『Weekly Virtual News』(2024年6月3日号)

ホロライブがドジャースとコラボ BEAMSはVRChatに「どこでもない東京のどこか」をオープン

「メタバース」の市場規模はどうなる? 矢野経済研究所が調査結果を発表

 矢野経済研究所が先日発表した「オタク向けメタバースサービスに関する消費者アンケート調査」によれば、「メタバース」と呼ばれるものの認知度は「非オタク」よりも「オタク」のほうが高い、とのことだ。

(矢野経済研究所「オタク向けメタバースサービスに関する消費者アンケート調査を実施(2024年)」より引用)

 同社の20000人を対象としたアンケート調査によると、このうち2098人の「オタク」を自認する層のメタバースプラットフォーム認知度は52.0%なのに対し、17902人の「非オタク」の認知度は31.3%だ。調査対象総数に対する「認知している人」の比率は、筆者のほうでざっくり計算すると33.5%。これを踏まえると、「オタクのほうがメタバースを認知しやすい」という傾向は、あながち間違いではなさそうだ。

 そして、「アニメ・漫画・ライトノベル」「コンシューマーゲーム」「ソーシャルゲーム」「テーマパーク」「VTuber」「2.5次元ミュージカル」「コスプレ」「フィギュア収集」の8分野を「メタバースへの置き換えが期待できる」と仮定した上で、メタバース関連市場規模を「イベント参加費」は709億円、「ワールド使用料」は980億円、「アバター販売」の市場規模は270億円と推計している。

 推計値の合算は1,959億円。これが、同社の考えるメタバース市場のポテンシャルのようだ。とはいえ、この調査が指す「メタバース」とは、『フォートナイト』も『VRChat』も混ぜ合わせたものと思われる。プラットフォームごとに、マネタイズの有効な糸口は異なる点には留意すべきだろう。そして、その把握には「現地調査」は必須だ。

「どこでもない東京のどこか」を描く、BEAMSの『VRChat』ワールド

 では、実際にメタバースの「現地」を知る企業の動向はどうか。先週、特に反響があったのは、セレクトショップ・BEAMSの公式VRChatワールド「Tokyo Mood by BEAMS」だ。

 レンガ造りの高架下。密集した飲食店。整備された川沿いの通り。空き缶が投げ捨てられた川。道幅を狭めるように自転車が並ぶトンネル。そこに描かれたグラフィティ――どこか見覚えがあるものの、どこにもない、「東京の街のイメージ」が濃縮された空間が、このワールドには広がっている。

 BEAMSのバーチャル店舗は、この雑多な「東京」の一角に建っている。しかし、入場地点からある程度歩かないとたどりつかない。まるで自分たちはこの街の主役ではないと言わんばかりのたたずまいには、「ユーザーに愛される、10年続く空間」というコンセプトが宿っている。

 BEAMSはこれまで、「バーチャルマーケット」への出展を重ねつつ、ユーザーとの交流も積極的に重ねてきた、『VRChat』に注力する企業の代表格のひとつだ。アダストリアやANREALAGEなど、アパレル方面からの参入が続く『VRChat』にて、ついに同社の「拠点」とも言える場がついに立ち上がった形だ。

 5月31日にワールドが公開されると、その日のうちに1万人が訪れ、アーティストを招いたこけら落とし公演も盛況を博すなど、幸先のよいスタートを切っている。なにより、ここは「いい感じの飲み屋街」でもある。今後、少なくないユーザーが日々の酒盛りに興じる場になっても、不思議ではないだろう。

 

 そして、このワールド制作を手掛けたのが、 VR映画スタジオ「カデシュ・プロジェクト」であることもポイントだ。同団体は、作品・イベントを貫く独自の世界観と、全編を『VRChat』で撮影した映像作品がユーザーから支持を得る、人気のクリエイティブチームだ。

 

 一企業が、こうした団体と手を組み、コンテンツを制作するという流れは、なにも本件に限らない。現地を歩むには、現地を知り尽くした人と手を組むのが、なにより肝要だ。

“成功するメタバース”にとって必要なものとは? ヒット施策を手掛けるキーパーソン、往来・ぴちきょ×PONYOが語らう

連載「Performing beyond The Verse」では、バーチャルにおけるありとあらゆる「創作」と「表現」にたずさわ…

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