歌広場淳の中で変化した“格ゲーへの向き合い方”と、救われた「逃げんなよ」の言葉

歌広場淳、変化した“格ゲーへの向き合い方”

ストリーマーという考え方が格闘ゲームに生まれた2023年

 おじリーグ以外でも、ゲーマーのみなさんから『スト6』について「リリースされたらやろう」と言っていただいたり……。僕にとって、未来のことを考えるのはつらく、粛々と1日を過ごしていたんですが、ゲーマーたちとはどうしても未来の話をしたくなってしまうんです。「『スト6』どうだろう」「『スト6』が出たら絶対やろう」「こんな技があるらしいよ」とか、なにかあるたびに連絡が来ていました。

 2022年8月には、『Evolution Championship Series(EVO)』という大会があり、知っている人たちがたくさん出ていて、すごく勇気をもらったんです。それまでは時差の問題もあって、興味のあるジャンル、つまりストリートファイターしか見なかったんですが、『EVO2022』では「日本人プレイヤーの試合を全部見よう」という気持ちになって、すごくたくさん観戦しました。知っている人たちが勝ったり負けたり、喜んだり悔しがったりしているのを見て、自分のことのように感じていたんです。そして今年の「EVO」には『スト6』があって、すごく盛り上がっていましたよね。ますます「いつか行きたい」という気持ちになりました。

 今年は本当に『スト6』が盛り上がっていて、CRカップやREJECT FIGHT NIGHTなど、それまで格闘ゲームをやっていなかったストリーマーやVTuberの方々や、FPSなど他ジャンルのプロゲーマーの方々が参加していました。そうした方々がいると、こんなにもすごく盛り上がるのかと思いましたね。

 他ジャンルだとプロシーンで活躍する選手とストリーマーは役割が分かれていることがほとんどですが、格闘ゲームはプロゲーマーがストリーマーの役割も担っているんです。競技シーンで戦いながら、ゲームの魅力を分かりやすくライトなユーザーにも広めていく。両立することのようにも見えて、実際には難しさもあるということは、僕もなんとなく思っていたんです。そんななか、『スト6』では格闘ゲーム自体が初めてというプレイヤーたちにスポットが当たった、めちゃくちゃ熱狂的な大会が開催されて、すごい視聴者数の配信にもなっていました。“ストリーマー”という考え方が格闘ゲームに生まれたんだと、すごくワクワクしましたね。

 だからこそ、ウメハラさんは『スト6』のプロリーグであるSFL(ストリートファイターリーグ)に参加しないという決断をしたんでしょうね。プロの競技シーンで戦うことと、多くの人に魅力を伝えることのどちらかを取るとなったとき、『スト6』1年目は後者を取ったということなのかなと思いました。

 もちろん、格闘ゲームの配信がこんなに盛り上がるとは、誰も予想はできなかったんじゃないでしょうか。なんだか『ONE PIECE』みたいですよね。グランドラインを目指して海賊がたくさん来ているような。『スト6』が出てからは毎日が本当に楽しいですね。

 大会の影響もあって、大手のストリーマーさんが『スト6』で何万人も集めているのはめちゃくちゃすごいことですよ。これまで、格闘ゲームって結果の世界だったんです。でも、過程のおもしろさに格闘ゲーマーが気付かされた。それがCRカップやREJECT FIGHT NIGHTだったんだと思います。

 「一生懸命やっても、ダメなやつはダメ」というのが、それまでの格闘ゲームのシビアな世界だったんですが、カジュアルな大会では「一生懸命やったやつが(結果はさておき)優勝!」みたいな雰囲気が生まれました。格闘ゲーム界にはなかった考え方ですし、それってすごいことだと思うんですよね。

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