AIボイチェン向け市場が生まれる？　VTuberもAI化が始まる予感

　AIボイスチェンジャー「RVC」が巷で流行り始めている。非常に高精度な音声変換と学習速度がウリであり、さらには「異なる音声のマージ（融合）」まで可能とする。その精度は従来のボイスチェンジャーソフトとは比べものにならないレベルだ。アップデートもすさまじい速度で進んでおり、ボイスチェンジャーの普及はかなり現実的になりつつある。

　そんな「RVC」の普及を見てか、「RVC向けボイスモデル」という製品領域も生まれつつあるようだ。ECサイト「BOOTH」では早速、ボイスモデルの出品が始まっている。「RVC利用OKの音声素材」を超えて、学習済みのモデルがそのまま登場しているところに、この領域の速度を感じさせる。

　利用・購入を促進するためか、「クリーンな契約のもとボイス提供をしてもらった」と謳うものも多い。無料のものはもちろん、有料のものも見受けられる。ビジネスにしようという動きもあるのだろう。声をも“バーチャル”にしていくという欲求を受けて、「AIボイスチェンジャー向けボイスモデル」という領域は拡大を開始しつつある。

　半年ほど前に登場したAI音声対話アバター「AI Avatar AOI」も、直近の技術発展を受けて進化を始めているようだ。その成果は「VTuberのAI化」という形で実装された。茨城県公認VTuberの茨ひよりに、「AI Avatar AOI」に「ChatGPT」を連携した「AI茨ひより」が発表されたのである。

　公開された動画では、茨ひよりの収録音声をもとにした合成音声による発話も相まって、かなり高精度な対話が実現していることがうかがえる。「AI Avatar AOI」の対話システムに、「ChatGPT」の対応力が重なることで、ここまで対話として自然になるのかと驚かされる。

　「AI茨ひより」は、『ニコニコ超会議2023』の茨城県出展ブースにて展示が予定されている。現地で自由な会話を楽しみつつ、茨城県の魅力を発信する広報活動も体験できるようだ。そして、「AI Avatar AOI」がベースであるならば、『VRChat』アバターにもシステムとして組み込める可能性もあるだろう。極めて自然な「AIで動く人物」と、VR空間で会える日も近いかもしれない。

企業参入が続くVRChat。先週も意外なニューカマーが登場

　『VRChat』への注目が大きく集まっているのか、今年に入ってからVRChat社との公式パートナー契約や、『VRChat』への本格進出のニュースが続いている。先週も意外な方面からの進出が見られた。

　ひとつは、森永邦彦によるファッションブランド「ANREALAGE」だ。独創的なコレクションで大きな注目を集め、直近では『竜とそばかすの姫』の衣装デザインにも起用されている。そんなファッションブランドが、にわかに『ZEPETO』『Roblox』『VRChat』の3プラットフォーム向けにデジタルウェアを発表したのである。

　発表された衣装は、パリコレにも登場した3種のパッチワークドレスで、『VRChat』向けのデジタルウェアは5000円で提供されている。対応アバターは30種以上を予定しているようで、その対応数からも生半可ではない進出と感じられる。そして、VRChat用アバター衣装の領域には先日『ATSUSHI NAKASHIMA』も進出を果たしている。著名なブランドの進出は今後も続くだろうか。

　もうひとつは不動産業界の参入だ。賃貸仲介業の「東京かまた不動産」を運営する株式会社Any Gold Trustが、VRChat社との公式パートナー契約を締結したのである。今後はVRChat上に「東京かまた不動産」の”支店”を作るとのことで、実際にスタッフが滞在し、案内を行う本格的なバーチャル店舗を目指すようだ。

　同社はほかにも「VR参入を考える企業への経験の共有」や「クリエイター活躍の場の創出」もミッションに掲げており、「とりあえずワールドだけ出して終わり」ではなさそうな雰囲気を感じる。具体的な動きはまだ見られず、どのような座組で進むかも見えていないが、実現すればなかなか興味深い事例となりそうだ。