なぜ「ぽこピーランド」は盛り上がるのか 理由は“スタッフ陣”と“VTuberのロケ地”にあり?

 3月24日、VTuberの甲賀流忍者ぽんぽこ(以下、ぽんぽこ)とピーナッツくん、通称「ぽこピー」の2人によるテーマパーク「ぽこピーランド」が『VRChat』で公開された。

 広大なワールドのなかに、ぽこピーの2人がこれまでにおこなってきた数々の企画やシーンを模した建築物が盛りだくさんとなっており、その規模とクオリティの高さからVRユーザーの間で大きな注目を集めている。

 代表的なアトラクションには、ピーナッツくんの楽曲「グミ超うめぇ」の世界観をMVとともに体験できるコースターや、「ピ虐研究所」と呼ばれるお化け屋敷などがあり、ファンはもちろん、そうでないユーザーも楽しめる内容となっている。

 このほかにも、普段ぽこピーの2人がYouTube動画の背景として使用している「撮影部屋」を再現した場所が用意されており、ここでしか聞けないやり取りが行われているなど、ファンであればニヤリとできるものも用意されている。

 そんなぽこピーランドだが、一体なぜここまで話題になっているのか? 本稿ではその“すごさ”を掘り下げていきたい。

 ぽこピーランドの制作が発表されたのは、ぽんぽこが1年前におこなった活動4周年を記念する生放送でのこと。その後1年もの制作期間をかけて開園したという経緯がある。

 まず最初に触れておきたいのは、VRの世界で活躍するクリエイターと、ぽこピーの2人と縁深いクリエイターらによって構成されているスタッフ陣である。

 バーチャル展示会イベント『バーチャルマーケット』にも関わっているぬるもとなど、VRで活躍している実力派のクリエイターが多数参加一方で、ぽんぽこチャンネルの動画で使われている背景イラストなどを制作しただいまるや、動画企画でも関わっているVTuber・衛生ライトなど馴染みのあるクリエイターも制作に関わっている。

 その結果、本ワールドは「ぽこピー愛」と「誰でも遊べる工夫」を両立したワールドに仕上がった。ぽんぽこチャンネルに馴染みあるメンバーでビジュアル面を作りつつ、『VRChat』に精通したクリエイターがアトラクションやワールド内に施されたギミックを作っていく、という流れが生まれたのである。

 たとえば、ぽこピーランドの一角にはたこ焼きをテーマにしたミニゲームが設置されている。このミニゲームは「VRならたこ焼き100個食べられるのでは」という“ぽんぽこチャンネルっぽさ”を感じる企画の体で、レーンから流れてくるたこ焼きをひたすら食べるという内容。ゲームのルールは、過去にぽんぽこチャンネルで挙げた動画が元ネタになっている。

大好物なら無限に食べれるはず!人生初のたこ焼き100個大食いチャレンジ!!

 ビジュアル面でも、串のかわりにクナイでたこ焼きを食べる仕様になっているなど、甲賀流忍者であるぽんぽこをモチーフにしたデザインになっているのがポイントだ。

 ゲームデザインの面では、『VRChat』に慣れていないVR初心者でも楽しめる親切な作りになっている。たこ焼きを食べる動作に求められるのはコントローラーを動かすことだけで、ボタンの操作などは一切不要だ。クナイでたこ焼きを刺したら、そのまま口に運ぶだけである。直感的な操作だけでゲームを遊べるので、VR特有のボタン操作に慣れていない初心者でも安心だ。ゲーム中は移動を伴わないため、VR酔いしづらいのも嬉しいポイントだ。

 このように、普段から関わっているクリエイターだからこそ分かる「ファンが喜ぶネタ」を仕込みつつ、誰でも遊びやすい工夫も施し、“内輪ネタ”に留まらず間口の広さを両立しているのがぽこピーランドの凄さの1つである。

 もう1点ぽこピーランドの凄さを挙げると、VTuberが『VRChat』で活動するためのロケ地として機能している点、つまりコミュニティのハブとなっていることも素晴らしい。

 古くから、ミライアカリなどVTuberが『VRChat』を活用する例は多く、ぽんぽこチャンネルにおいても、ホラーネタの動画を撮影する際は『VRChat』を積極的に活用している。

【あっちいけ】自分にまとわり付いてる悪霊を払います。 【Night Terrors / VRchat】

 今回のぽこピーランド開園にあたっても、プレオープンに招待された多くのVTuberが生配信をおこなった。プレオープンは2日間と期間が区切られており、ワールド内でVTuber同士が交流をする場面も見られた。

 そして、正式オープン後も、VTuberらによるぽこピーランドの活用は止まらない。

 おめがシスターズは、「貸し切り遊園地でかくれんぼ」という視聴者参加型の企画を実施、その様子を動画として投稿した。『VRChat』には、「インスタンス」と呼ばれる機能が存在し、これは簡単にいえばワールドのコピー機能で、パラレルワールドのようにして利用できるというものだ。つまり、この機能を利用すれば自分だけで、あるいは親しい友人らだけでぽこピーランドを楽しむこともできる。おめがシスターズの2人も、この機能があることで貸し切り遊園地でかくれんぼというシチュエーションを簡単に実現できたのだ。

ぽこピーランドで貸切かくれんぼ!来場者全員で「おめシス」を探せ!!!

 ほかにも、ぽこピーと交流がある三珠さくまるは、園内に設置された自身のパネルから本人が登場する「本人登場ドッキリ」をおこなった。8時間の撮影の中で、ファンはもちろん、三珠さくまるのことを知らないユーザーと交流する場面も見られた。

【ぽこピーランド】パネルを見てたらVtuber本人登場ドッキリ

 なかでも筆者が面白いと感じたのが、ヘアピンまみれが出した動画「VRChat初心者が『1人ぽこピーランド』を楽しめるのか?!楽しめるに決まってるだろ!!!【 #ぽこピーランド】」だ。この動画はタイトルどおり、『VRChat』初心者が1人でぽこピーランドを体験する様子を記録した内容。

VRChat初心者が「1人ぽこピーランド」を楽しめるのか?!楽しめるに決まってるだろ!!!【 #ぽこピーランド】

 慣れない操作に苦戦しつつも、ぽこピーランドのキービジュアルに描かれているぽんぽこを見て「ヘアピンまみれじゃないっすか」と共通点を見出したり、百均を再現したコーナーを見て「百均の解像度がやけに高い」と感嘆してみたりと、切れ味のあるリアクションで園内を巡っていた。

 このように、普段から『VRChat』を活用している、していないにかかわらず、VTuberがぽこピーランドを自身の動画撮影ロケ地として使っている例は枚挙にいとまがない。普段から『VRChat』を利用した動画を投稿しているぽこピーの2人が生んだワールドだからこそ、ぽこピーランドはVTuberと『VRChat』をつなげる架け橋として機能し、こうした現象につながっているのであろう。

 最後に、ぽこピーランドの各地には建設予定であろう場所がいくつか見られ、今後もアップデートをしていくことが暗示されている。現段階でも『VRChat』のワールドとしては破格のボリュームとクオリティだが、これからどうなるのか。今後もぽこピーランドから目が離せない。

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