ライカレンズによる自然なボケ味とAIによる鮮やかな画像処理、圧倒的なカメラ性能を誇る『AQUOS R8 pro』を徹底レビュー
『AQUOS R8 pro』はスマホでありながら、カメラでもある。2023年夏のハイエンドスマホの中でも注目に値する1台だ。
シャープの「AQUOS R」シリーズは、クラシックカメラの名門ブランド「ライカ」とのタッグを組み、撮影品質を磨き上げてきた。3世代目となる今作のカメラは、その集大成となる完成度だ。
『AQUOS R8 pro』のアプローチは、他のスマホとは一線を画している。昨今のスマートフォンの多くはデュアルカメラ、トリプルカメラなど、複数のレンズとイメージセンサーのセットを搭載することが多い。これに対して『AQUOS R8 pro』はシングルカメラだ。
このたった1つのレンズには、約1インチのイメージセンサーが組み込まれている。スマホ向けとしては群を抜くサイズで高級コンパクトデジタルカメラに匹敵する。このセンサーにより、自然で美しいボケ感が生み出される。
さらに、このモデルからの新しいチャレンジとして、スマホ向けでは珍しい「14chスペクトルセンサー」を搭載している。これは、光の色や露光量を正確に捉えるセンサーだ。『AQUOS R8 pro』では、カメラ照明の色味や明るさを人の眼と同じように認識するために使われている。つまり、光の量によらず、目で見た通りの色で、適切な明るさで記録できるというわけだ。
圧倒的なカメラ性能
百聞は一見にしかず。実際に『AQUOS R8 pro』で撮った写真を見ていこう。
作例1
カメラへのこだわりで一線を画す『AQUOS R8 pro』だが、他のスマホと同じようにフルオートなら他のスマホと同じように撮影できる。プレビュー画面の被写体をタッチするとピントが合い、ボタンを押すと、シャッターが切れる。二本指でデジタルズームができる。この感覚は普通のスマホのカメラと変わることはない。
もちろん、AIが被写体を認識して露出やシャッタースピード、色合いを調整する機能も備えている。例えば、「青空」を認識すると青さの微妙な違いを引き立てたり、「猫」を検出したらシャッタースピードを早くして動きに備えたりする。今作では新たに、動物の瞳にフォーカスを合わせて追尾する「瞳AF(動物)」に対応している。
作例2
撮影するときの感覚は普通のスマホと大差ないが、ぼかす必要がないものまでぼかし過ぎてしまうきらいもある。これは、小さなものを撮る時は2倍ズームで撮るといった、ちょっとしたテクニックで補える。
作例3
1インチをフルに活かした画角は35mm判換算で19㎜相当となる。これは、街中の風景を残す時や、ストリートスナップをする時に扱いやすい画角だ。画面上のズーム倍率は0.7倍と表示される。望遠域ではデジタルズームで最大6倍まで撮影できる。ただ、高倍率になるほど解像感が低下する影響が大きく、遠くのものをくっきりと写す性能比較では、他社の望遠カメラ搭載機種には及ばない印象を受ける。
作例4
作例5
作例6
オート以外の撮影モードでは、ポートレート、ナイト、マニュアル写真、タイムラプスなど一般的な撮影機能が並んでいる。ライカ独自の撮影モードは搭載していない。ただし、「マニュアル写真」モードで彩度を落とした写真を撮影すると、精細なモノクローム撮影を楽しむことができる。
作例7
作例8
大判センサーは、暗所撮影でも威力を発揮する。暗いシーンでは、複数の画素を束ねて1画素として扱うピクセルビニングが機能する。これにより、限られた光を効率的に集めて、目で見たものに近い光景を記録できる。ナイトモードでいくつかの写真を撮影してみたが、手持ちでも昼間のように明るく、細かい部分までしっかりと写し取れた。ナイトモードには新たに「星空」と「花火」を簡単に撮れる撮影モードも追加されている。
作例9
作例10
なお、『AQUOS R8 pro』にはフォトグラファー必見のアクセサリーも用意されている。デジタルカメラ用のレンズフィルターを装着できるスマホケースだ。レンズフィルターには例えば、光の乱反射を抑えるPLフィルターや、シャッター速度を遅くできるNDフィルターなどの種類があり、使いこなせばワンランク上の写真を撮影できる。
抜群の放熱設計
『AQUOS R8 pro』は、前世代モデルの弱点も克服している。例えば、スマホのパフォーマンスを保つ上で重要な「放熱設計」は、しっかりと改善されている。
スマホが搭載するリチウムイオン電池は熱に弱い。高温下で使い続けると劣化してしまう可能性がある。また、スマホ本体が熱くなると低温やけどを引き起こす危険がある。これらの理由から、スマホ本体の放熱が十分ではない場合には、CPUの動作速度を制限するなどの処理がかかることがある。
たとえば、夏の屋外で動画撮影を続けると、途中で動作が制限される場合がある。実際に、前世代モデルのAQUOS R7では、この放熱設計が十分に洗練されておらず、動画撮影時に停止してしまうことがあった。
『AQUOS R8 pro』では、放熱機構を大幅に改良し、この課題に対処している。新たに取り入れられたアイデアは、外観上のアクセントとなっているカメラリングを放熱に活用するというものだ。
この改良の効果は、実際の利用シーンでも確認できた。試用時には、7月の猛暑日、外気温35度を超える東京にて、フルHD画質での動画撮影を15分以上続けたが、熱停止することなく記録できた。放熱設計の改善は、カメラでちゃんと撮影できる以外にもメリットがある。例えば、豪華なグラフィックの本格派なスマホゲームを動作させるとき、処理落ちすることなく遊べると期待できる。
動画では照明や日差しの変化に対応して、期待通りの色味で記録できている。
光量や合焦点の変化が激しい撮影条件でも、しっかりとフォーカスを当て続けられている。
■その他の要素について
このレビューでは、『AQUOS R8 pro』の最大の特徴であるカメラに焦点を当てて検証した。ただし、このスマホの魅力はカメラだけではない。ディスプレイや音響、生体認証などにも優れた要素を多々備えている。駆け足で紹介しよう。
まず、ディスプレイはシャープが製造する6.6インチ「Pro IGZO OLED」を搭載する。このディスプレイは画面の鮮やかさや、日中の屋外での見やすさに優れている。さらにフレームレート120Hzで表示する性能があるため、Webサイトなどを縦にスクロールするときなどの見た目がなめらかで、目に優しい動きになる。また、生体認証では、超音波式の画面内指紋センサーを搭載している。指先の立体的な形状を超音波で把握する仕組みで、認識できる範囲が広く、ロック解除まで0.5秒もかからないスピード感も特徴だ。カメラによる顔認証では、マスク着用時の顔を判別してロック解除を行える。
映像再生では映画にも使われているHDR映像技術「Dolby Vision」を搭載。音響においては包み込むようなサラウンド再生を行う「Dolby Atmos」に対応している。3.5mmイヤホンジャックを備えているため、有線イヤホンも利用できる。
スマホの頭脳に当たるプロセッサーは、最新かつ最上位のSnapdragon 8 Gen 2を搭載する。モバイル通信では、5Gの中でも高速な通信において欠かせないミリ波帯もサポートする。国内メーカーのスマホとしては外せない、防水防塵や、おサイフケータイももちろん対応している。
『AQUOS R8 pro』はサクサクと処理をこなせる高い能力を持ち、スマホに求められる機能はほとんど網羅しているため、仕事の相棒として、そしてプライベートを楽しむ場面でも十分に活躍してくれるだろう。
ただし、最上級の機能を詰め込んだがゆえに、大きさは約77×161×9.3mmと相応に大きい。例えばジーンズのポケットに入れて持ち歩けるようなコンパクトさではない。
そして、『AQUOS R8 pro』を選ぶ上で最も悩ましいのはその価格かもしれない。キャリア直営のオンラインショップでの販売価格は、NTTドコモ版『AQUOS R8 pro SH-51D』で税込209,000円、ソフトバンク版の『AQUOS R8』は税込191,520円となっている。ただし、キャリアの提供する購入プログラムを利用すれば、支出は抑えられる。スマホを2年後に返却する条件であれば、実質負担額は10万円以下になる。
『AQUOS R8 pro』の見どころは書き切れないほど多々あるのだが、やはり随一の魅力はカメラだろう。多眼カメラで画質を改善する他社のアプローチとは真逆を行き、(スマホとしては)巨大なセンサーで勝負をかけている。1型センサー搭載機としては3世代目となる今作では、その使いこなしも進んでいる。ただ撮るだけのスマホカメラではなく、日々の暮らしをもっと印象的に刻める、そんなカメラに仕上がっている。
◎参考情報
https://jp.sharp/products/aquos-r8-pro/
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