連載:Viral Hit Creator(第三回)
「1日作業して2秒の動画を作る」ストップモーションクリエイター・omozocが制作で妥協しない理由
12枚の写真から1秒の動画をつくる ストップモーション・アニメの過酷さ
ーーストップモーション・アニメーションは、どのようにつくられているのかについて教えてください。
omozoc:私は基本的に12コマで動画を制作しています。1秒の動画をつくるのに12枚の写真を使用するということですね。コマ数を増やせばもっと滑らかな映像になるのですが、作業効率を考えると12コマで制作するのがちょうどいいかなと感じています。滑らかに見せたいシーンのときだけ、コマ数を増やしたりしていますね。
ーー1秒の映像をつくるのに12枚……。とても大変な作業ですね。
omozoc:「運命」という作品があるのですが、あの動画は1秒60コマでつくっているシーンがあって、制作時はかなり地獄でした(笑)。
ーー作品はどのくらいのペースで制作しているのでしょうか?
omozoc:おおよそ1分の動画をつくるのに1ヶ月かかります。被写体によっては、丸1日作業しても、出来上がった動画がたったの2秒のときもありますね。作業は大変ですが、しっかりと、時間をかけて制作した方がいい動画ができるんです。投稿頻度を意識して制作していた時期もあったのですが、納得いくまでしっかりと作り込んだものでないと、視聴者の人には伝わらないということを経験上学びました。いまは、投稿頻度よりも完成度を重視して、作品を発信しています。
誰しも見たことがあるアイデアで満足しない
ーー動画が伸び始めたのは、いつごろからだと感じますか?
omozoc:2本目に投稿した「調理器具のサラダ」です。私が動画をつくるときに1番大事にしているのは“核となるアイデア”なのですが、そのことに気付かされた動画にもなりますね。「調理器具のサラダ」が伸びた理由は、“調理器具を調理する”というアイデアが受け入れられたからだと考えます。今振り返ると、音が雑だったりクオリティがいまいちな箇所があるのですが、それ以上にアイデアが良ければ伸びることがわかりました。
ーー“核となるアイデア”は、いつもどのようにして思いついているのでしょうか?
omozoc:意外性があるようなアイデアを意識しています。1度思いついたものをそのまま採用することはありません。そこから2、3回ひねって「単純だけど、誰も思いついていないようなアイデア」にしてから、動画に落とし込んでいますね。最初に思いついたアイデアは、誰しも考えたら思いつくような、どこかで見たことがあるアイデアの状態なんです。そこから1歩斜め上をいったアイデアへとさらに練ることが大事かなと思います。
ーーまずはアイデアを生み出すことから始めるんですね。
omozoc:そうですね。核となるアイデアを決めて、それからストーリーの起承転結を考えて、撮影をします。撮影に使用する物体はその場で決めることもありますね。PESの動画で感じたようなストップモーション・アニメーションでしか感じることのできない気持ちよさがでるように意識をして、制作しています。
ーーストップモーション・アニメーションの気持ちよさは、どこから生まれていると考えますか?
omozoc:ストップモーション・アニメーションは、ASMRに近い部分があります。ですから、音もかなり重視していますね。音と映像がピタッと組み合わさったときが、すごく気持ちいいんです。
ーー音はどのようにして制作しているのでしょうか。
omozoc:つくりかたはさまざまですが、“口”を使うことが多いです。急上昇1位を取った「激おこママの夜食」という動画があるのですが、この動画のチーズフォンデュのシーンは、口で鳴らした音を使っています。あとは、固い野菜を切った音を使ったりもしていますね。何百回も録音していると、奇跡的にいい音が取れることがあるんです。その音を集めて、つなげているという感じです。