なぜVTuberのプロモーション案件はウケるのか “個性と愛”が紡いだ事例に見る成功の秘訣

「VTuber×食」の意外なシナジー 口コミから始まるプロモーション案件

 続いてはバーチャルタレントやストリーマーならではの食生活が繋いだ縁を紹介しよう。

 ストリーマーやバーチャルタレントといえば、基本的には自宅からパソコンを使って配信するのが基本となる。そのため「ほとんど家から出ない」という者も多く、一日中配信だけして過ごすという者も多い。

 実際、彼らの中にはほとんど自炊をせず、出前アプリでデリバリーしてもらうという者が非常に多い。しかも配信中に配達を頼み、インターフォンが鳴ったタイミングで受け取りに行くという者もいるほどだ。そんな彼らに食べ物に関連する依頼が舞い込むこともあるのだから、非常に面白い。

 冷凍宅配食サービス・nosh(ナッシュ)は、バーチャルタレントシーンやeスポーツシーンを幅広く見ている人ならば名前を知っている方も多いのではないだろうか。ホロライブ・にじさんじ・Neo-Porteなどに所属する面々や、個人として活動しているストリーマーなど、さまざまな面々がnoshのプロモーション配信をしてきた。

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 配信内容は、いわゆる実食してみての味見や数日ほど実際に体験してみてのレポートが主だ。重要なのは、一度かぎりの配信ではなく、さまざまな場で数年に渡って継続的にプロモーションをしている点にある。たとえnoshを食べるタイミングが無くても、「noshとはこういう商品」という風に覚えてもらえるだけでもプラスなのだ。

 もうひとつ、白雪レイドと「ベースブレッド」のプロモーションも面白い相関性がある。ベースブレッドは、1食で1日に必要な栄養素の1/3を取れる「完全栄養パン」として販売されている食品だ。

 白雪レイドは一時期このベースブレッドにたいそうハマっており、2020年年末から21年の年明けにかけて配信のなかでたびたび話題にあげ栄養満点かつコンビニですぐに買えるお手軽なパンとしてよく食べていたようだ。

 配信で食べるときには「ベースブレッドには個体差がある」「味が良いのと良くないのがある」と辛めの評価をしつつも、おおむね美味しく食べていたようで、「今日はチョコを食べますね~」などといいつつ食し続けていた。

 すると徐々に人気・認知が広まり、葛葉・渋谷ハルとともに臨んだ『第6回 Crazy Raccoon Cup Apex Legends』での練習中、会話ネタのひとつとして盛り上がったのをキッカケにAmazonショップのランキング上位にランクインするほどの話題となった。

 後日、白雪にベースブレッドを販売しているBASE FOOD社から特別クーポンが発行され、自身のSNSでも宣伝を開始。すると、これまた「ベースブレッドといえば……」と話のネタにあがることが多くなったのだ。

 さまざまなストリーマーや配信者にベースブレッドを薦めつつ、顔なじみのメンツには後日「そういえばベースブレッド食べた?」と実食レポートを求める。実食した面々の意見を聞きつつ、ときに辛口な評価を言われても「まぁ、それはそうだね」と頷く白雪。まるで街頭レポートのような温度感で続いていくゆるい会話は口コミのようになり、簡易的なプロモーションとして機能していく。こうして白雪はベースブレッドを徐々に広めていったのだ。

 2022年4月にはBASE FOOD公式YouTubeにて白雪・渋谷2人が出演するコラボ動画が投稿されるなど、BASE FOODもネットカルチャーを通じたプロモーションに力を入れる方針なのがうかがい知れる。

 ちなみにだが、白雪・渋谷が所属しているNeo-Porteが実質的にスタートしたのが1期生がデビューした2022年3月中旬頃であり、2人が出演した動画が投稿されたのが直後の4月頭だったことを考えれば、このベースブレッドのプロモーション案件はNeo-Porteにとっての初案件と言い換えてもいいだろう。

白雪レイド&渋谷ハル × ベースブレッド コラボCM (30秒)【VTuber】

 この流れが一つの極みに達したのは、2022年4月に行われた『Vtuber最協決定戦 APEX season4』にて、白雪が樋口楓・藍沢エマと3人でしらんでぇとして出場したときであろう。

 それまでの活動を通じてあまり絡みがなかった3人は、大会に向けてピリっとしたムードもありつつ、距離感を測って会話するすこし気まずいムードもあった。

 そんななかで話題に上がったのがベースブレッドだった。「会話ネタに困ったら食事のネタ」とはよく言われるが、白雪がベースブレッド好きであることを知っていた樋口は、「以前から気になっていた」ということでベースブレッドを食し、後日「パン好き」を自称する藍沢もベースブレッドを食した。各々が感想を率直に話しつつ、「どの味が美味しいか?」について語り合い、互いを知る契機を掴んでいったのだ。

 なんとも絶妙な距離感でスタートした3人は、このことをきっかけにゆるいムードのままながらも仲を深め、チームとして完成をみた。そのチームワーク・関係構築のなかで、ベースブレッドの存在は忘れてはいけない。

 大会中でも人気チームとなった3人は、その後も何度かに渡ってともに配信をするようになったわけだが、9月にはなんとBASE FOOD公式YouTubeに出演し、新製品であったミニ食パンの実食をしたのだ。

【紹介編】白雪レイド&藍沢エマ&樋口楓 × ベースブレッド【しらんでぇ】

 白雪が個人的にハマって食べ続けたパンが、いつの間にか大きなうねりとなって多くの人を巻き込んでいく。個人の行動を企業側がキャッチして広める、自然発生型のインフルエンス事例といってもいいだろう。

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