にじさんじ・長尾景に感じる“親近感”の正体とは フレンドリーかつ現実味のあるパーソナリティが共感を呼ぶ

長尾先輩は“需要”をまったく理解していない? ギャップこそが彼の魅力にある

 VTuber~バーチャルタレントとして活動する長尾景は、そのビジュアルも相まってアイドルやスタータレントとして応援されている面も多分にある。

 そうした活動を通して人気を得ていくのであれば、他人を傷つけるような言動はもちろん避け、むしろ他人から見て好印象な一面で支持を集め、ファンとファンが好きなものにも寄り添っていけるようなイメージ戦略が重要になる。

 そういう視点においたとき、VTuber~バーチャルタレントとしての長尾景は、むしろマイナスなところから始まっていたように見える。そもそも活動スタート時点においてはパソコンが少々苦手だったようで、これに伴ってネットミームやオタクカルチャーとはかなり縁遠かったようだ。

 アニメ・ゲーム・マンガ作品などで好きな作品はあるものの、オタクカルチャーやインターネットカルチャー全般への感度・知識は低いようで、いわゆる萌え~恋愛シミュレーションゲームや可愛さ/カッコよさを売りにしたソーシャルゲームなどをプレイする際には、「これっていわゆるオタク受けするゲーム? だよね?」とリスナーに確認してみる、なんて場面もあるほど。

 にじさんじの後輩であり、コアなオタクを自認している西園チグサは「長尾先輩は自分のファンや需要をまったく理解していない!」と強弁しており、“長尾景のアイドル力”に注目した企画を2度にわたっておこなっている。

 デビューから4年目を迎えた長尾であるが、いまでも「みんなが持ってるあの大きなうちわ、あれに向けてファンサってするものなの?」と素で聞いてしまうほどであり、もはやボケやネタのつもりでそうしているのか、それとも本当にわかっていないのか、見ているこちらが混乱してしまうほどのニブさを見せてくれている。

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 そんな長尾だが、配信内ではリスナーからのアドバイスには素直に耳を傾け、しっかりと会話をするタイプであり、それも相まって無音・無言になる瞬間があまり無く、かなりのおしゃべり好きであることが分かる。

 配信中にアドバイスやネタバレを無用なまでに送ってくるコメント、いわゆる“指示厨”が多くなっても、「嫌がるライバーさんや配信者さんもいるけれど、基本的に長尾はポンコツだし、五分五分で合ってるのでイライラしないですね」と話している。

 自身のYouTubeチャンネルの有料メンバーも「ゆうしきしゃ8GB」「ゆうしきしゃ16GB」と名付けているほどで、アドバイスやコメントをジャンジャン送ってほしいタイプなのが伺い知れるだろう。

 そんな彼の最大の短所が、ナチュラルにデリカシーのない言動をしてしまう一面があるところだろう。いわゆる“ライン越え”な発言をすることでリスナーを笑わせる、トークスキルの一つとしてあえてそういった発言をするライバーもいるが、笑える場面でなく、なんでもない場面で発してしまうとなると非常に問題だ。

 配信中のシーンでこれといった部分をあげることは難しいが、フミとの配信外でのコニュニケーションでは大きくつまづいてしまったこともあるようで、2023年年初から約半年ほどまったく連絡を取ることがないレベルで大喧嘩をしたことを明かしている。

 最終的には「分かり合えないことをエンタメにする」という逆転の発想でひさびさのコラボ配信をし、その後もたびたび同じ場に居合わせて茶々をいれあう仲をみせている。

 だが、フミの同期で仲の良い友だちでもある星川とおこなった配信では「フミさんと大喧嘩して、ノンデリ(編注:ノンデリカシー)は良くないなと思った」と長尾が打ち明け、星川から「お前はビジネス人間すぎるんだよ。ロボットみたいだよ」とツッコまれるほど。

なかなか手厳しい一言だが、女性の心をはかりかねた男性が、迂闊な一言を発して傷つけてしまう。スマートさとは程遠い、なんとも典型的な「女心のわからない男性」らしいエピソードだ。

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 2023年現在、長尾は「忖度師」と呼ばれることが多く、ファンや同僚らからイジられる姿を見ることがある。実際に彼の配信を見ていると、彼が独り言をブツブツとつぶやきながらゲームプレイしている瞬間が多いことに気が付く。

 これは彼が物事を分析をする際のクセのようなものなのだろう。状況を読むことや見極めて判断することに優れ、それを活かしてプランを考え、実際に行動に起こし、結果を見直して修正案もしっかり打ち出していく。

 実利に重きを置いて、継続して作業をしつづける。まるでPDCAサイクルを回すようにして物事に取り組み続ける姿からは、会社員のような現実味を感じることが多々あるのだ。

 理想的な男性像やアイドルらしさを期待されつつも、実際には“30歳の男性”らしさあるパーソナリティを臆面もなく表出させることで、ある種のギャップ/コントラストが生まれ、リスナーを楽しませる。

 長尾景のフレンドリーかつ現実味あるパーソナリティは、今後もさまざまな形・配信で顔を覗かせてくれるはずだ。

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