まさに遠征用SUV? マツダの3列シート『CX-8』グランドジャーニーで700km試乗を敢行してみた

 ミニバンの広大な室内は魅力的。しかし背の高いミニバンは高速走行時の横風のふらつきなどがあるし、長距離移動は安定しててスタイリッシュなSUVがありがたい。そんなユーザーから支持されるマツダの『CX-8』。今回は700キロを試乗してその使用感をレビューしてみた。

公用車にも使われるSUV

 『CX-8』は『CX-60』のデビューまでマツダの国内モデルで旗艦を担っていたモデル。2017年にデビューしたスタイリッシュな3列シートのSUVとなる。その使い勝手やゆとりの室内空間などは好評で広島県の公用車としても採用されているほど。

 2022年11月には大幅に手が加えられ、その内容は多岐に渡る。たとえばエクステリアをはじめとするデザイン。フロント&リアバンパー・フロントグリル・前後ランプなどを、マツダ最新のデザインに。

 特にアダプティブLEDヘッドライトの防眩ハイビームは12分割から20分割になり夜間時の視認性が向上。またブランドのテーマとなる「走る楽しさ」を追求し、スプリングとダンパーの特性が見直され、乗り心地や走行安定性に磨きがかけられた。そしてそのタイミングでスポーティーなイメージを高めた「スポーツアピアランス」が追加されたり、特別仕様車「グランドジャーニー」が登場したりした。今回は後者で700km以上を過ごした。


圧倒的な安定感を誇るSUV

 グランドジャーニーは『CX-8』の持つタフさの中にも洗練された都会派のイメージはそのままに「家族と様々な場所に行きたい」という気持ちに応える特別仕様車。専用の外装や内装などお得感だけでなくアクティブさも進化し、グランドジャーニーはガソリン、ディーゼルエンジン、6人乗り、7人乗りから選択可能でどれを選択しても4WDになる。試乗車はディーゼルエンジンの6人乗り。2列目が独立したシートになり、センターは3列目へのウォークスルーを可能にするスペースも。前席は今回の仕様改良でクッションやバネが見直され、乗員上体の安定性を向上させている。

 マツダのディーゼルエンジンは扱いやすさとスポーティさが同居するユニットとして定評があり、『CX-』8のそれは2.2リッターの排気量から200PSの最高出力と450Nmという大トルクを誇る。もちろん過給機付だ。450Nmというトルクはわずか2000rpmで発生する。走り出すと深くアクセルを踏まずに加速していく。今回のマイナーチェンジではオートマチックの変速タイミングや制御も変更されている。

 街中では2000rpmも回さずに交通の流れに乗れ、車内の静粛性が高いだけでなくエンジンを回す必要がなく経済的。少しだけ踏み込めば最大トルク発生回転域になり、気持ちのいい加速を味わえる。高速では文字どおり余裕の巡行。

 一方、山越えなどのワインディングロードでは全長4925×全幅1845×全高1730mmのボディサイズながらも良く曲がってくれる。切り返しが続くコーナーではさすがにボディサイズを感じる場面もあるが、ロードスターにも通じる人馬一体感が気分を盛り上げてくれる。ドライブモードセレクター「Mi-DRIVE」をスポーツに、と思ったらディーゼルモデルはスポーツの設定がなかったこともご報告。余談だがこのMi-DRIVEに新たにオフロードモードが設定されている。このモードでは文字どおり各種制御をオフロード走行に最適化、悪路走破性を高めており、未舗装路な上り坂でのずり下がり防止もサポートされる。

世界有数の安全性能を持つ3列目

 今回の試乗は5人プラス荷物という設定。ルートは都内から福島まで往復で高速4割、山越え4割、街中1割、渋滞1割の割合で筆者は一通り3列目を体験。また燃費は同割合でトータル14.0km/L。山越えの登りや渋滞をうまくこなせばカタログ値の15.4km/Lは記録できたと思う。

 『CX-8』の3列目は世界でも有数の安全性能を誇る。日本の追突安全基準は「50km/hで追突された時に燃料漏れしないこと」だけだ。逆に言えば3列目のスペースがどう潰れようと燃料漏れしなければ基準を満たしている扱いになっている。しかしCX-8はアメリカの「80km/hからのオフセット衝突でも燃料漏れしない」基準だけでなく、その衝突でも3列目の生存空間を確保しているのだ。マツダの衝突性能開発部の佐伯卓哉氏は「衝突性能開発部だけでなく、設計部門も含め、マツダの開発陣全員がその実現に向けて一丸となって取り組む理由は、3列目までより安心して自分自身の子どもや大切な人を乗せられるクルマを造りたいという想いがあるからです。CX-8は「いつか巣立つ子どもと、今過ごせるこの時を最上のものにする選択肢」という価値を提供できるモデルです。このCX-8を安全性の高さでも選んでいただけるよう、しっかり仕上げています」と語る。

 このように3列目の快適性だけでなく、安全性を大きく訴求しているのは、筆者の記憶にある範囲ではマツダのCX-8とボルボXC90だけだ。

 その高い安全性を誇る『CX-8』の3列目は身長175cmの筆者が座っても十分快適だった。他のクルマにありがちな3列目特有の小さな背もたれや、オマケ程度のヘッドレストとは違い、『CX-8』のそれは筆者の肩まである他のシートと大差ないサイズが実用的に感じる。

 アクセスも2列目をスライドさせれば苦にはならないし、スライドが面倒な場合は6人乗りモデルなら2列目センターのウォークスルーを使う手もある。走行中の突き上げ感も不快なほどではないし、高速時のノイズも気にならないどころか、声を大にして前席と話をすることもなかった。
 唯一筆者が座っていて不便に感じたのは、山越えなど体を支える目的で天井にハンドグリップがあるとラクだと思った程度。スペースも2列目の住人がよほど後方にスライドさせなければ大人の使用でも十分だ。空調も前席左右、後席と独立した3ゾーンのエアコンは全モデルに標準装備。

 早い話が普通に“使える”3列目なのだ。もちろん普段3列目を使う必要がなければ、シートを収納すれば広大な荷室になる。今回の行程ではラゲッジ下に用意されるサブトランクが想像以上に“使えて”便利だった。グランドジャーニーはガソリン車が399万9600円から、ディーゼルモデルが438万2400円からのプライスになっている。そしてCX-8自体は驚きの299万4200円からと高コスパモデルなのだ。

◎参考情報

マツダ
https://www.mazda.co.jp/

CX-8
https://www.mazda.co.jp/cars/cx-8/

フェラーリの『ローマ・スパイダー』が遂に日本上陸 発表会で見てきた「ラ・ノーヴァ・ドルチェビータ(新しい甘い生活)」

革新的なソフトトップを装備するフェラーリのニューモデル、『ローマ・スパイダー』が遂に日本でお披露目された。タイムレスなエレガンス…

関連記事