『ユニコーンオーバーロード』先行レビュー レトロとモダンが交錯する“骨太”なSRPG

『ユニコーンオーバーロード』先行レビュー

 アトラス×ヴァニラウェアのタッグが贈る新作シミュレーションRPG(以下、SRPG)として、界隈の注目を集め続けている『ユニコーンオーバーロード』。約3か月後に迫る発売日を前に、リアルサウンドテックはゲーム序盤の先行プレイの機会を得ることができた。本稿では、主にシステム面から『ユニコーンオーバーロード』の魅力へと迫っていく。

随所から面白さを感じ取れるバトルシステム。緻密に練られた設計には脱帽のひとこと

『ユニコーンオーバーロード』プロモーション映像

 物語の舞台となるのは、「コルニア王国」「ドラケンガルド王国」「エルヘイム」「バストリアス」「アルビオン教国」という5つの国家からなるフェブリス大陸だ。そのうちのひとつ・コルニア王国は、やがてすべての国を支配することになるヴァルモアの反乱によって亡国となり果てた。周囲の人間たちのはからいもあり、なんとか落ち延びた同国の王子・アレインは、王家に伝わる秘宝・一角獣の指輪を手に、解放軍を率い、大陸に安寧を取り戻す戦いへと身を捧げていく。

 プロローグが終わると、一連のバトルシステムの基礎を学べるチュートリアルがスタート。『ユニコーンオーバーロード』には、実際の時間経過と同期する形で刻々と戦況が変わっていく、リアルタイムシミュレーションの仕組みが取り入れられている。ともない、バトルマップには制限時間も設定されているため、何度もおなじ行動を繰り返しながら、じわじわと敵を削っていくような方法も取りづらくなっている。

 難易度は「CASUAL」「TACTICAL」「EXPERT」の3種類。それぞれが「EASY」「NORMAL」「HARD」にあたる。プレイヤーの好み(物語優先か、システム優先か、それともバランスか)に応じ、自由に選べる仕様となっている。

 なお、ゲーム内の時計は、ワンボタンでポーズ/スタートを行えるため、時間に追われながらの操作に不安があるというプレイヤーは、適宜時間を止めながらプレイを進めることも可能だ。

 『ユニコーンオーバーロード』では、ターン制のSRPGのようにすべてのユニットが一斉にマップ上に出撃するのではなく、適宜必要な部隊を拠点から出撃させる方法が採用されている。また、部隊数にも制限があり、画面左上の「Brave」の数(画像であれば、1部隊)までしか出撃させられない。そのため、プレイヤーは戦線の状況や制限時間、現状のBrave数などを考慮し、出撃する部隊を決めることになる。

 一見なんでもない要素のように見えるこの出撃数だが、制限時間、敵の強さといった難しさに関連する要素と絡まり合い、『ユニコーンオーバーロード』に戦略性をもたらしている。特に高難易度では、最初にどの部隊を出撃させるかによって戦況が大きく変わるケースもある。

 部隊には、それぞれ左・中央・右の3マスからなる前衛・後衛の要素が存在する。各マスには、未配置のユニットを(最大人数など、一定の制限の範囲で)自由に置くことができる。画像では、まだ最序盤のチュートリアルにあたる部分ということもあり、主人公・アレインが率いる部隊のみ、かつユニットはアレインとスカーレットの2人という、最小限の構成となっている。

 部隊を選択すると、拠点を中心とした一定の範囲内から、配置する場所を選択できる。このマップでは、本拠地のすぐ右(4時の方向)に別の拠点と敵部隊が存在している。敵の中には、本拠地に向けて進軍してくるものも存在するため、基本的には敵と本拠地を結ぶ直線上など、防衛するうえで不都合のない場所に味方部隊を出撃させるのがベターだ。

 また、各ユニットには、「装備」や「ステータス」といったSRPGでもおなじみの要素のほか、「作戦」と呼ばれる行動指針のようなものも用意されている。同箇所は、バトルの状況とリンクする「条件」(フラグ)をユニットに与えることで、基本的にはオートアクションである彼らの行動をコントロールする設定を行う要素。画像では、スカーレットが繰り出す魔法属性のスキル「ホーリーライト」に、「重装系の敵を優先」というフラグが与えられている。このようにパターンを細かく設定していくことで、オートでありながら、より的確な行動をユニットにさせられるというわけだ。

 アトラス担当者の方によると、「CASUALではそこまで考慮する必要がないものの、それ以上の難易度やオンライン対戦では、作戦を駆使することが大切となってくる」とのこと。同要素はコア層に向けた“システムの伸びしろ”にあたる部分なのだろう。

 さらに、各部隊にはバトルを連戦できる最大数も設定されている。「スタミナ」と呼ばれる同数値(部隊右上にある数字)は、バトルを行うことで1ずつ減少し、0になると、部隊が移動できなくなる。そのような事態とならないために、部隊には「休息」コマンドが用意されているが、当該部隊がバトルのたびに一方的に敵に攻撃される“無防備状態”となってしまううえに、回復のためにはまとまった時間が必要となる。このパラメータや制限時間といった仕様のおかげで、『ユニコーンオーバーロード』は、TACTICALでもかなり骨太な難易度となっていた。

 

 各ユニットは、AP(各ユニットの体力ゲージの下にある赤のダイヤ)を必要とする「アクティブスキル」と、PP(同青のダイヤ)を必要とする「パッシブスキル」を備えている。攻撃には基本、APを消費していく仕様だ。バトルでは、行動速度のパラメータの順にユニットが行動し、すべてのユニットのAPがなくなるまで戦闘が継続される。HPが0になると、各ユニットは行動不能に。すべてのユニットが倒されると、その部隊は戦線から撤退していく。

 行動不能/撤退となっても、ユニット/部隊をロストすることはなく、拠点での待機、アイテムの使用、クエストのクリアなどによって蘇生し、再度戦列に復帰できる。ギリギリまで戦線に立つことができる一方で、蘇生に対する時間的・経済的コストが重いため、プレイヤーは細心の注意を払いながら、バトルに向かわなければならない。

 そうしたユニット/部隊の生存と関係性の深いシステムが「チェンジ」だ。同要素では、バトルがスタートする直前、実戦に臨む役目を隣接する別の部隊と交代できる。つまり「防御力が低いが、攻撃力は高い部隊」と「攻撃力が低いが、防御力は高い部隊」をともに行動させることで、チャンスには前者で攻勢に、ピンチには後者で守勢にまわることが可能となる。この仕組みは、前述したスタミナの要素とも関係が深い。もしスタミナが0となっても近くに味方部隊が存在していれば、彼らに庇護されながら前線を維持することができる。

 ユニットには、それぞれにクラスが与えられており、クラスごとに装備できるアイテムや、攻撃範囲に違いがある。画像で攻撃を行っているクロエは、最序盤から主人公と行動をともにするキャラクターで、クラスはソルジャー。槍を使って前列・後列のおなじ位置にいる敵を一度に攻撃できる。そうした特性を考慮しつつ部隊を編成することもまた、『ユニコーンオーバーロード』における戦略性の一部となっている。

 「1990年代の名作SRPGが持つ重厚な雰囲気や戦術性をフィーチャー・継承した、懐かしくも新しい、唯一無二のゲーム体験」。これは発売元・アトラス公式による『ユニコーンオーバーロード』の紹介だ。すでに明らかとなっている世界観・ゲーム性などから、同タイトルは1990年代、ジャンルの黄金期とも言える時代に生まれた数々の金字塔たちと比較されてきた。「複数のユニットによって部隊を構成し、その部隊を最小単位として戦闘を繰り広げていく」という特徴的なバトルシステムは、比較点の一例だ。1993年に発売された某名作SRPGにインスパイアされたであろう同要素は、『ユニコーンオーバーロード』のシステム面における最大の個性のひとつと言っても過言ではない。

 SRPGという、ともすると人を選ぶジャンルをライト層にも楽しんでもらえるよう、コンパクトな基本システム、救済要素などを取り入れつつ、一部にはコア層がじっくり腰を据えてプレイできるエッセンスを散りばめる。そこにあるのは、ヴァニラウェアのゲームづくりの真髄だ。少し触っただけでも、ファン垂涎の仕様が各所に横たわっているのを感じた。

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