音声市場版のYouTubeやTikTokを目指す 「Spoon」ジャパンカントリーマネージャーが語る“展望”

「Spoon」から紐解く各国の「ギフティング」文化の違い

――競合する音声配信アプリの中で「Spoon」が差別化を図るために意識していることがあれば教えてください。

川村:音声配信の市場で争われていることは、既に動画プラットフォームがやってきたと思っています。YouTubeは録画されたコンテンツとライブ配信のプラットフォームとして完成されているし、短尺のコンテンツではTikTokが台頭していますよね。音声が動画と同様の道を辿りながら独自の進化を遂げている中で、「Spoon」は短尺で気軽に“音”を表現することに関してまだまだ面白いことがやれるのではないかと思い、次のステップを考えています。

――現在「Spoon」は日本、アメリカ、韓国、中東など様々な国や地域でサービスを展開しています。日本と海外の事例を比べたときに、「Spoon」の持つカルチャーや音声配信を取り巻く現状に違いはありますか?

川村:それぞれの国が、思っていた以上に違う用途で使っているという印象です。まずアジア圏とそれ以外の国で、そもそもの捉え方が違うと感じるのが「ギフティング」の文化。アジアでは既にギフティング文化が根付いており、一歩先を行っていますね。特に韓国は、昔からギフティングを用いたサービスが多かったことから、いいと思った人をギフティングで応援すること自体がもはや当たり前という状況でした。日本でも徐々にギフティングを当たり前と思う世代が増えてきたように思います。逆にアメリカでは、特定の誰かを応援するというよりもコンテンツやサービスをいいと思った時にチップ感覚でギフティングをしていると感じます。そういった感覚の違いはあると思っていますね。

――コンテンツのクオリティや作り込みも、国や地域で差は出るものでしょうか?

川村:そうですね。例を挙げると、音声だけの配信の場合に多くの日本人ユーザーは「自分の姿を見せなくてすむ」と感じています。ですからプロフィール画像はイラストにしているし、ユーザー名も実際の名前を使わない方が多いです。日本のユーザーはプライバシーの意識が高いですね。逆に韓国のユーザーは一番映りの良い自分の写真を載せています。リアルタイムの自分は見せないけれど、自分自身を見せることに抵抗はないように感じます。

――音声配信の収益化についても聞かせてください。「Spoon」では、アプリ内の収益で暮らせるクリエイターも輩出していると聞きました。

川村:サラリーマンの平均年収を超えるような方もいますし、「Spoon」を専任とするスプーナーもいます。それでも音声配信だけで食べていける方は少なく、副業的なポジションでやっている方のほうが現段階では多いようです。

 顔出しする必要がないので、社会人としての自分と「Spoon」の中での自分を完全に分けることができるため、副業に向いていますね。

――YouTubeやInstagramのタイアップやPR案件が、音声配信には普及していない印象があります。その理由について川村さんが感じていることを教えてください。

川村:「Spoon」は小さなコミュニティだけれど高い熱量があります。その熱量をどう数字として見せていくのかと、どれだけの人にどのように届いたのかという効果測定の部分では、まだ課題が多いです。ですから、イベントの開催や協賛を募るなど段階を踏みながら配信者のマネタイズに繋げていけたらいいですね。

――「Spoon」がこれから配信者をサポートする中でやってみたいマネタイズの仕組みなどはありますか?

川村:今は基本的にギフティングがメインですが、それこそPRや広告など様々な方向から配信者がマネタイズできる手段を強化していきたいと考えています。

――まだまだ可能性に溢れた市場ですよね。では、音声配信市場でいまトレンドになっているジャンルやコンテンツがあれば教えてください。

川村:複数人で喋るコンテンツが増えたように感じます。友達で集まって喋るような空気の中に自分もリスナーとして参加するコンテンツが増えてきたようですね。「Spoon」のなかでは、普段1人で活動する人が他のユーザーと一緒に配信したり、一緒にボイスドラマを作ったりするなどスプーナー同士の横のつながりも増えています。

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