なぜ『BLUE PROTOCOL』はスタートで躓いたのか 逆転へのカギは“MORPGらしさ”の追求にあり?

なぜ『BLUE PROTOCOL』はスタートで躓いたのか

復権には、MORPGの根源的な楽しさへの追求が必須か

 『ブループロトコル』に存在する(もしくは、存在した)、かかる期待と実際の出来の齟齬。その問題の根幹は、『ブループロトコル』がMORPGに分類されるタイトルであり、かつそこに魅力を抱えながらも、その恩恵を生かしきれなかったシステムの不備にこそあるのではないか。

『BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)』イマジンのご紹介

 『ブループロトコル』には、アドベンチャーボード、武器、各種イマジン(防具、アクセサリーのようなもの)といったRPGらしい育成・強化要素が存在する。これらを達成・作成するためには、おつかい的な作業を繰り返しこなす必要があるが、そこから得られる報酬が手間に見合っているかと言われると、決してバランスがいいとは言い難い。より早く効率的に進めたい人ほど、夢中になって取り組むものの、そのことが結果的に彼らのゲーム体験を単調なものとしている実態がある。1体のモンスターの討伐にかかる時間の長さ、1か所のポイントから収集できるアイテムの少なさなども、この問題をより根深くしている。

 こうした仕様を持つ背景にあるのはおそらく、「コンテンツ寿命を延ばす」という意図だ。『プループロトコル』は、基本プレイ無料・アイテム課金型というマネタイズモデルである特性上、より多くの人に、より長くプレイしてもらわなければならない。そのためにあえてプレイヤーにとって非効率な仕組みをシステムに取り入れ、コア層が早々に目的を達成しないように調整しているのだろう。

 とはいえ、このことはなにも、『ブループロトコル』だけに特別にあてはまる事柄ではない。成功しているMORPGも似たやり方で“延命”に取り組んできた。たとえば、初期の『FINAL FANTASY XIV』(以下、『FF14』)では、登場するキャラクター・ミンフィリアの「砂の家に来て」というお決まりの発言(そのたびにプレイヤーは長い時間と手間をかけて「砂の家」まで移動する必要がある)がユーザーの不満の対象となり、ネットミームのようになった過去もある。

 そのうえで、双方に違いがあるとすれば、それは「コストと報酬のバランスが取れているか」にほかならない。(フレンドとのマルチプレイといった外的要因を除いたゲーム設計の面において)プレイ中に楽しさを感じることよりも、ストレスを感じることのほうが多くなっているために、ユーザーの不評を買ってしまっているのではないだろうか。

『BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)』バトルコンテンツのご紹介

 また、MORPGとしての設計を持つわりに、パーティーで行動する意味を見出しにくい点も問題だろう。たとえば、レベル上げひとつをとっても、メンバーの連帯感が強いダンジョンを周回するより、アドベンチャーボードを埋めたり、フィールドでモンスターを狩ったりするほうが効率がよくなってしまっている。もちろんフィールドにおいても、メンバーが倒したモンスターの経験値を関与していなくても自動的に入手できるなど、パーティーを組むメリットは与えられているが、アドベンチャーボードの進行度が違うためにおなじモンスターを標的にすることが少なく、さらにメンバー間にレベル差があることで効率性にも差が生まれる。結果的に、効率的な攻略を目指すとなると、パーティーよりもソロで行動する時間が長くなってしまっているのだ。

 このことは、MORPGにとって致命的であるとも言える。前述のストレスなどから「ひとりで進めるのは気が重い」と感じているユーザーも、特別な事情がないかぎりは仕様上、ソロプレイを余儀なくされてしまうためだ。本来であれば、人との連帯、そこで生まれるコミュニケーションが醍醐味とされる同分野に分類されるタイトルでありながら、あまりにも逆行する仕様をはらんでいるのが、『ブループロトコル』なのだ。

 そもそも『ブループロトコル』に盛り込まれたオンラインゲームとしての要素は、おなじくアニメ調のビジュアルを売りとする競合タイトル『原神』『崩壊:スターレイル』と差別化できるポイントだった。しかし、設計上はMORPGと呼べるタイトルでありながら、その性質が希薄すぎるがゆえ、ライバルの後塵を拝する形となってしまっている。皮肉なのは、実際にプレイすると『原神』『崩壊:スターレイル』と比較しても優位性があるほど、グラフィックに対する作り込みがしっかりしていることだろう。つまり、上記の問題点を除けば、『ブループロトコル』には無二の魅力があることになる。

 一部には国産MORPGの限界説も囁かれているが、同市場には、世界的に大きな成功を収めている『FF14』というモンスタータイトルがある。おそらく『ブループロトコル』制作陣も同作を参考にし、開発・運営へと臨んでいるはずだ。『FF14』もまた、パッチ1.0では“笑えないほどの大コケ”をしたが、背水の陣で制作にあたったであろうパッチ2.0「新生エオルゼア」で汚名を返上し、現在の地位を獲得するに至った。『ブループロトコル』には、そうした逆転劇もぜひ参考にしてほしいところだ。

 情熱と今後のアップデート次第では、まだ飛躍の可能性がある『ブループロトコル』。さまざまな問題点に対し、適切なテコ入れを実施し、寄せられた期待にふさわしい作品へと生まれ変わってほしい。これまでにプレイした経験を持つ多くのフリークが、同タイトルの復権を望んでいるに違いない。

©2019 Bandai Namco Online Inc. ©2019 Bandai Namco Studios Inc.

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