飲食店がバズるための「SNS設計」とは 短尺動画で見せ切るギャップが重要?

 いまSNSで「日本一接客態度の悪い店」や「友達がやってるカフェ」など、一般的な接客業のイメージを覆す飲食店の動画が脚光を浴びている。TikTokやYouTubeショートといった短尺動画で瞬く間に人気となった2店だが、一体なぜSNSで注目を集めたのか。今回は2店に関連する動画から、SNSでバズる設計について考えてみたい。

 2023年7月上旬に愛知県名古屋市にオープンした『the LAZY HOUSE』は、店員がキレたような態度での接客する様子やメニューを投げ捨てる様子が写されている動画が話題を呼び、いまや「日本一接客態度の悪い店」として連日SNSで話題になっている。TikTokではハッシュタグ「日本一接客の悪いレストラン」が付けられた動画の総再生回数が1億4000万回再生を突破。YouTubeでは水溜りボンド・トミーが7月に投稿したショート動画「【炎上確定】この店マジで接客態度が悪過ぎるので晒します。#shorts」が、再生回数1139万回を記録するなど、大バズりしているのだ(2023年11月26日時点)。

 トミーの動画をはじめ、SNSには客が店を出た後にはすぐ「ありがとうございました」と、素敵な笑顔で送り出してくれる様子が動画には収められており、これらのギャップがまた見もの。SNSでは料理について「美味しい」と高く評価している動画が多く、店の出入り口を境に繰り広げられるエンタメと美味しい料理に、多くの視聴者が惹きつけられているようだ。

 今年4月に東京・原宿にオープンした「友達がやってるカフェ」もまた、 一般的なカフェとのギャップが話題となり、SNSで大きな注目を集めた飲食店のひとつ。店員がタメ語で接客し、まるで以前から友達だったかのような感覚が楽しめるこのカフェに関する動画は、TikTokで3400万回以上再生され、「上半期トレンド2023」のグルメ部門にノミネートされるほどのバズり様だ。

 TikTokに投稿された動画をみてみると、そこには入店時に「久しぶりー」と声をかけられている様子や、会計時には「もう帰るの?」など店員から質問される様子が。店員のコミュニケーション力の高さも相まって、ユニークでフランクな接客に魅了されるTikTokユーザーたちが多いことが読み取れる。

 日本一接客態度の悪い店や友達がやってるカフェがここまで人気になったのは、やはりSNSとSNSを使いこなすZ世代の影響が大きい。ここ数年、SNSはTikTokの誕生を皮切りに、InstagramのリールやYouTube Shortsなど短尺動画が中心になり、短い時間でおもしろさを伝えることが重要になっている。動画の世界では、視聴者の印象に残りやすく、かつ拡散されやすいとされる動画の長さは15秒といわれているが、2店の「飲食店=礼儀正しく、きちんとした接客」というイメージを覆す接客はまさに短尺動画向き。15秒間にビフォーアフターが詰め込みやすく、万人が理解できる単純なつくりであることが、バズった要因のひとつと考えられる。さらに実際に動画でみた際に、大喜利の「ありなし」論争を想起させる点もまた、2店に関する動画とSNSとの相性がいいことを示しているのではないだろうか。

 現在大きな注目を浴びている2店に関連する動画だが、実はこのフォーマットは文字文化のXが全盛期だった時代にはみられなかったもの。短尺動画が流行し、SNSを駆使するデジタルネイティブたちが溢れている“いま”だからこそ、大きなバズを生み出すことができた最新のフォーマットなのだ。移り行くSNSで誕生したフォーマットから新たなバズが生まれるのか、SNSの今後の進化にも注目したい。

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