小笠原流・実践レビュー 現代の傑作品を訪ねて(第17回)
『iPhone Duo』開閉の感触から画面の折り目まで、仕上がりをじっくりチェック ヒンジの滑らかさと筐体の質感が秀逸

長らく噂されていたApple初の折りたたみスマートフォン『iPhone Duo』が、遂に発売した。横方向に開くブック型のデザインを採用し、閉じた状態ではコンパクトながら、開くと7.6インチの大画面が現れる。一般的な縦長のスマートフォンとは異なる横幅のある形状から「パスポート型」とも呼ばれるが、先行して販売されている「Pixel Fold」シリーズや『Galaxy Z Fold8』などをイメージすると、どのような端末なのかがイメージしやすいだろう。
発売後いち早く手にしたアーリーアダプターからは、ヒンジの滑らかな開閉感や折り目が目立ちにくいNano-textureディスプレイなどを評価する声が上がっている。一方で36万円を超える価格設定や254gという重量を気にする声も少なくない。折りたたみならではの魅力がある一方で、価格や重さが購入を検討するうえでのハードルになっているようだ。
では、実際に手に取るとどのような魅力や特徴が見えてくるのだろうか。今回、発売にあわせて『iPhone Duo』を試用する機会に恵まれた。そのため本稿では、筐体の薄さや素材の質感、ヒンジの構造、ディスプレイやカメラ周辺のデザインなど、ハードウェアに焦点を当てたレビューをお届けしたい。
素材からヒンジの動きまで、品質の高さを感じる仕上がり

それでは、さっそく『iPhone Duo』の外観をチェックしていこう。
『iPhone Duo』は、外側に5.4インチ、内側に7.6インチの合計2種類の画面を搭載したスマートフォンだ。普段は閉じた状態で使いながら、コンテンツを大きな画面で見たいときや2つのアプリを使ってマルチタスクをしたいときに内側の大きな画面を使うなど、シチュエーションに応じて2枚の画面を使い分けられるのが最大の特徴となる。
本体はフラットな形状を基本としつつ、角や縁の処理まで丁寧にまとめられており、折りたたみ式という新しい形状でありながらも、iPhoneシリーズらしい端正な印象に仕上がっている。
フレームには、航空宇宙や自動車などに使用される「グレード5チタニウム」が採用されている。鏡面仕上げのフレームは光が当たるとキラリと光り、金属らしい存在感と高級感を楽しめる仕上げだ。
本体サイズは、開いた状態で幅164.6mm、高さ117.8mm、厚さ5.2mm。閉じると幅84.1mm、高さ117.8mm、厚さ11.3mmとなる。重量は254gだ。

開いた状態で特に目を引くのは、やはり5.2mmという薄さ。左右のパネルをヒンジでつなぎ、内側に折りたためる構造を備えているにもかかわらず、開くと驚くほど薄い板状の端末になる。ディスプレイを大きく広げられることと、薄型のスマートフォンとして成立させることを両立しようとしているのが伝わってくる。
もちろん、閉じた状態では厚さ11.3mmとなるため、一般的なバータイプのスマートフォンと比べると厚みがある。それでも、幅と高さはパスポートよりもコンパクトで、手のひらに収まるサイズ感にまとまっている。実際に手に取ると、数字から想像するよりも小さく感じられる。
一方、重量については、見た目以上にずっしりとした印象を受けるかもしれない。254gという重量は『iPhone 18 Pro Max』の249gをわずかに上回る。同じパスポート型の形状を採用する『Galaxy Z Fold8』が201gであることを考えても、『iPhone Duo』は決して軽い端末とは言えない。
ただし、持ったときの印象は開閉によって変わる。閉じた状態では厚みと重量が気になる一方、開くと本体が薄く横に広がるため、重さの感じ方も変わってくる。数字だけでは説明しきれない独特のサイズ感と持ち心地も『iPhone Duo』の特徴だ。

背面は、カメラユニットを除けば比較的シンプルなデザインになっている。素材には強化ガラスの「Ceramic Shield」が使われており、フレームのチタニウムとは異なる素材を組み合わせながら、全体の仕上げに統一感を持たせている。
前面にはさらに強度の高い「Ceramic Shield 2」を採用し、Appleは従来モデルと比べて耐擦傷性能が向上したと説明している。日常的に手で触れたり、ポケットやバッグに入れたりする製品だけに、外装の美しさだけでなく、傷つきにくさを意識しているのも嬉しいポイントのひとつだ。

折りたたみ式のスマートフォンで、外観上の重要なポイントになるのがヒンジだ。『iPhone Duo』のヒンジ部分には、マイクロブラスト加工によって光沢を抑えたチタニウムのヒンジカバーが採用されている。鏡面仕上げのフレームとは異なる質感で仕上げたことで、構造上必要なパーツをオシャレに演出している。
ヒンジは100以上の部品で構成され、開閉時の動きを細かく制御する。実際に開閉するとヒンジの動きはかなり滑らかで、角度も自由に止めながら動かせるため、開き具合の細かい調整がしやすい。完全に開いた状態では左右のパネルがほぼフラットにつながり、大きな1枚の画面として使える。

本体を途中まで開いた状態で片側の画面を机に置けば、画面を半分だけ立てたような形にできる。さらに、本体を折り曲げて逆V字型に置くテントスタイルにも対応するなど、折りたたみ機構そのものをスタンドとして利用することも可能だ。
机の上で動画を再生したり、画面を見ながら作業したりする際にもこの形状が役立つ。アクセサリーなしで本体の置き方まで変えられる点は、通常のiPhoneにはない特徴だ。
カメラ撮影でも、折りたたみ構造を活かせる。本体を折り曲げて安定させれば、手で持ち続けずに撮影する「置き撮り」が可能だ。例えば、歴史的建造物などの観光スポットを背景に、自分の全身を収めた写真を撮るといった使い方もできる。
また、背面カメラで撮影する際、本体を開いて外側のディスプレイにプレビュー画面を表示すれば、被写体側からも構図を確認できる。「もう少し建物を大きく入れてほしい」といった要望を撮影者に伝えながら、納得のいく構図に調整しやすいのも折りたたみ端末ならではの利点だ。
Nano-textureと独自構造で、見やすさと耐久性に配慮

ディスプレイは、外側が5.4インチ、内側が7.6インチ。いずれもOLEDを採用し、最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートに対応する。解像度は外側が1,398×2,034ピクセル、内側が1,878×2,670ピクセルだ。折りたたんだ状態では外側の画面を使い、本体を開くと7.6インチの大画面が現れる。
内側のディスプレイには、光の反射を抑えるNano-texture仕上げが施されている。照明や窓から差し込む光が映り込みにくく、明るい場所でも画面の内容を確認しやすいのが特徴だ。表面は一般的な光沢ディスプレイとは異なるマットな質感で、指で触れたときにもスルスルとした独特の感触がある。
ただし、Nano-texture仕上げには気になる点もある。表示する内容や見る角度によって写真や動画が白っぽく見え、光沢のある外側のディスプレイの方が色鮮やかに感じられることがある。内側の大画面は写真や動画を楽しむうえでも魅力的なだけに、コンテンツ本来の色鮮やかさが損なわれて見えることがあるのは惜しいところだ。

折りたたみ式のディスプレイでもうひとつ気になるのが、画面中央の折り目だろう。『iPhone Duo』も完全に平らな画面というわけではなく、斜めから見ると折り目がうっすら見え、指でなぞるとわずかな凹凸も感じる。ただし、普段使う分にはほとんど目立たないため、折り目について強く意識する必要はなさそうだ。
Appleは、こうした折り目の影響を抑えるため、ディスプレイ内部の構造にも工夫を凝らしている。複数の層からなるディスプレイに高強度ガラスやチタンプレート、独自の接着剤などを組み合わせ、折り曲げる際に各層が本のページのように相互にスライドする構造にすることで、層同士の摩擦を和らげているという。折り目部分の耐久度については、まだ発売したばかりで何とも言えないが、長期間使用した際にどの程度変化するのか、今後も注目していきたい。
背面カメラは48MPメイン+超広角の2眼仕様

背面のカメラユニットには、48メガピクセルのメインカメラと超広角カメラを搭載する。メインカメラは26mm相当、F1.6のレンズと光学式手ぶれ補正を備え、超広角カメラは13mm相当、F2.2のレンズを採用。超広角カメラは120度の画角に対応し、マクロ撮影にも利用できる。
カメラユニットは背面から張り出しており、閉じた状態で机に置くとカメラ部分が接地面より高くなり、ガタつきが発生する。気になる場合はケースの併用をオススメする。
一方、折りたたみ機構や薄型化との兼ね合いもあり、専用の望遠カメラは搭載していない。2倍ズームではメインカメラの中央部分を切り出して利用し、52mm相当の画角で撮影する。カメラの数や構成を重視したいなら、同じく2026年秋に発表された『iPhone 18 Pro』シリーズを選ぶのも手だ。

内側のディスプレイには、自撮りやビデオ通話用のカメラとして、アンダーディスプレイ方式のインナーカメラを搭載する。通常のスマートフォンでは、前面カメラのために画面の一部を切り欠いたり、穴を設けたりすることが多いが、『iPhone Duo』ではカメラを画面の下に配置することで、表示領域を広く確保している。画面を開いたときにカメラ用の穴に視線を奪われにくく、大きなディスプレイをすっきり見せられるのが利点だ。
生体認証は指紋認証のみ、MagSafeアクセサリは互換性に注意

生体認証にはFace IDではなく、側面のサイドボタンに内蔵されたTouch IDを採用した。できれば顔認証も使えた方が便利ではあるが、折りたたみ端末の場合は外側と内側の両方に顔認証用センサーが必要になることから、コストや内部スペースの関係上、Touch IDのみの対応になったと思われる。
本体はIP68等級の防塵・防水性能を備え、Appleの試験条件では最大水深6mに最長30分間沈めても耐えられるとされている。従来のiPhoneと同様に、水のある場所や雨が降っている屋外でも安心して使うことができそうだ。
端子はUSB-Cで、USB 3(規格としてはUSB 3.2 Gen 2相当)による最大10Gb/sのデータ転送に対応する。通信機能はWi-Fi 7とBluetooth 6を備え、MagSafeによる最大25Wのワイヤレス充電も利用できる。

MagSafeアクセサリーを使う場合は、本体の形状との相性にも注意したい。背面に取り付けるウォレット型アクセサリーなどは、一般的なiPhone向けの製品だと本体からはみ出す場合がある。また、開いた状態で充電器や車載マウントに取り付けると、重心の位置によっては安定しにくいこともある。従来のiPhone向けアクセサリーをそのまま使えるとは限らないため、購入前にサイズや取り付け位置を確認しておくと安心だ。

『iPhone Duo』専用に作られたApple純正の「スタンド付きiPhone Duo フォリオ」は、マグネットで本体背面に取り付ける手帳型ケースだ。端末の表面を保護できるほか、スタンドを使って本体を立てることもできる。ただし、カバーを備える分、本体のみの場合よりも厚みは増す。せっかくの薄い筐体を生かしたい人にとっては、保護性能と装着時のサイズ感のどちらを優先するかが悩みどころになりそうだ。
Appleらしいこだわりが随所に感じられるデザインに満足

『iPhone Duo』をじっくり触ってみて感じたのは、初代モデルながら、ハードウェアとして非常に完成度が高いということ。特にヒンジの開閉は滑らかで、これまで触れてきた他社製の折りたたみスマートフォンと比べても、その仕上がりのよさを感じた。画面中央の折り目も目立ちにくく、チタニウムフレームの高級感も相まって、手に取ったときの満足感は高い。デザインや質感、折りたたみ機構の完成度という点では、Appleらしいこだわりが感じられる端末だ。
一方で、254gという重量や、専用の望遠カメラを搭載していない点は、人によって評価が分かれそうだ。普段からスマートフォンを長時間持ち歩くのか、望遠撮影をどの程度使うのかなど、自分の使い方と照らし合わせて検討したい。そして、何より大きなハードルとなるのが、36万4,800円(税込)からという価格だ。折りたたみ式ならではの魅力はあるものの、誰にでも気軽にオススメできる端末ではない。
ただ、実際に日常生活の中で使ってみると、従来のスマートフォンにはなかった便利さや、こうした使い方ができるのはうれしいと感じる場面もあった。今回は主に筐体のデザインや素材、ヒンジ、ディスプレイといったハードウェア面を中心に紹介したが、実際の生活の中でどのように活用できたのかについては、別途、実践編のレビューでお届けしたい





















