『崩壊:スターレイル』アベンチュリンはなぜ「第2の主人公」に? 制作陣の愛と“ブラフ”とは

 HoYoverseが配信するスペースファンタジーRPG『崩壊スターレイル』は、4月26日に1周年を迎えた。そんな節目となるタイミングで、作中の登場人物・アベンチュリンがプレイアブルキャラクターとして実装された。

 以前からゲーム内ではその存在が示唆されていたものの、最新章・ピノコニー編で本格的に物語へと参戦したアベンチュリンは、いまやプレイヤーの間で“第2の主人公”と評されるまでに人気を博している。今回は、そんなアベンチュリンを巡るバージョン2.1を考察したい。

※本稿では、『崩壊:スターレイル』バージョン2.1までのメインストーリーのネタバレを含むが、アベンチュリンの根幹となる物語のネタバレには極力触れずに紹介していく。

 アベンチュリンは、作中に登場する大企業「スターピースカンパニー(通称:カンパニー)」の高級幹部の地位に就く人物だ。「カンパニー」は惑星単位で巨大ビジネスをおこなったり、ゲーム内で使われる通貨を発行したりしている宇宙規模の企業で、その重役たるアベンチュリンはいわゆる“やり手のビジネスマン”に分類される。

 しかし、その実態は根っからのギャンブラーだ。カンパニーの「戦略投資部」に所属する彼は、とある“運命的な賭け”によって今の地位に就いた……という出自を持ち、人生をハイリスク・ハイリターンな投資と見なしている。

 そんなアベンチュリンは、最新バージョン2.1のストーリーで内面について掘り下げられると、ピノコニー編の“第2の主人公”という評価を受けることとなる。

バージョン2.0までのアベンチュリン

 冒頭でも述べたように、アベンチュリンの存在に関しては作中でたびたび示唆されたり、密かに登場したりしていた。バージョン1.4の幕間「フューチャーズマーケット」では声だけで出演。カンパニーの同僚であるトパーズを次のプロジェクトである「ピノコニー」に誘うシーンが描かれていた。

 アベンチュリンが物語へと本格的に参入するのは、バージョン2.0から始まった新章・ピノコニー編からだ。ピノコニー編のオープニング映像では主人公と共に踊るカットもあり、冒頭から“ダブル主人公”のような存在感を放っていた。

【崩壊:スターレイル】OP:「WHITE NIGHT」

 ピノコニー編の特徴は、さまざまな勢力が思惑を隠しながら駆け引きをしていく群像劇だ。各勢力の背景はそれぞれ異なるが、銀河の歓楽街「ピノコニー」を作り上げた人物が遺した「時計屋の遺産」と呼ばれるものを探し出すために、各勢力が奔走する。

 このバージョン2.0の物語を進めていくと、会話内でアベンチュリンがとある一族の生き残りであることや、奴隷として育った過去が語られる。

 バージョン2.0でのアベンチュリンは、カンパニーの指示のもと、ピノコニーをカンパニーの所有物にするために動いていた。

 主人公のことを「マイフレンド」と呼びながら協力を迫る一方、その裏で別の目的のために何かを企んでいるような気配もあり、あからさまに怪しい雰囲気が漂っていた。主人公に対して何かを仕掛けようとしていたことが示唆されたり、ピノコニーで起きた殺人事件の現場に誘導させるシーンがあったりと、プレイヤーに「アベンチュリンは危険な人物なのでは」という疑念を抱かせる。

 しかし、こうした怪しい行動はピノコニー編に登場する大体のキャラクターに共通することでもあるし、アベンチュリン以上に行動原理が読めなかったり、裏切りや隠し事をするキャラクターも少なくない。そうしたなかで、アベンチュリンは「ピノコニーを手に入れる」というカンパニーの一員としての目的がはっきりしているだけマシといったキャラクターだった。

 また、プレイヤーの間では「Dr.レイシオ」とタッグを組んでいたことからも信頼している部分もあった。このDr.レイシオは、ピノコニー編の直前の物語、バージョン1.6の幕間で登場したキャラクターで、自らを「凡人」と自称し、「愚鈍」という病を治すために、知識を広める活動をおこなっている学者である。

 愚か者が苦手で、皮肉屋でもある彼は性格に難がありそうにも思えるが、事態を良くするための「処方」はしっかりおこなう。Dr.レイシオが皮肉を言うのは、相手の“病状”が深刻であり、治療すべき相手だと思っているからこその行動だ。学者であり、本質は医者とも言えるのがDr.レイシオなのである。

【崩壊:スターレイル】Dr.レイシオ キャラクターPV 「愚の骨頂」

 ピノコニー編に登場するキャラクターのなかでは「良心」とも呼べるのがDr.レイシオであり、そんな彼と行動を共にするアベンチュリンはまだ信頼できるようなポジションでもあった。

 そして最新アップデートであるバージョン2.1のメインストーリーでは、アベンチュリン視点でゲームをプレイすることに。アベンチュリンがどういった人生を送ってきたのか、自身と対話する形で掘り下げられる。

 この掘り下げがメインストーリーのかなりの割合を占めていることから、バージョン2.1は「アベンチュリンが主人公」と言ってもよい仕上がりになっている。特定のキャラがここまで掘り下げられることはこれまでの『崩壊:スターレイル』ではなかったことだ。

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