『Worlds』を彩る『LoL』とK-POPの繋がり　“懸念”を払拭したNewJeans「Gods」の壮大な世界観

K/DAからNewJeansへ。『League of Legends』とK-POPの繋がり

　韓国のアーティストとして初のWorldsのテーマソングを担当することになったNewJeansだが、実は『LoL』とK-POPの関わりは今に始まったものではない。2018年に韓国でWorldsが開催された際、同大会のプロモーションの一環として誕生したのがバーチャルK-POPグループのK/DAだ。大会のオープニングセレモニーでデビューパフォーマンスを披露した同グループは、同日にシングル「Pop/Stars」をリリースすると世界中に反響をもたらし、当時のYouTubeにおけるK-POPの24時間最多再生回数記録を更新（500万回）、ビルボード・ワールド・デジタル・ソング・セールス・チャートで1位を獲得、2022年には同楽曲がRIAA（全米レコード協会）にK-POPの女性グループとして初のプラチナ認定に選ばれるほどの大ヒットを記録した。K/DAは、『LoL』の枠を超え、（BTSが台頭し始めるなど）当時の米国で注目を集めつつあったK-POPカルチャーのひとつとして盛り上がったのである。

　すでにK-POPカルチャーとの親和性を示している『LoL』が5年ぶりにWorldsを韓国で開催するにあたって、そのテーマソングにK-POPグループを起用するのは自然な流れだと言えるだろう。また、昨年のリル・ナズ・Xの起用やNetflixアニメ「Arcane」に象徴されるように、近年の『LoL』は（ゲーム自体が長く続いていることもあり）従来のファンベースを超えた新たな層へのアプローチを積極的に続けている。昨年のデビューから瞬く間に「Super Shy」や「OMG」など数多くの楽曲を世界中のチャートに送り込み、今年開催された世界最大規模の音楽フェスティバルである『Lollapalooza』に史上初のK-POP女性アーティストとして出演を果たしたNew Jeansは、韓国でWorldsを開催する文脈においても、世界中のプレイヤーにアプローチする意味においても、ゲーム自体にフレッシュな印象や関心をもたらすうえでもベストな人選だ。

　ただ、今回の起用にあたって一人の音楽ファンとしての目線に切り替えたに、「心地良いR&Bやダンスミュージックに定評のあるNewJeansと、壮大でドラマティックな楽曲が求められるWorldsのテーマソングは果たして合致するのだろうか」という懸念を抱いていたのも正直なところだ。実際、前述した通り、今回の「Gods」はこれまでにグループの楽曲を手掛けてきたチームとは異なり、あくまで『LoL』のチームが制作を手掛けている。従来のNewJeansのイメージとは異なる壮大でドラマティックな曲調と力強い歌唱に戸惑うグループのファンが多いことは容易に想像できるが、個人的には見事に楽曲／MVの世界観を表現した美しい歌声に新たなグループの魅力を発見したような感覚を抱き、ポジティブに捉えている。昨年のリル・ナズ・X「STAR WALKIN’」（こちらはアーティスト側のチームが制作を担当）が主に『LoL』のファンを中心に「ゲームの世界観やWorldsのスケールに合っていない」といった批判が寄せられていたことを踏まえると、全体的にはベストな落としどころであると言えるのではないだろうか。

　「Gods」は公開から1日ほどが経過した本稿執筆時点（10月5日20時）で約820万回という再生回数を叩き出しており、注目度や期待の高さを感じさせる。しかし、この楽曲の真価が発揮されるのは10月10日の大会初日に開催されるオープニングセレモニーだろう。昨年はリル・ナズ・Xに加えて同年の『LoL』関連の楽曲を手掛けたジャクソン・ワンやエッダ・ヘイズがパフォーマンスを披露し、会場を大いに湧かせていた。見どころは何と言ってもゲームや大会の世界観と楽曲のスケールが一体となった演出であり、まさに「世界最大規模のeスポーツ大会」の名に恥じない壮大なスペクタクルがステージ上で繰り広げられるのである。

　今年のオープニングセレモニーでも、恐らく「Gods」のパフォーマンスが披露されることが期待できる。今回のコラボレーションで関心を抱いたという方は、ぜひこちらもチェックしてみてほしい。