新作発売の「ドラクエモンスターズ」 第1作『テリーのワンダーランド』成功の理由を振り返る

DQM第1作『テリーのワンダーランド』成功の理由を振り返る

当時のドラクエに足りなかったものと、ポケモンとの差別化

『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』

 当時の「ドラゴンクエスト」シリーズの状況を見てみよう。1992年には『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』が発売され、1995年には『ドラゴンクエストVI 幻の大地』が発売されている。しかしその後はしばらく間が空いており、2000年になるまでナンバリング新作が出ることはなかった。

 当然ながら、空白となる5年間はスピンオフ作品などを頑張らなければならない時期だ。その空白期間を埋めるという意味でも『DQM』は重要だったし、「モンスターを仲間にする」という要素に注力したのも慧眼であった。

 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』ではさまざまなモンスターを仲間にして一緒に冒険をするのが大きな要素となっていたが、続編となる『ドラゴンクエストVI 幻の大地』では、その要素は控えめになっていた。なくなっていたわけではないが、そもそも人間の仲間が非常に多いなど、明らかにおまけ的な立ち位置になっていたのである。

 こうなると当然、「新作はモンスターを仲間にするシステムがあまり活用されていない」という不満が出ることになる。そう、『DQM』は単なるポケモンフォロワーではなく、本編に不足していたファンの要望を満たすというポジションに収まることができたのだ。

 また、ひとりで黙々と遊べるRPGなのもポイントだろう。ポケモンはストーリーをクリアしたあとは友人たちと交換・対戦を楽しむゲームになるが、それは逆にいえばコミュニケーションを軸とした作品であるということになる(もちろん、それが大きな流行を作った要因なのだが)。

『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』

 『DQM』にも通信や対戦といった要素はあったが、ひとりで遊べる要素も多かった。たとえばモンスターを配合して育成するのもひとりで黙々とできるので、自分の好きなモンスターを最強に育てあげることも可能だったのだ。パラメーターのカンストを目指した当時の子供たちも少なくないだろう。

ひょうがまじんとのお見合い、「マダンテだいぼうぎょ」バトル

『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO』

 とはいえ、『DQM』にみんなで遊んだ思い出がないわけではない。「????系」(いわゆる魔王系のモンスター)の存在が判明したときは周囲のみんなが驚いたし、どこまでゲームが進んだか、あるいはどこまで育成したかなんて話題で盛り上がった記憶がある。

 あるNPCが「ひょうがまじん」と「ようがんまじん」のお見合いを提案してくる罠があるだとか(かなり強いモンスターを作れそうな提案なのだが、実は相手だけが得をする結果になる)、ミレーユの「にじくじゃく」が「マダンテ」をぶっぱなしてくるなんていう“あるある”でも盛り上がった。カートリッジの色が灰色か黒か、なんて些細なことも話題となった。

 黙々と育成できるだけあって、あるいは通信ケーブルの所持率が上がったせいか、対戦もポケモン以上に盛り上がった記憶がある。もっとも、対戦の練度が上がってくると「マダンテ」と「だいぼうぎょ」でジャンケンする大味なものになってしまっていたが。それでもインターネットが普及していなかった当時、手探りで戦い方を模索していく時間はそれなりにあったのだ。

 こういった思い出も、もはや25年前の割と遠い昔のことである。そんなシリーズの最新作がいま出るとは、なんとも素晴らしいことだ。はたして最新作は、われわれにどんな冒険を見せてくれるのだろうか。

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