反応は賛否両論。類似するゲーム性を持つ人気シリーズ「オーバーウォッチ」と比較する声が相次いだ。実際に同シリーズの最新作『オーバーウォッチ2』とは、「5対5」「キャラクター主導型」「マルチプレイヤー」「FPS」「SF×アメコミ」といった共通項がある。
しかしながら、こうした特徴はなにも「オーバーウォッチ」のみに共通するわけではない。すべてを満たすわけではないものの、『Apex Legends』や『VALORANT』といったヒーローシューターにもおなじように当てはまる要素がある。つまり、Firewalk Studiosはこれらの成功作品を明確に意識して、『CONCORD』の開発を行ったとみることもできる。
ここ数年、チームデスマッチやバトルロイヤルはゲームカルチャーを代表するトレンドジャンルとなっているが、直近はピーク時の盛り上がりからやや熱が冷めつつある。『CONCORD』がヒットするかは、「同分野を好みながらも、既存のタイトルに食傷している層」をいかに取り込めるかにかかっているのではないだろうか。
そこには、ゲーム性が魅力的であることはもちろんのこと、既存タイトルとおなじ失敗を繰り返さないことも求められる。先に紹介したタイトルたちはそれぞれに、アップデートを行っても修正されない不具合や、チート問題、ランクシステムの不完全さ、長期運営によるマンネリ化といった課題を抱えている。
『CONCORD』は数あるライバルたちの牙城を切り崩し、ジャンルの人気タイトルとなれるか。今後の動向に注目したい。
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