『Weekly Virtual News』(2023年5月8日号)

「メタバースのいま」と「VTuberのいま」を、GWの前後から覗き見る

『遊覧空間』のMVに、メタバースのいまが詰まっている

 ゴールデンウィーク突入直前の4月28日、とある音楽とMVが公開された。音楽ユニット・ハジマルイオンの3rdシングル『遊覧空間』である。

ハジマルイオン −遊覧空間−【♪Official Music Video】

 ボカロPと歌い手という異色の組み合わせの音楽ユニットが手掛ける新曲のMVは、ソーシャルVR『VRChat』で全編を収録したという、類を見ないものだ。MVを手掛けたのは『VRChat』を舞台に活動するクリエイターチーム・VisitoR。これまで様々な音楽作品を、『VRChat』で収録した映像作品とともに送り出してきたチームだ。

 楽曲自体も『VRChat』ひいては「メタバースのいま」にフォーカスした内容となっており、「遠い未来」でも「失敗した過去」でもなく、いま現在をメタバースで生きている人々の姿を躍動感たっぷりに描いている。そして収録に用いたワールド(仮想空間)は約100個にのぼり、同じくらい多数の人たちが制作に携わっていることが、エンドロールからうかがえる。かつてない規模とクオリティで紡がれる「メタバースのいま」を、ワクワクするような歌とともに体験してほしい。

「メタバースからは撤退しない」――四半期決算にザッカーバーグが語る

 さて、現在進行系でメタバースに取り組んでいる企業といえばMetaだ。一部メディアの飛ばし気味な報道をきっかけに「Metaがメタバース事業から撤退する」というウワサも流れたが、4月27日の四半期決算のタイミングでマーク・ザッカーバーグ氏から公式に否定された。Metaは引き続き、メタバースへ注力するとのことだ。

 また、メタバースだけでなくAIにも注力することを示し、AIとメタバースの両輪で今後展開させていくことを明かした。そして、2023年後半に新たなコンシューマー向けVRデバイスを「多くの人の手に取りやすい価格」で提供するとも話しており、VR・メタバース事業への継続注力はここからもうかがえる。

 とはいえ、レイオフが実施されているのはたしかであり、「選択と集中」をどうしていくかはMetaの課題となりそうである。そして、「メタバースは”オワコン”」としたいのは何者なのか、まことしやかな話の発信源には少し意識を傾けてもよいかもしれない。

イベント多数なゴールデンウィークのVTuber業界

 例年、VTuber業界ではゴールデンウィークになにかとイベントが開かれる。『ニコニコ超会議』内では音楽フェス『VTuber Fes Japan 2023』が開催され、様々なバーチャルアーティストがステージに立った。

 『ニコニコ超会議』では、サンヨーブースにてアイマリンプロジェクトのライブステージも開催された。新曲を発表したアイマリンプロジェクトに加え、活動縮小中のナギナミプロジェクトも、ひさしぶりにステージに立った。興味深い点として、このライブステージは『VRChat』でも同時開催された。というより、『VRChat』では2日間にわたり、1日に3回公演されたため、なんなら『ニコニコ超会議』現地よりも公演回数が多い。

 会場となったワールド「水晶宮」は、アイマリンプロジェクトの楽曲MVの「ロケ地」にもなっている場所だ。観客がVRのロケ地を訪れ、バーチャルアーティストのライブを楽しめる、というのは面白い施策だ。ライブそのものも、手練の企業たるGugenkaが関わっているだけあり、演出は万全だった。

【3D LIVE】NANASHI Sing up vol.1-Sparkle-【ななしいんくミュージック】#ななしのライブやばい

 新体制へ移行した『ななしいんく』は、YouTube上で単独のグループ3Dライブ「NANASHI Sing up vol.1-Sparkle-」を開催した。ステージも含めて全編フル3Dのライブの映像クオリティは高く、グループ統合後の『ななしいんく』がどのような方角へ進むか、その一端が垣間見えるライブとなっていた。

 同じく新体制として立ち上がったGREE系列のREALITY Studiosからは、新規VTuber事務所『すぺしゃりて』が発足。第1期生オーディションが国内・国外同時を対象に開始した。ゲーム配信を中心に据えた女性VTuber事務所とのことで、同じくREALITY Studiosの事務所『FIRST STAGE PRODUCTION』よりも特化系となる。VTuber領域への注力を鮮明にしたGREE系列の今後の動きにも注視したいところだ。

 英語圏事務所の代表格である『VShojo』からは、SilvervaleとVeibae、そしてNyannersが離籍を発表した。相次いで3人が離籍することとなり、所属タレント層が少し細ることになる。ただし、以後も各タレントごとのIPはタレント側に保持される、というのはVTuberとしては理想的な処遇だ。タレントの決断を尊重するという『VShojo』のスタンスが、こうした形から垣間見える。

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