壮大な前日譚を経た“本編”のような味わい 『Shadowverse』ストーリー最新章考察&シナリオチームインタビュー

『Shadowverse』ストーリー最新章考察&シナリオチームインタビュー

 本格スマホカードバトル『Shadowverse』(シャドウバース)は、後継作となる『Shadowverse: Worlds Beyond』の開発を昨年末に発表し、それに伴いストーリーも完結に向かっている。リアルサウンドテックは、4月に実施されたメインストーリーのメディア先行プレイ会に参加。メインストーリー最新章「粛清編-後編-」をプレイし、内容の感想と考察をつづっていく。

 また、今回の先行プレイ会に合わせ、シナリオチームへのメールインタビューも実施。本稿後半にその内容を掲載している。シャドウバースのストーリーがどのように紡がれてきたのかを垣間見ることのできる回答となっているので、ぜひチェックしてほしい。

※本稿には『Shadowverse』メインストーリーのネタバレが含まれます。

成長を遂げたキャラクターたちが奮闘 考察されてきた“真実”も明らかに

 大前提として、シャドウバースのストーリーはゲームにおいて「リーダー」となる8人(アリサ、エリカ、イザベル、ローウェン、ルナ、ユリアス、イリス、ユアン)を軸としながら、さまざまな次元・世界を渡り歩いて「管理者」と呼ばれる超越存在に立ち向かう――という大枠がある。現在実装が進んでいる「粛清編」は、紡がれてきた物語のアンサーであると同時に、これまでに登場してきたキャラクターたちが、それぞれのストーリーでの成長を経た姿を見せるという点で、ある意味“ファンサービス”的な魅力も放っている。

 「粛清編-後編-」は、10〜17章がウェルサ組、18〜25章がレヴィール組の戦いを描く。本稿では暗黒の世界・ウェルサでの物語とキャラクターにフォーカスしたい。

 前述のように、「粛清編」に再登場するキャラクターたちは一度さまざまな困難を乗り越えており、それはウェルサも例外ではない。ウェルサにおけるメインキャラであるアルザード、セッカ、ドラーク、カゲロウの4人は、世界が終わってしまうループから解き放たれた世界で、“本来の姿”とも言える立場で暮らしている。

 戦いを終えた平和な世界を描写するにあたり、さまざまな手法が考えられたはずだ。イズニア、アイアロン、ナテラ、そしてレヴィール……。これまでの世界には、それぞれの平和の形があった。そのなかでウェルサは、「暗黒の王」が生まれないように世界を改変したことにより、4人は驚くほど穏やかな日々を過ごしている。そして、そんな日常に少し戸惑いつつも順応し、笑顔とともに過ごす光景が描かれている。

 この世界には管理者・ネルヴァからの刺客としてメイシアが送り込まれており、4人は再び戦いに身を投じていくことになるのだが、「暗黒の王」と対峙していたときの、それぞれに心の葛藤を抱えながらの苦しい戦いではなく、全員が自分を信じ、仲間たちと信頼し合って解決への道を歩んでいく。かつてのウェルサでは絶対に成し得なかった、ある意味では王道なストーリー。そこには、壮大な前日譚を経て読む本編のような“美味しさ”があった。

 道行く人から「4馬鹿」とからかわれたり、セッカが得意げに油揚げの味見をしたり、ドラークは新しい酒場のオープンを画策したり(そして見通しの甘さを怒られたり)……彼らは、そうした何気ない日常こそかけがえのないものなのだと、平和な世の中にありながら、すでに知っている。メイシアによる侵攻は精神的にも揺さぶりをかけてくるようなものだったが、自身の写し身や自らの弱さという難敵に打ち克って世界を救ったウェルサの4人を退けるには、十分ではなかったのだろう。

 戦いの終盤、アルザードがメイシアに向けて放った言葉は、レヴィールで聞いた“あの言葉”。奪われたものを奪い返し、ウェルサにおける当面の危機は去った。依然としてメイシアが取り込んだもの「すべて」を奪還する必要はあったものの、その役割はイズニア国でメイシアと最も強い絆を結んだ彼に託され……。さまざまな推測が飛び交ってきたメイシアの過去や、少なくとも表面的には楽しい日々を送っていたはずのイズニア国への思いなど、新たに明かされる情報も多く、関連する世界に思い入れがあるプレイヤーは、処理し切れない感情を抱きながらのクリアとなるはずだ。

 本稿ではこの後に描かれるレヴィールでの戦いには触れていないが、これはストーリーをじっくり読んでいたら、先行プレイ会の終了時間に間に合わなかったためだ。それだけ濃厚なテキストが用意されており、しっかりと読ませる演出も組み込まれているということでもある。あらゆるキャラクターが持ち味を発揮して活躍してくれる「粛清編-後編-」。自らの手でプレイし、物語の目撃者となってほしい。

 さて、以降はシャドウバースのメインストーリーを手掛けた、シナリオチームへのメールインタビューの内容をお届けする。最新章だけでなく、ストーリー全体での取り組みについても聞いているので、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

『Shadowverse』シナリオチームインタビュー 目標は「見たことはあるが、食べたことはないもの」

――シャドウバースのストーリーを制作していくなかで、どの世界のストーリーにも共通しているテーマはありますか? あるとしたら、どのようなテーマでしょうか。

シナリオチーム:基本的には各世界ごとに独立した話として、それぞれにテーマを設けています。全体に共通する目標としましては、「見たことはあるが、食べたことはないもの」という標語があり、ユーザーが受け取りやすく、なおかつ深みのあるシナリオを目指しています。

――それぞれの世界ではボス格となるキャラクターが存在しますが、「いかにもな黒幕」「脇役かと思ったら黒幕」「メインで出ていたキャラが実は黒幕」など多種多様でした。ストーリーを組み立てていく中で、着地点にあたるラストバトル(=その相手)はどのタイミングで決めているのでしょうか。

シナリオチーム:シナリオ全体の構成は、執筆前から決まっていることがほとんどです。ラストバトルについても戦う相手は決まっており、具体的な(シナリオ的な)倒し方や、倒したあとの処遇については執筆段階の最後まで検討されることが多いです。

――「天象旅籠編」「才気学園編」では、それまでと比べても先の見えない雰囲気、不穏な空気感が印象的で面白く感じました。どのような意図を持って制作されていたのでしょうか。

シナリオチーム:ネクサスをめぐる物語が時空流転編にて一旦の区切りを迎えましたので、「これまでのシャドウバースのストーリーでやっていなかったことをやる」ことを意図して作成されました。

――「粛清編」では途中、衝撃的な事実が明かされ、「すべてを分かったうえで、もう一度読み返すおもしろさ」がありました。ミステリー的な手法でもありますが、このアイデアを実装しようと決めたきっかけ、理由などを教えてください。

シナリオチーム:粛清編は王道の展開を裏切るというコンセプトで作られ、ユーザーに強いインパクトを与えるために設定が考案されました。ADVとして「イラストで見たときに最も印象的になるように」考えられたもので、イラストチームの手で素晴らしいクオリティで仕上げていただきました。

――「粛清編-後編-」ではついにシャドウバースの物語が終わりを迎えます。これまでを振り返って、最も印象的だったパートやキャラクターがあれば教えてください。また、可能ならその理由も伺えればと思います。

シナリオチーム:どの物語も印象深いですが、強いて挙げるならば視点となるキャラクターがアリサたちから離れた「運命相克編」は大きな転換点になったかと思います。

© Cygames, Inc.

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