Weverse DMの開始でHYBEが優勢に 新発表から考える“韓国ファンコミュニティプラットフォームの現状”

韓国ファンコミュニティプラットフォームの現状

Weverse DMは収益に反映されにくい現状を打破する鍵

 芸能事務所が直接ローンチした「ファンとのコミュニケーションシステム」ではWeverseとbubbleが最もユーザーが多く知られている2大サービスだが、決定的な違いは、前者は無料サービスだが後者は有料サービスという点だろう。

 bubbleを運営しているDearU社の規模はWeverseほど大きくはないが、売上高は2021〜2022にかけて400億ウォン→491億ウォン、売上高もほぼ同じ伸びで132億ウォン→162億ウォンと堅調に伸びており、純利益も黒字化している。売上高の96%以上がサービスのベースであるbubbleによるもので、大きな設備投資をしない限りはユーザーの伸びが収益に直接結びつくようになっている。SMのアーティストのWeverse参加に関しても、アルバム・MDショップのWeverse Shop入店・グローバル公式ファンクラブの運営はWeverseに移行する予定だが、アルバムおよびMDについてはSM TOWN &STOREでも入手可能で、元々の収益のコアであるbubbleとかぶるWeverse DMについては、SMアーティストの加入予定は現状ではないとのことだ。

 一方のWeverseは、「HYBE LABELSのみならず世界中のアーティスト81組が公式コミュニティを開設・全世界245の国と地域の累計約6500万のユーザーが利用(2023年4月14日現在、コミュニティ重複加入者を含む)」というユーザーの多さではトップだが、サービスのベースであるメッセージ機能は無料で現状は広告もないため、一部コンテンツの有料ビハインドとファンクラブ運営、グッズショップが主な収入源となっており、加入ユーザー数の伸びが収益にダイレクトには反映されづらい現状がある。

 運営会社のWeverse Companyの売上高は2020年2191億ウォン・2021年2394億ウォン・2022年には3077億ウォンと伸びているものの、営業利益に関しては155億ウォン→84億ウォンとサービス開始から徐々に減少してきており、2022年にはマイナス15億ウォンと赤字へ転落してしまった。現状ではまだ設備投資に収益が追いついておらず、「運営すればするほど赤字」という状況を打破するためには遅かれ早かれ有料サブスクリプションやオプションが始まることは必須で、むしろそのための設備投資でもあったのだろう。

 実際、5月のカンファレンスでも「Weverseのユーザーは大幅に増加したが、外見的な成長に比べて不振な実績の原因は何か。収益性を向上させるための戦略はあるのか?」という質問に対して「これまでの成長はファンダムに対する深い理解をもとに慎重にサービスをチューニングしてきたためと判断している。今年様々な新規サービスを導入して安定化し、来年の本格的な成長が期待される」「今年ローンチされる新規サービスの裏には見えない技術的投資が必須で、そのような投資は今年も持続しなければならない。安定が見込まれる来年収益化が伸びると予想される」と回答する場面があった。

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