なぜ人は恋愛リアリティショーについて語り合いたくなるのか? 楽しいだけじゃない、誰かと見ることで本当に得られるものとは

恋愛リアリティショーを語り合いたい理由

 2023年、恋愛リアリティショー(以下、恋リア)に「変革」が訪れている。既存シリーズにも「共感性」を重視した要素が追加され、これまでの恋リアで重視されてきた「恋愛考察性」とは違う意味で「恋愛リアを語る意義」を生んでいる。

 2023年の恋リアを語り合っていると、こんな発見があった。「私たちは、他人の恋愛を語り合うことで、自身の本質を語ることができるのだ」と。コロナ収束とともに再び訪れた「オフライン時代」、なぜ私たちは恋リアを語り合うのか、その意味を再考してみる。

「泣ける恋リア」豊作の2023年。やっぱり、オフラインで語り合いたい

 2023年は、とにかく恋リアが大豊作の年だ。一時、視聴者が恋愛アクティブ層を中心に狭まっていき、若年化が進んでいったこともあったが、今年はAmazon Prime Video『ラブ トランジット』やNetflix『あいの里』など、大人も楽しめる上に「恋愛映画より泣ける」と話題の恋リアが揃い踏みだ。

 8月20日に最終話配信を迎えるNetflix『オオカミちゃんには騙されない』も、2023年に大きな変革を遂げた恋リアの一つだ。『オオカミには騙されない』シリーズはABEMAオリジナル作品であるが、プラットフォームを超えてNetflixにて配信された最新作は、参加メンバーの年齢層がアップ。また、これまで恋リアとは縁のなかった新しい視聴者層にも共感しやすい仕掛けが加わり、話題を呼んだ。

 そして、2023年はアフターコロナの年でもある。久しぶりにオフラインの会合が行いやすくなり、外での生活時間が長くなっている人が増えていることも、再び恋リアが注目され始めた大きな理由の一つだ。

 ウィズコロナ期間中は、SNSを中心に「オンライン視聴会」が行われたり、配信サービス側が「ウォッチパーティー」システムを導入したりと、オンラインでも同時視聴を楽しめる工夫がされてきた。けれどやっぱり、感想の語り合いはオフライン……お茶やお酒を飲みながら、大きな声で「分かる〜!」と唸るのが一番楽しいのだ。

 今回、Netflixでは『オオカミちゃんには騙されない』最終話配信前に、小規模な視聴座談会が行われた。番組は、女性メンバーの中に恋を実らせることのできない「オオカミちゃん」が1人以上潜んでいる状態でスタート。今回は、好きな人を騙し続けなくてはいけない「嘘つきサイド」の苦悩も赤裸々に語られ、駆け抜けるような恋の甘さと、必ずしも上手くいくわけではない恋のビターさのコントラストが上手く描かれた。

 「恋が成就するかどうかのハラハラ感」は恋リア全体の一つの見どころ。しかし、今回の『オオカミちゃんには騙されない』は視聴者の共感を誘うポイントが多く用意されていて、最終話に至るまでも、涙なしでは見られなかった。視聴会で最終話を迎えた時ももちろん、みんながハンカチやティッシュを片手に視聴した。

恋愛映画よりも、自身に重ねて感動が増す。「恋リアならでは」の魅力

 久しぶりに誰かと一緒に恋リアを視聴してみると、そのグルーヴ感に驚く。自分が泣いてしまったシーンで、隣に座る友人も涙を見せていることに気づいた時、その感動は2倍になる。家で配信を見ることができたとしても、気になる映画はやっぱり映画館で見たい、あの感覚と一緒。誰かと一緒に見ることで、隣に座る友人の感動も感じ取ることになり、家のベッドで1人見ていた時よりも、たくさん泣いてしまった。

 最終話視聴の後は、数名での座談会を楽しんだ。恋リアがバズり始めたあの頃、毎日職場で「最新話、見た?」と同僚と確認し合った時の感覚が思い出される。泣けたシーンについて語り合う中でも、どのメンバーを推しているか次第で感想が変わったりする。

 そして、なぜか私たちは、恋愛という人間コミュニケーションの最難イベントに直面すると、そこに居合わせる人の一挙手一投足に目がいく。

「なぜその言葉選びをしたのか」。

「なぜあの時、目をそらしたのか」。

「オオカミちゃんはあの時、どんな気持ちで嘘をついたのか」。

 ストーリーが決まりきったドラマを見ているだけでは考えそびれてしまうのに、恋リアを見ている時はそのすべてに心を奪われる。登場人物の恋心に寄り添い、自分ならどう考えるか、どう言葉を発するかと考える。恋愛にまつわる作品は数あれど、自分ごととして捉えられることができた時に、その感動は最も増幅する。

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