佐藤詩織が海外留学を経て選んだ”陶芸アーティスト”の道 デジタル×アナログで作り上げた新たな創作スタイル

陶芸に必須のアイテムはiPad?

――ここからは、陶芸に関して具体的な制作方法を教えていただきたいです。

佐藤:陶芸に関しては、まずは大まかにiPadでラフのスケッチを書きます。ここで、コンセプトとかも7〜8割くらいは固めてしまいます。そこから、企画書のようなものを作って、頭のなかの整理ができたら土に向かって作り始める感じです。

――実際に土に向かうまでの作業が、かなりあるんですね。

佐藤:そうですね。個展のために「ZINE」を作ることもあるので、MacBookやiPadなどデジタルなアイテムを使って作業をする時間は長いです。

――デジタルで描いたものは、ほぼ100%の形で再現できるのですか?

佐藤:ほぼ、できます。

――それはすごい……!

佐藤:留学から帰ってきたあと、栃木の益子の陶芸家の方に弟子入りという形で、いちから教えてもらって、そのときにたくさん勉強させていただいて。飲み込みが早いと褒めてもらえました。

――なるほど、鍛錬を積まれたからこそなのですね。「ZINE」には、どのようなものを載せられているのでしょうか。

佐藤:一つひとつのコンセプトや、何を大事にして作ったかなど、写真よりは言葉を多く載せています。陶器とか陶芸ってよく分からないファンの方もいるかな? と思ったので、どうして陶芸を始めるようになったのかとか。自分の想いも載せながら。

「若い人に陶芸へ興味を持ってもらえるように」

――今回の個展は、佐藤さんがトータルプロデュースされているのですよね? 什器まで自作だとか。

佐藤:はい。作った陶器のコンセプトに合わせて、置く台もこだわりたいなと思って。たとえば、黄緑と赤と白の花瓶の作品だったら、什器もその割合で塗ったりしています。

――すべて、ご自身で行われているのですか?

佐藤:デザインを組んだあとは、美大でできた友人に3Dデータへ落とし込んでもらって、そこからホームセンターで木を買ってきて、色をつけて、すべて手作業で組み上げてもらいました。

佐藤詩織

――こだわりがすごい……!

佐藤:本当に、まわりに支えてもらいながら。正直、美大に在学していたとき、ここまで友達に助けられるようになるとは思っていなかったです。何か悩みごとがあったら、友達に言えば解決しちゃうみたいな。最近はとくに、美大に行って良かったなって。人に恵まれて生きてるなと感じています。

――素敵な財産ですね。では、最後に佐藤さんが目指している目標を教えてください。

佐藤:陶芸を教えてもらっているときに、みなさん「後継者がいない」と言っていたんです。すごくいい日本の文化なのに、後世に伝えていける人がいない。「若い人に、どうしたら興味を持ってもらえるんだろうね」と悩まれていることを知って、自分も何か協力ができないかなと思うようになりました。たしかに、陶芸ってむずかしいイメージもありますよね。画材屋さんはどこにでもあるし、絵を描くのはキャンバスと絵の具さえあれば始めることができるけど、土をいじるとなると専門的な知識がないとできないような気がするので。

――アートのなかでもハードルが高い分野ですよね。

佐藤:そうなんです。なので、どうにか身近に感じてもらいたいと思って、今回の個展のテーマが出来上がりました。絵画は、ホテルとかでもベッドの近くに飾られていたりして、私たちの身近にありますよね。だから、パッと見は絵画なのに、近くで見たら陶器だったみたいな。そういう表現法にできたら面白いじゃないかなと思って、そのような作品を作っているので、ぜひ個展を見に来てください。

 ちなみに、夏にあと2つ個展をやることが決まっているんです。今までは東京でしか開催できなかったのですが、次は大阪と神戸で。コンセプトはブラッシュアップしていこうと思っていますが、絵画のような陶芸作品というのは主軸にして、これからもいろいろ展示をしていきたいです。

■個展概要
佐藤詩織 3rd Solo Exhibition『TOU(トウ)展』
チケット:https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02e9z46g5ji31.html

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