『Pokémon Sleep』に感じた“強み”と“課題” 可処分時間への新たなアプローチは成功するか?

プレイから見えてきた『Pokémon Sleep』の強みと課題

 睡眠は1日に何度も繰り返すことが少ない日常行動のひとつだ。先述したチュートリアルの例も、そうした睡眠の特性に由来するムーブメントだったように思う。そこから見えてくるのは、『Pokémon Sleep』の「ライブサービスゲーム」としての課題と強みだ。

『Pokémon Sleep』

 ライブサービスゲームとは、タイトルを買い切り型のパッケージとして定額で提供するのではなく、半永久的に続くサービスとして継続的に更新し、コミュニティの醸成や利益の最大化をねらうゲームコンテンツの総称だ。モバイルゲームによくある基本プレイ無料・アイテム課金型や、『Apex Legends』のようなシーズンパス・バトルパスを提供するタイトル、『FINAL FANTASY XIV』や『Xbox Game Pass』のようなプレイ権を月額などで販売するタイトルがこれに該当する。界隈を賑わせる多くの人気コンテンツが分類されるカテゴリである。

 ライブサービスゲームには、マネタイズポイントが点ではなく、線であり、継続的な売上が期待できるというメリットがある一方で、サービスを継続させていくために、プレイヤーとの良好な関係性の構築、プレイヤーを食傷させない程度のアップデートが必要という難しさもある。そこでテーマとなってくるのが、コンテンツの「習慣性」と「賞味期限の長さ」だ。

 たとえば、先に挙げたライブサービスゲームの代表的作品では、新たなコンテンツの投入、定期的なシーズン移行とランクリセット、長く遊べるエンドコンテンツの用意といった形でそれを実現している。場合によっては、ゲームの進行に重要な意味を持つアイテムにデイリー、あるいはウィークリーの獲得キャップを設け、毎日かつ長くプレイしてもらえるような工夫が施されているケースもある。こうした要素によって、コンテンツの「習慣性」と「賞味期限の長さ」を担保しているのだ。

 『Pokémon Sleep』もまた、1日に何度も行うことが珍しい「睡眠」を“ゲーム進行のカギ”に設定し、「賞味期限の長さ」を担保する。「ポケットモンスター」という人気シリーズから派生したタイトルである点、「寝顔をコレクションする」というゲーム性を持つ点には、ほぼ無限にコンテンツを追加できるという強みもあるだろう。睡眠を経てこそ大きく展開するゲームであるため、時間のあるプレイヤーが没頭してプレイしたとしても息切れしないメリットもある。ライブサービスゲームに必要な「賞味期限の長さ」という面では、これ以上ない条件が揃っているといえる。

 一方、「習慣性」の面では課題も見え隠れする。1日に何度と行わない行動をトリガーにしているからこそ、不注意や不具合によって、そのカウントにミスが発生してしまった場合には、ユーザーのモチベーションが下がりかねないためだ。実際にリリース直後には、「アプリを起動せず、寝てしまうプレイヤー」や「寝ている最中にエラーによってアプリがクラッシュしてしまうプレイヤー」などが散見された。定着に向けては、いかに不自由なく、習慣的に遊んでもらえるかが重要となっていくのではないだろうか。

 とはいえ、サービス開始からはまだ10日ほど。ゲームとしての可能性は今後にかかっている。ユーザーの可処分時間に対し、新たなアプローチを見せる『Pokémon Sleep』は、ジャンルの前例となるような成功を収められるか。アップデートを含めた運営の対応に注目していきたい。

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