100円値上げでも倍額に……ゲームセンターの倒産&廃業が相次ぐ理由を考える

ゲームセンターの倒産&廃業が続く理由を考える

ゲームセンターの柱“クレーンゲーム”の難易度を上げる弊害

 とはいえ、クレーンゲームを主流にした生き残り戦略が最適解なのかは疑問である。クレーンゲームを主流とした場合、利益の多くをクレーンゲームで稼がなけれないけない。アニメ『らき☆すた』内で柊かがみがクレーンゲームで散在する様を見て、泉こなたが「偉い人は言いました。UFOキャッチャーは貯金箱であると」と口にしていた。まさにかがみのように貯金箱にお金を入れるようにクレーンゲームで散在してもらうことがビジネスモデルになると、必然的にクレーンゲームの難易度を上げるしかない。

 ただ、クレーンゲームの難易度の高さに不満を持っている人はすでに多い。合同会社Makimaが2023年7月に発表した調査結果によると、「ゲームセンターに一番求めることを1つ教えてください」という設問の1位は『クレーンゲームの取れやすさ』(37%)だった。裏を返せば、クレーンゲームで景品があまりに取れないことに不満を持っている人は少なくないと言える。店舗を維持するためにクレーンゲームの難易度アップに走ると、ユーザー離れを加速化させ、中長期的に見れば得策ではない。

(参照:PRTimes 【調査レポート】ゲームセンターに一番求めることを1つ教えてください。1位は「クレーンゲームの取れやすさ」でした!

 そもそも、昨今は“コスパ”を重視する人が増加している点も無視できない。一般社団法人日本カプセルトイ協会が2024年2月に発表した調査内容によると、「ガチャガチャ」や「ガシャポン」と呼ばれる「カプセルトイ」の2023年度の市場は2022年度の調査(720億円)から159.7%アップとなる約1150億円だった。カプセルトイ市場が右肩上がりを続け、全国にカプセルトイ専門店が増加している状況を鑑みると、「確実に景品がほしい」と考える人は増えているように思う。

(参照:@Press カプセルトイ市場動向調査 令和5年度(2023年)結果報告  製造元出荷ベースでの市場規模は約1,150億円

 仮にほしい景品が当たらなくてもSNSで物々交換する文化が根付いており、クレーンゲームよりも効率良くお目当ての景品を手に入れやすい、という背景もある。景品を取る過程を楽しむことがクレーンゲームの魅力ではあるが、コスパ志向が定着している昨今において、その過程はただ単にコスパの悪い行為と映っているのかもしれない。

 景品が確実に手に入らないクレーンゲームを主流にすると、ゲームセンターは今後も苦戦を強いられる可能性は低くないが、かといってアーケードゲームにもこの状況を覆す切り札があるわけでもない。この状況から、どのようにゲームセンターが生き残っていくのか、今後も注視していきたい。

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