人工筋肉と圧力センサーで遠隔からハグができる 「Hugtics」が示す“ふれあい”の未来

 クリエイティブ・R&DチームDentsu Lab Tokyoが開発した「Hugtics」は「ハグ」を遠隔体験できる新感覚のデバイスだ。今年3月に米・テキサスにて開催されたSXSW2023に出展した際にはそのユニークなプロダクトが注目を集め、500人以上の人が「遠隔ハグ」を体験したという。新たな可能性を感じるこのデバイスの体験会を取材した。

「Hugtics」

 「Hugtics」のインターフェースは「人工筋肉の編み込まれたベスト」と「圧力センサーをつけたトルソー」の組み合わせで構成されている。トルソーを抱きしめると、トルソーに加えられたハグ(圧力)のデータが人工筋肉にフィードバックされ、ベストを纏っている人は「抱きしめられた感覚」を得ることができる。ベストを纏ってトルソーを抱きしめれば「自身を抱きしめる体験」が可能になるほか、技術的にはベストとトルソーを離れた場所に置いてハグを遠隔化することもできる。

 また、電通サイエンスジャムの技術である「感性アナライザ」によって体験中の脳波を測定し、ハグ時の幸福度に関連する感情変化を計測・可視化する取り組みも行われており、ハグによって脳の働きが変化していく様子を視覚的にとらえることも可能だ。Dentsu Lab Tokyoのクリエイティブ・ディレクターである大瀧篤氏は「Hugtics」の感性アナライザについて、SXSWでも好評を博したと語る。

「SXSWでは、当初立てていた目標の4倍の方、とても多くの方に体験していただけました。感性アナライザによって幸福度の推移を外から見られるようになっており、第三者から見ても『あ、このタイミングで幸福度が上昇しているな』ということがわかります。SXSWではさまざまな人に体験していただきましたが、幸福度のグラフを見ながら『ハグをしているとき、どんな事を考えていましたか?』と質問すると、『実は子どもとのハグを思い出していて、すごく幸せな気持ちだった』とか『亡くなったお父さんとのハグをちょっと思い出していた』なんて言葉をいただけたり。我々はコミュニケーションの会社なので、こうした新しいコミュニケーションを提案できることがとても嬉しく思っています」

大瀧篤氏

 「Hugtics」の開発に当たってはDentsu Lab Tokyoと研究者・髙橋宣裕氏とのコラボレーションが行われた。高橋氏は触覚インターフェイスの研究を行っており、2011年には「自分自身を抱きしめたらどんな感情が生起するのか」をテーマにした触覚コミュニケーションデバイス「Sense-Roid」を開発している。今回Dentsu Lab Tokyoが発表した「Hugtics」の前身とも呼べるハードウェアだ。

髙橋宣裕氏
Laval Virtual Awards 2011 | Sense-Roid: Emotional Haptic Communication with YourSelf

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