なぜ”平成”コンテンツはZ世代女子を虜にするのか 「平成女児」「平成ギャル」の流行から考える

”平成”コンテンツがZ世代女子の心を掴む理由

2024年もZ世代女子のなかで“平成”ブームは続くと考える理由

 Z世代の女子たちが、”平成”に魅力を感じる理由としてまず挙げられるのは「懐かしさを感じる」からであろう。自分が子どものころに好きだった物や流行していたキャラクターを見て胸がときめくのは自然なことだ。

 では、なぜその文化を経験していない世代が、どうしてこれほど魅了されるのだろうか。私はその理由を「シンプル・ナチュラル文化に対する物足りなさ」だと考えている。Z世代の女子たちは、平成が終わって主流となったナチュラルなヘアメイクやシンプルなデザインなどに飽き、どこか物足りなさを感じていたのではないかということだ。

 メイクの例を挙げてみると、平成は足し算で令和は引き算がポイントであることがわかる。平成の女子たちはつけまつげを重ね、目を真っ黒のアイライナーで囲むなど、”盛る”ことに命をかけていた。

 一方令和では、どれだけ自然に見せられるかが重要となり、引き算をするようになったと感じる。つけまつげを付ける人は少数派になり、その代わりにナチュラルなまつ毛パーマをするようになった。そして、アイライナーは真っ黒よりもナチュラルなブラウンが人気になった。

 また、平成には「デコる」という文化があったことも、「盛る=カワイイ」を象徴しているといえるだろう。当時の女子高生たちは携帯電話をキラキラのラインストーンでデコっていたが、令和になってスマートフォンをデコっている人を私は見たことがない。

 さらに女子高生に欠かせないプリントシールの落書きも大きく変化した。平成ではスペース全体を文字やスタンプで埋め尽くしていたのに対し、令和に入ってからは落書きをしないのが定番になりつつある。

 このように平成が終わってからというもの、シンプル・ナチュラルを良しとする風潮があったことは明らかである。だからこそ、それに物足りなさを感じていたZ世代の女子たちにとっては、平成の「盛る」という行為が新鮮に感じられたのだろう。そして、実際にその時代を経験したことがないために、「やってみたい」という気持ちがより一層掻き立てられるのではないだろうか。

 したがって、”平成”コンテンツは「懐かしさ」と「シンプル・ナチュラル文化に対する物足りなさの克服」という2つのポイントを満たしているため、その文化を経験したかどうかにかかわらずZ世代の女子から人気を集めているのだろう。個人的には、2024年以降もこのブームは続いていくと考えている。なぜならば、自分自身を「盛る」ことはある意味、心に鎧を付けているようなものであり、常にSNSを見て自分と他人を比較してきたZ世代にとっては精神を安心させる材料となるからだ。実際に私自身もまつげエクステやカラコンで「盛る」ことで自分に自信を持てるようになった人間の1人だ。

 ナチュラル・シンプルが良しとされる文化においては、どうしてもその人が本来持っている”素材”が仕上がりを左右する。当然、一人ひとりが異なる魅力を持っているのだが、「私は素材がいいので、ナチュラル・シンプルで勝負します!」と胸を張って言える人は実際それほどいないだろう。SNSが発展し、自分より容姿が優れている(と思う)人を飽きるほど見てきたZ世代の女子であればなおさらだ。だからこそ、濃いめのメイクや派手なファッションで自らを「盛る」ことができる”平成”コンテンツとの相性が非常に良かったのだと考えられる。

 つまり、SNSによって加速しすぎてしまった外見至上主義が落ち着きを見せない限り、”平成”コンテンツの流行は続くのではないか、というのが個人的な見解だ。そして、私自身は自分を「盛る」という流行が、今後も続いてほしいと願っている。

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