女子大生が「ライスペーパー」で一躍人気者に? TikTokで支持される“好きなものを追求する姿勢”

 「ライスペーパーネキ」の異名を持つTikTokクリエイターをご存知だろうか。「ライスペーパーに恋をした女子大生(22)」と自身を紹介する「みか@ライスペーパーネキ(以下、みか)」というアカウントだ。記事執筆時(2023年5月10日)のフォロワーは13万人、総いいねは500万と急上昇中の彼女の人気の秘密を探ってみた。

 ライスペーパーに恋したクリエイターの前に、ライスペーパーがなにかをご存知ない方のために説明をしたい。ライスペーパーはお米を紙のように薄いシート状にした食材だ。生春巻きの外側の皮として使うのが一般的だろう。市販されているライスペーパーの多くは円形で乾いた状態で売られており、皮をサッと水にひたし、柔らかいうちに食材を包むと、生春巻きが出来上がる。

 みかは、さまざまな食材をライスペーパーに巻き込んで食べる豪快な調理法とユーモアのあるスタイルが視聴者にインパクトを与え、人気を博している。

 彼女はTikTok以外にも活動の場を持っており、「女子大生ザッパーみか」名義で「低脂質で痩せる!美味すぎる絶品ダイエット飯」というタイトルの書籍も出版している。「ザッパー」とはスポーツクラブのRIZAPのユーザーを指しているようだが、筆者が調べたところ、彼女以外に「ザッパー」ということばを使っている人はいない。独自で生み出した用語のようだ。

@rizap58 うまーい!🤤騙されたと思ってやってみ?#ライスペーパー#夜食#雪見だいふく ♬ Fun celtic music - Yoshiki ARA

 プロフィールや経歴のみを一見すると、RIZAPに通う彼女が食事制限に勤しむ様子や低糖質なメニューを動画としてTikTokに投稿し、それを参考にしているユーザーが多いのかと思える。現にTikTokの「食欲が止まらない時の夜食」と題した動画ではカロリーカットのアイスクリームの「SUNAO」をライスペーパーで包み、片栗粉をまぶし、雪見だいふく風に調理した投稿もあり、ダイエット中の人であれば真似してみたいと思うような料理ではないだろうか。しかし、投稿内容とコメント欄を観ると、どうやら違うようだ。

 620万回以上再生され、ファンに支持されている動画を例に挙げよう。「ライスペーパーを1日」というコメントに返信する形で投稿された動画では、ライスペーパーをタピオカ風、煎餅風、しゃぶしゃぶ風に調理して食べ、1日の終わりにはライスペーパーをシートマスクのように肌に貼って使用している。あまり食事制限の参考になりそうではない。

 過去の動画を観ると、2022年12月頃までは様々な食材を使った低糖質なメニューや低脂質なメニューを提案しているが、以降はライスペーパーにテーマを絞ったように見える。フォロワーが増えているのは、ライスペーパーに絞ったあとだ。

 彼女のどんな部分が支持されているのだろうか。コメント欄を見ると、「ライスペーパー、好きだね」と言ったコメントが多い。有益なアカウントとしてフォローされているのではなく、視聴者は好きな物事を追求している彼女の熱量に惹かれているようだ。

 以前に取り上げたオムライス兄さんも同様だ。レシピの参考にしているユーザーも一定数いるだろうが、ほとんどの視聴者にとっては「毎日作りたいほど好きな食べ物に没頭している様子」が魅力的だと捉えられているようだった。

 「好きな物事を追求する人」がウケるのはTikTokだけではない。地上波のテレビ番組で考えると、『マツコの知らない世界』(TBS系)はまさに「好きな物事を追求する人」を主役に据えた番組だろう。この番組では制作側が誰を取り上げるかを選び、マツコ・デラックスが紹介する構図だ。一方のTikTokでは、ユーザーの好みに基づいて、アルゴリズムが「おすすめ」としてクリエイターを紹介し、ユーザーが好きなクリエイターを見つけてフォローする。客観的な視点から魅力を引き出してくれるマツコ・デラックスが存在しない分、クリエイター自身の自己プロデュース力が求められ、玉石混交ではある。しかしフォローするクリエイターを自分で選び、タイムラインを構築できると考えると、自分専用の『マツコの知らない世界』を作るようなものだ。

 TikTokは「見目麗しいZ世代がダンスをするプラットフォーム」だと、思っている人も多いかもしれない。もちろんそのようなダンス動画ばかりを観ることもできる。しかし先述の通り、自分の好きな人にスポットライトを当てて、応援し続けることもできる。毎日ライスペーパーを食べる人や毎日オムライスを作る人ばかりを観るアプリにカスタマイズすることも可能なのだ。

 ライスペーパーネキが人気を集めるということは、応援したい人を主体的に見つけて、支持するユーザーが多い証左だろう。彼女のように「好きな物事を追求する人」を見つけたいユーザーは、まずは彼女をフォローして、アルゴリズムに好みを伝えてみても良いかもしれない。

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