Xでインプレッション稼ぎのリプライが増加 ITジャーナリストに聞く“分配プログラムがもたらした変化”と“今後のSNS勢力図”
イーロン・マスクが目指すものとは
――イーロン・マスク氏による買収以降、Xは仕様を大きく変化させています。マスク氏は今度Xをどうしていきたいのでしょうか?
篠原:マスク氏がどのような未来を思い描いているのかは本人にしかわかりませんが、業界では「“スーパーアプリ”を目指す」と見られています。“スーパーアプリ”とはTwitterのようなソーシャルネットワーキングサービスに加え、メッセージの送受信、電子決済、通販など、さまざまなサービスをひとつのアプリで体験できるアプリのことです。日本のアプリで言えば“LINE”のイメージに近いと思います。
―― 分配プログラムもその一歩のための一つと。
篠原:はい。マスク氏は中国の『WeChat』を高く評価しています。WeChatはメッセージのやり取りはもちろん、タクシーの予約や税金の申請など多岐にわたるサービスをこのアプリひとつで完結可能です。マスク氏は最終的にはそこを目指していると思います。
――とはいえ、今後インプレッション稼ぎの投稿が増加すればXのユーザー離れに拍車をかける可能性は高いです。やはり、分配プログラムにはテコ入れの必要性を感じます。
篠原:恐らく大胆な対応は講じないと考えます。機械的に対応できることであれば対策する可能性はあるでしょう。しかし、どのポストがインプレッション稼ぎのリプライなのか、その判断を完璧にするには人間の目を通す必要があります。それはコストがかかるため、そのような手法を取るとは考えにくいです。
――そうなると、ユーザー離れが心配ですね。
篠原:それがそうとは言い切れないんです。公式発表によるとXの月間アクティブユーザー数は過去最高の5億5500万人に到達しました。また、収益化可能なアクティブユーザーもX買収時は2億2900万人だったのに対して、現在は2億4500万人に増えているそうです。しばらくはXの人気は落ちることなく、むしろXは大きく成長してさらなる変化を見せるかもしれません。
SNSの勢力図は変わらない
――Xをはじめ、TikTokやInstagramなど、様々 SNSがユーザーを取り合っています。今後 SNS の勢力図はどのように変化すると思いますか?
篠原:あまり大きくは変化しないと考えられます。ニュースではBlueskyやMisskey(ミスキー)などがXからの脱出先として取り上げられることが多くなりました。ただ、Xの持つ拡散力が衰えない限りは乗り換える人はそう多くは現れないでしょう。
――目まぐるしい勢力図の変化が見られましたが、しばらくは冷戦状態が続くと。
篠原:いまの大きな変化は、Threadsのアクティブユーザー数が4400万人から800万人に減少したことです。Xユーザーから大きな期待を受けて登場したThreadsですが、Xの壁は高かったという結果が数字として現れています。
――Threadsはかなり厳しい状況にありますね。
篠原:そうですね。Xの人気が落ちてくれば新たなサービスが生まれる余地もありますが、それまでは既存のSNSの勢力図は緩やかにしか変化していかないでしょう。
(参考:https://edition.cnn.com/2023/08/03/tech/threads-user-count-falls/index.html)