私人逮捕系YouTuberが生まれた背景を考える 「バズりやすい動画」で暴走した正義感
スカッとする爽快感
ほかにもYouTubeでは、“路上喫煙している人に注意する”シリーズも人気だ。同シリーズでは竹原慎二や朝倉未来といった格闘技経験がある強面のクリエイターが投稿しているケースが目立つ。竹原の動画には、路上喫煙を注意するがなかなか止めない若者が、ボクシングの元世界チャンピオンとわかった瞬間に手のひら返しをするものがある。また、朝倉が“アウトローのカリスマ”と呼ばれている瓜田純士とコラボした動画では、瓜田に注意されると、いそいそと喫煙スペースに入っていく路上喫煙者が映し出されていた。
ここ最近は悪い奴が痛い目を見るスカッと系の漫画・動画広告をネット上で頻繁に見かけるが、路上喫煙を注意する動画にも似たようなカタルシスがある。このことは上記したヒカルの動画にも言えるが、日頃ストレスを抱え、それでいて時間に追われている人が手軽に爽快感を得られるため、好まれているのかもしれない。
私人逮捕系YouTuberの今後
今野蓮容疑者や杉田容疑者の逮捕によって“私人逮捕系YouTuber”という括りが注目されたが、彼らに隣接する概念として“迷惑系YouTuber”という法律や条例などを破って快感を得ようとするタイプのYouTuberも存在する。この2つのカテゴリは“正義感”があるかないか、という言葉で分けることはできるかもしれないが、私人逮捕系YouTuberも撮影された乗客が駅の階段から転げ落ちたり、ほかの乗客とぶつかったり、特定の団体や人間に危害を加える行為をしていたりと、大きく秩序を乱している。事実、JR東日本は「駅や車内の秩序を乱す行為はやめてほしい。トラブルにつながるため、ほかの乗客が映るような撮影や動画の公開もやめてほしい」とコメントしているように、これはエンタメでは済まされないし、“迷惑”の域を飛び越えてしまっている。
(参考:NHK WEBニュース “私人逮捕” ユーチューバーの撮影 鉄道各社「認めていない」)
YouTubeの規約が厳しくなり、かつてほど迷惑系YouTuberは見なくなった。ただ、見なくなったのではなく“私人逮捕系”の皮を被っていただけに過ぎないのではないだろうか。つまりは、問題視されないように正義感というフィルターを設け、迷惑系的なムーブをして注目度を高め、広告収入などを得ていただけともいえる。本人たちがどこまで計算して活動していたかは不透明ではあるが。
今回、私人逮捕系の有名どころが逮捕されたことを受け、世間の目やプラットフォーム側の規制も厳しくなることで、今後事態は収束に向かっていくだろう。だが、これは投稿者とプラットフォームのいたちごっこのようなもので、次の“〇〇系YouTuber”という皮をかぶった迷惑系YouTuberが現れる可能性は十二分に考えられるので、注意しておきたい。
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