最近、TikTokを眺めていると「ゲーム風の加工」を施した投稿を数多く見かけるようになった。TikTokをはじめとしたSNSで話題になっている「PS2フィルター」だ。同フィルターは日本だけではなく、世界中でトレンドになっている。

　「PS2フィルター」はスマートフォンなどで撮影した写真を、ソニーの家庭用ゲーム機『PlayStation 2』のゲーム画面のように加工できるフィルターだ。フィルターの種類は数が多く、顔色が悪く加工されるホラーゲーム風のもの、画像内に体力ゲージが表示された格闘技風のものなどさまざまだ。

　ちなみに、「PS2フィルター」とは 『PlayStation 2』およびビデオゲーム風に加工するフィルターの総称で、ひとつのサービスが由来になっているわけではない。

　個人のクリエイターが公開しているツールもあるが、最もよく使われているのはAIを活用した『Remini』という写真加工アプリだ。イタリアの開発会社がリリースし、記事執筆時点でApp Storeの『写真／ビデオ』のカテゴリーでInstagramやYouTubeを抜いて1位になっている。

　『Remini』内の「Game 1」「Game 2」「Game 3」「Game 4」と題された4種類のフィルターが「PS2フィルター」と呼ばれ利用されている。AIが写真を加工することから、時には想定外の仕上がりになるのも、思わずシェアしたくなる魅力だ。

　「PS2フィルター」を使った事例をいくつか紹介したい。

　YouTuberのMAHOCHANNELは「PS2フィルター」で加工した画像を使った動画をTikTokに投稿。4枚の写真の加工前後を続けざまに見せた動画が、記事執筆時点で290万回再生されている。

@mahochannel_official

#ps2filter 最後いろいろと苔むす

♬ MP3PSYCHOSIS - Jxxl3s

　TikTokでは彼女が使用したテンプレートが人気なようだ。ちなみに、彼女はまず『Remini』で写真を加工して、動画編集アプリ『CapCut』のテンプレートで画像を繋ぎ合わせて動画にし、TikTokに投稿。投稿までに3つのアプリを使いこなしている。

　インフルエンサーのkemioは「let’s play my game」というキャプションとともにInstagramに画像を投稿。インフルエンサーのよしミチのふたりと渋谷で撮影したと思しき写真など、kemioらしい10枚の写真を加工して投稿している。

　ブームは若者だけでなく大人にも浸透している。

　お笑いコンビ・スリムクラブの真栄田賢はXとInstagramの両方に「PS2フィルター」を使った写真を投稿。数日前に相方の内間政成が我が子の卒業式に際して公開したソロショットをフィルターで加工している。キャプションには「内間を流行りのPS2化してみたら、『絶対絶命都市』感が出てきた。」と、人気ゲームの名前を挙げた。

　さまざまな投稿を見ていると、「PS2フィルター」は大きく分けて2つの世代間で流行していることが見て取れた。

　1つ目は、フィルターやエフェクトを日頃から使っているZ世代だ。前述のMAHOCHANNELのように、アプリをまたがった複雑な工程をいとわない「写真加工ネイティブ」な世代であり、「Y2K」（※1）の流行りも相まって多くのユーザーが「PS2フィルター」を利用している。PS2が発売されたのは2000年、『Y2K』のまさにその年だ。『プレイステーション 2』自体には馴染みのない世代だが、Y2Kど真ん中の“エモい”見た目に魅力を感じている。

（※1「Y2K」：「Year2000」を指す略語。昨今、2000年頃に流行したファッションのリバイバルが再燃している。Kは1000＝1Kから）

　2つ目の層は『PlayStation 2』を現役で遊んでいた「PS2ネイティブ」の世代だ。フィルターで加工された画像の仕上がりを見て、「グランド・セフト・オート」「龍が如く」「バイオハザード」といった具体的なゲームシリーズを想起し、似ていると懐かしんでいる。

　『PlayStation 2』は世界で最も多く売れたゲーム機（記事公開時点）だ。ソニーによると世界累計販売台数は1億5,500万台以上で、後継機種の『PlayStation 3（8,740万台以上）』、最新機種の『PlayStation 5（5,480万台以上）』と比べてもダントツに多いことがわかる。『PlayStation 2』に懐かしさを覚え、フィルターで遊んでみたくなる人が多いのも頷ける。

　「写真加工ネイティブ」のZ世代がトレンドセッターとなり、SNSで画像を見た大人の「PS2ネイティブ」世代にまで波及している「PS2フィルター」。“エモい”写真が好きな世代も、“エモい”ゲームを遊んだ世代も、友だちの家で家庭用ゲームを囲んだあの頃のようにいっしょになって遊んでみてはいかがだろうか。