名作ゲーム楽曲にヨコオタロウの世界観を織り交ぜるーー永田泰之&光吉猛修&三島順平が向き合った『エラーゲームリセット』の楽曲制作
ーー少し話は変わりますが、本作は2010年代にセンセーショナルに取り上げられた「Diggin In The Carts」の文脈に乗せて考えることもできると感じています。このムーブメントにおいては『ベアナックル』のサウンドトラックなどが音楽作品として解釈されていましたが、『エラーゲームリセット』の音楽もまた、そこに接続できそうな気がします。そもそもゲーム音楽を生業とするみなさんは、「Diggin In The Carts」のようなカルチャーをどう見ているのでしょう?
永田:この前、Thundercatのライブを見に恵比寿へ行ったんですけど、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のBGM「Green Hill Zone」に言及した上で「サンキュー、中村正人(DREAMS COME TRUE)」と言っていて。セガの人間としてはひっくり返りそうになったんですけど、そういう場面に出くわすとカルチャーの存在を実感しますね。で、僕らは権利関係としてもヒップホップのビートみたいに原曲をそのままサンプリングするのが難しいんですが、精神的にもオリジナルのまま使うことに抵抗があるんです。いまだったらパックマンの「ワカワカワカ…」というSEもシンセのエンベロープで再現できるんですが、当時は実機のチップをプログラミングしてひとつひとつ音を作っていたんですね。で、画面に表示される現象とサウンドがガッチリ合ってる。アルカノイドの球を跳ね返したときのSEなんかも、音の高さを三段階用意してブロックの崩しやすさを表現してるわけですよね。そうなるとまず「先人は本当にすげぇ……!」という感想が出てくるんですよ。僕は今作の作業を通してそれを僅かですが追体験したんですけれども、改めてその凄みを痛感しました。だから、オリジナル版から音だけ持ってきて「できました」とは言えないなと。そういう意味では、今回の制作で自分のサンプリングに対する認識の甘さが矯正されましたね。
光吉:実は僕も「Diggin In The Carts」のドキュメンタリー映像に出演する側として関わっていまして、当初は動画にも出るはずでした。結果的に僕の出番はなくなってしまったんですが、その機会からこういうムーブメントがあることは認識していました。当時、僕としては意外でしたね。自分たちがゲームのために作ってきたチップ音源がダンスミュージックとして解釈されるというのは、想定外でした。なにせ踊るために曲を作っていたわけではありませんでしたから。たとえば「デイトナUSA」ではたしかに声をサンプリングして連続した音作りを行っていましたが、容量に制限があったので当時はそれしかできなかったんです。ある意味、制限によるチープな音作りの上で作らされた楽曲がダンスミュージックに取り入れられたときに「やられた」とも思いましたね。我々が自分の手で出来ることでしたし、やるべきだったのかも……と。自分たちの音楽が再評価される嬉しさの反面、複雑な気持ちになったムーブメントです。
ーー当事者としてそれぞれ思うところがあるのですね。個人的には『エラーゲームリセット』の楽曲を海外の方が聞かれた場合、そのときにもまた新たな化学反応が起きそうな気がします。
三島:私としてもそういった新たな見方が生まれるのはありがたいことだと考えています。シティポップが海外で評価されている現状をみると、8bitの音楽が「何か新しく、カッコイイもの」として解釈される可能性もあるのかなと。あの時代に、制約の中で作られたサウンドの背景を知らずに好きになってくれるかもしれない年代の方々がゲームをプレイして下さってるわけですよね。シティポップのオリジナルが生まれた80年代のきらめきって、多分今のユース層にとってはファンタジーなんじゃないかと思うんです。レトロゲームの音楽が、そういったフィクショナルな魅力を伴って聴こえる可能性にも期待したいですね。
永田:私たちが新しい見方を提供できていると嬉しいです。X(旧Twitter)の反応を見ていると、原作に触れるきっかけにもなっているようなんですね。「元ネタ知らなかったからメガドラ(メガドライブ)ミニごと買ってみた」とか、ゲームの感想に紛れてそういった投稿も見かけます。それが僕にとってはものすごく嬉しいことで、そのためにすべての作業を行っていると言っても過言ではありません。僕らが触れてきた名作の入口や媒介になれたら、それが何よりの理想です。
光吉:セガのゲームに限らず現状のムーブメントを鑑みると、80年代や90年代の作品ってグローバルに刺さりやすいし、既に刺さっている現状は社内でも認識しているところです。音楽の場合はそれだけでもリーチできる可能性を秘めていますから、『エラーゲームリセット』のサウンドが何かしらの形で誰かの胸に届くと良いですね。かつてのゲーム音楽はCDを出せば売れる時代もありましたが、今はまた違った形で盛り上げられればと考えています。
■ゲーム概要
『404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-』
対応OS:iOS/Android/Windows
App Store URL:https://itunes.apple.com/jp/app/id1592965255
Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.ErrorGameReset
DMM GAMES版:https://errorgamereset.sega.com/dmg/
価格:基本無料(アイテム課金あり)
ジャンル:名作ゲームの擬人化RPG
メーカー:セガ
CERO表記:C区分(15才以上対象)
公式サイト:https://errorgamereset.sega.com
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/404gamereset
著作権表記:© SEGA