REJECTが見据える、格闘ゲームシーンの未来予想図 YamatoN×こく兄に訊く可能性と課題【後編】
『ストリートファイター6』の発売で海外勢力にも変化が?
ーーチームとして部門を立ち上げるうえで、求めている人材像を教えていただけますか?
YamatoN:プロ選手に関しては、やっぱり勝利を突き詰めてほしいというところはもちろんあります。ただ、勝利を突き詰めながらも、エンターテイメントとして見せることができるのは、同じように重要だと感じていて。たとえば、ひたすらストイックに勝利を目指し続ける人というのは、これも僕は一種のエンタメだと思ってます。エンタメというのは、別に面白おかしければいいというわけではなくて、エンタメ性が備わっている最強の選手を求めていきたいです。
ーー大物を連れてくるというよりかは、新たな原石を探しに行く?
YamatoN:僕の観点から言わせていただくと、ゼロベースでチームを創生するときは、大物のプレイヤーを抱えてそこでチームの核を作る。そこからチームのブランドに憧れを持ったプレイヤーが入ってくるような仕組みを作っていく予定です。ただ僕が危惧しているのは、やっぱり『スト6』になることで、既存の選手が必ず力を発揮できるわけではないこと。もっと言えば、国外の勢力がもっと強くなると思っているんです。そういった新たな時代でも戦えるように、若い世代を育てることに対して、かなり積極的な活動をしていきたいなと思ってます。
ーーこれまでの文脈とは全然違うところから強いプレイヤーが生まれるかもしれませんね。
YamatoN:たとえば、『スト6』で大きな賞金が出たことによって、生活を懸けて競技シーンに挑んでくる人が一気に増えると睨んでいます。特に東南アジアをかなり警戒していて、『Dota2』などをはじめ東南アジアのプレイヤーは賞金がかかっているタイトルの強さが凄まじいんです。さらに高価なPCが必要ないゲームとなるとより参入障壁が下がるので、とんでもない才能がたくさん出てくると考えています。
こく兄:さすが取締役だ。たしかにその通り。やばいわ。
YamatoN:あとは中東ですね。中東はいま、格闘ゲームやモバイルゲームに大きな投資をして急成長している最中で、資本力をもった人たちが趣味でイベントやチーム運営に手を出しているので、とてつもない成長力を持っています。さまざまな国で盛り上がることによって、競技シーンの寿命は長くなると思いますし、 僕はここでその海外の国を敵対視するのではなく、日本が格闘ゲーム先進国として、その国でイベントを行った普及活動をするのも視野に入れて行っていきたいと思っています。日本だけが強い環境になってしまっても意味がなくて、それだと競技シーンが萎んでいってしまうんです。世界で盛り上がるには、世界中で強いプレイヤーが生まれて切磋琢磨していく分布図を作り上げることが1番重要です。いま、世界で主導権を持っているのは日本なので、これを手放さないために、外を盛り上げながら自分たちもそこの地域と交流をして、実力を置いてかれないようにすることですね。
ーーREJECTはこれまでチーム競技の部門に関するノウハウを積んでいると思いますが、格闘ゲームは個人競技です。チーム競技と個人競技でマネジメントやプロデュースのあり方は違うのでしょうか?
YamatoN:格闘ゲーム自体は個人競技ではあるんですけれども、現在世界的なトレンドとして“チーム売り”というのはオーソドックスなスタイルになっていると思います。配信者はもちろん選手も含めて“箱推し”と言われてる文化が、日本では特に根付いていて、一人の選手をブランド化して行うより、複数人をブランド化してプロデュースする方が人気が出やすい。これはどこの分野を見ても間違いないので、格闘ゲームにおいてもチームとして好きになってもらえるようなプロデュースをおこなっていければと思っております。
ーー格闘ゲームチームというと、ストリーミング拠点としての番組があるなどコンテンツに力を入れているところは多いですよね。REJECTとしてそういった施策はございますでしょうか?
YamatoN:いままでREJECTではできなかったことなんですけれども、自分たちでメディアを作ろうと考えています。それは、初心者への導入線だったり、シーンの解説などをREJECTの持つリソースで表現していくため、チームからメディアを発信していって、その後その知見を『VALORANT』など他部門にも逆輸入をして流れを作っていくことを同時にやっていきたいです。
ーープレイヤーだけでなく観戦勢も視聴者として想定するメディアということですね。
YamatoN:これをちゃんとした組織で作り上げていって、パワーを溜めることが大事なんです。例えば、タレントにもやっぱり旬があって、配信も伸びてるときと下がるときがあるんですけど、下がってるときも支えられるような母体がないと、いい人材もその世界からフェードアウトしてしまうんです。これは選手にも共通していて、選手の使用キャラクターが強いときには輝いてるけど、メタが変わったときに空白の時期が生まれてしまう。その間誰もお金が払えなかったら、そのシーンからいなくなってしまうんです。それをなくすために、組織に力を溜めて、ほかの人を支えられる環境を作り上げる。これは別に格闘ゲームだけではなく、すべてのゲームで大切なことだと思うので、僕らはそれを創生しようと考えています。
ーーこの人が辞めていなかったら今頃は……と思う人がたくさんいます。
YamatoN:もうそれに関しては、お互いに何十人と見てきているので、そういった人たちを、少しでもシーンに残すことこそ、発展の礎になると考えていいます。
ーー格闘ゲームシーンだけでなく、その他のシーンも含めて、起爆剤になって盛り上げてくれる予感がしています。
YamatoN:そうですね。僕らはまずは格闘ゲームの力をお借りすることになるというか、一緒に盛り上げていく形になると思うので、まずはコミュニティに受け入れてもらえるところから専念して頑張っていきたいです。
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