ゲーム開発エンジン「Unity」の新利用料金システムに批判殺到 謝罪と条件変更に至るまでの騒動全容

相次ぐ批判により謝罪・条件変更へ

 内外から巻き上がった反発の末、9月18日にUnity Technologiesは声明を発表。この件をめぐって正式に謝罪し、「チームメンバー、コミュニティ、顧客、パートナーに耳を傾け、話し合い、ポリシーを変更する予定」とコメントした。

 そして、9月23日に、Unity CreateのMarc Whitten氏より声明が発表され、以下のような方針が明かされた。

・「Personal」プランには「Unity Runtime Fee」は適用されず、引き続き無料で利用できるように。また、適用条件となる収益・調達資金の上限が10万ドルから20万ドルに引き上げられ、起動時の「Made with Unity」スプラッシュスクリーン表示要件も撤廃。
・「Pro」「Enterprise」の「Unity Runtime Fee」適用条件のうち、収益条件が「100万ドル以上」に変更。
・また、「Unity Runtime Fee」は、2024年リリース予定のLTSバージョンから適用されるように変更。それ以前のバージョンを利用する場合、「Unity Runtime Fee」は適用されず、そのバージョンの利用規約適用を保証すると明言。
・「Unity Runtime Fee」適用条件を満たす場合でも、支払いは「Unity Runtime Fee」によるインストール数に基づく料金か、「収益の2.5%」のどちらかを選択できる。なお、インストール数も収益金額も「開発者の自己申告」で構わないとのこと。

 「Unity Runtime Fee」こそ残るものの、条件などは大幅に緩和される形になった。インストール数についても自動追跡から自己申告制に変更され、特に不安視されていた過去のインストール数への遡及についても、「バージョンを上げなければ適用されない」と宣言がされることとなった。

失われた信頼

 おおむね穏当になった「Unity Runtime Fee」だが、今回の一件はゲーム開発者たちの間に「使っているゲームエンジンが同意なき改訂をするかもしれない」という疑念を植え付ける事態となった。「Unity」は今回、大きく利用者へ歩み寄ったとはいえ、今回失われた信頼をすべて取り戻すには心もとないだろう。

 ゲームを遊ぶ人たちにとっては、「Unity Runtime Fee」の導入はただちになにか影響を及ぼす可能性は低いと思われる。ただし、上記のような理由から、開発中のタイトルのエンジンを変更し、その結果発売が遅れる……ということも十分に考えられる。今回は撤回されたが、『Cult of the Lamb』のように「ストアから削除する」という展開も、可能性としてはゼロではない。

 9月23日の発表により、「Unity Runtime Fee」をめぐる騒動にはある程度の収束の見込みが立ちそうである。しかし、「Unity Runtime Fee」発表以後、この話題はあまりにもめまぐるしい速度で事態が進展しており、「もう終わり」と判断するのも難しいところがある。もうしばらくは、「Unity」とその周辺の動向に注視が必要だろう。

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