日本の美しい情景を「最小限」で表現した作品が世界で評価 Asuが語るアイデアの源泉と動画戦略

動画で発信する際は「水」で作品に動きをつける

──作品についてお伺いしたいのですが、基本的に、日本ならではの景観がベースになっていますよね。自然の風景には元々親しみがあったんですか?

Asu:そうですね。自然が自分の感覚に合うものだな、と感じています。時間があるときは、車に乗って渓流を見に行ったりもしますし、散歩も毎日しています。家の近くの川沿いを眺めたりするのも好きですね。

──そういった日常の自然風景から、作品のアイデアが湧いてくるのでしょうか?

Asu:それもありますね。あとは、いろんなクリエイターの作品や風景画なども、日頃からインプットしています。誰が制作した作品なのか、ということにはあまりこだわっていなくて、僕が見て直感的に良いなと思った作品をよく見ています。

──制作は、どのようにして行っているのでしょうか。

Asu:まず簡単に設計してから、作品をどの物体に収めるのかを決めて作り始めます。この設計は表向きはみえないのですが、得意なポイントでもあります。使用する材料や植物は、基本的にその場に用意してあるものを使用するんですけど、けっこう作りながら直感で形などをみて選んでいますね。作品自体は1週間ほどで完成するんですけど、植物の定着期間も含めると、1つの作品が完成するまでは2〜3ヶ月かかります。

──けっこう時間がかかりますね。

Asu:本当は、動画の投稿頻度を考えると1週間に1つは作りたいなと考えているんですけど、現実はなかなかそうもいかなくて(笑)。

Asu

──Asuさんの作品は「水」が流れているものが多いように感じますが、これにはどのような意図があるのでしょうか?

Asu:2つあるんですけど、1つは植物が管理しやすくなるからです。僕の作品は、苔のような湿気を必要とする植物を使用することが多いのですが、全体に水が行き渡ったほうが植物の状態も良好なので、水を使用していますね。もう1つは、動画にした時に「映える」からです。特にYouTubeでコンテンツで発信するときは、水を使って作品に動きをつけることを意識しています。

「最小単位の美しさ」を求めた作品作り

──“新しいジャンル”という言葉が出てきましたが、Asuさんの作品はジャンルとして、どういった位置付けになるのでしょうか。

Asu:近いものだと「アクアテラリウム」のカテゴリになると思うのですが、まだ誰も見たことのない世界観として表現していきたいと思っています。僕の作品は、アクアテラリウムや盆栽など、いろんなジャンルの要素が含まれています。このAsuという世界観については、現状模索している段階ですね。表現したいことを、自分の中で細分化して発信しているところです。

──すでに、唯一無二の世界観が生まれていますよね。ただ、どの作品を見ても共通して“日本らしさ”を感じます。

Asu:そうですね。アクアテラリウムは、その国やその土地で手に入りやすい材料から生まれるものが多いのですが、僕の場合、日本ならではの“庭園”や“自然観”などの要素が作品に大きく影響しています。だけどこれからは、自分の中の大事なものを残しつつ、日本以外のいろんな国の要素を吸収して作品を作っていくのも、今後考えていきたいと思っています。

──Asuさんの作品は「最小単位で美しさを表現する」ことをコンセプトにしていますが、その意味についてお伺いしたいです。

Asu:「最小単位」で美しさを表現する、というのは、大きさの意味で最小サイズで制作するということではなくて、美しさの最小単位を追求していくということなんです。たとえば、盆栽は過度に装飾をしていないけど、美しいじゃないですか。そういう美しく表現するための最小限、最小単位を探っているという感じです。

──なるほど。少しだけ、Asuさんの世界が見えてきた気がします。今後表現していきたいと考えていることはありますか?

Asu:生態系の世界を、作品の中で再現していくことができたらおもしろいかなと思っています。生き物が生成した有機物をバクテリアが分解し、最終的に植物の成長に使われる。そういった自然の循環を表現した作品って、ヨーロッパの方だとけっこう盛んに行われているんです。そういった「アクアテラリウム」の根底にあるようなコンセプトから昇華して作品づくりできたら面白いなって思います。

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