連載:作り方の作り方(第七回)
放送作家・白武ときお×作詞家・児玉雨子が語る“創作のマイルール”
ハロプロの歌詞はあえてみっともないところを出している
白武:今回、ハロプロさんの曲を聞こうと思ってサブスクで探したんですけど無くて。それが凄い衝撃的でした。自分はなんにも知らないなと。アイドルの楽曲って進化とかブームが早そうな印象があります。5年前の曲をめっちゃ古く感じるとか。
児玉:ありますね。だから常に、なにをもって「ダサい」とするかがすごく大変というか。ここでの「ダサい」は否定的な言葉じゃなくて、泥臭い感じで「なんとか生きてる」みたいなことをどう書くかということです。
技術的に、洗練されたテクニックや抽象的な歌詞を書くことができたとしても、そうしない。おしゃれで横ノリで生きてる人ばかりじゃないよねって感じです。
白武:ああ、なるほど。必死に生きるダサさ。
児玉:特にハロプロでの作詞はあえて、みっともないところを書きたいなと思っています。
白武:みっともないところというのは?
児玉:アイドルといえば一般的に「君(ファン)のことが好きだよ」みたいな歌詞が求められるじゃないですか。でもハロプロファンには泥臭く頑張ってる子が好きな人が多いから、私作詞の時は「愛されたい」「私が私を愛したい」と叫んでいる歌詞がいいなと思って書いています。
理想化されていなくて、パワーがあって、もがいていて、なんでだよって怒ってる。日常にめちゃくちゃ疲弊してるとか。こんなに生々しいのに、よく受け入れてくれるなあって思います。自分はダメな女の子だとか、ダメなんだって分かってるんだよとか。それでも好きになっちゃうとか。
白武:その場合、児玉さん自身が実際に疲弊したり誰かに振り回されたりしているのか、それとも自分は全然違って、架空の人格を作り上げて歌詞を書くんですか?
児玉:あんまり世の中にないものを書きたいという気持ちだけなので、自己投影をするとか、ファンの方が喜ぶからビジネスライクに書くとか、そういうことに寄っているというわけではありません。
誰もまだ書いてないだろうな、ここの狭い感じは他の人には書けないだろうな、とか思いながら書くのが楽しい。だから「◯◯みたいな歌詞書いてください」とか言われると正直すごく萎えますね。実際やんわりと「これ私じゃなくていいですよね?」と伝えますし。
白武:仕事相手とはケンカをするスタイルですか?
児玉:ケンカはあんまりしないです。ぶつかるというよりは、交渉という感じで。相手から面倒臭いと思われているかもしれないですけどね。ただ、もうすぐ30歳になるんですけど、30代の目標としては、譲れないものについて毅然とNOを言う、だと思っています。
クリエイターぶるわけじゃないですが、言うべきことは言って、コミュニケーションを諦めずにしっかり取らなきゃと。そのあたりをきちんとやっている先輩を見ていて、改めて思うようになりました。
白武:そういうコミュニケーションをムッとせずご機嫌にできる人を目指したいですね。お話できて楽しかったです。ありがとうございました。
児玉:こちらこそ、とても楽しかったです! ありがとうございました。
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