大学生協のアプリ化に賛否 “大学キャッシュレス化”は本当に浸透するのか

“大学キャッシュレス化”は本当に浸透するのか

現代の大学生のキャッシュレス決済利用率

 ここからは、消費者庁が全国の大学生を対象に実施した「大学生のキャッシュレス決済に関する調査・分析」を基に、大学生のキャッシュレス化の浸透について見ていく。

 まず、買物総数でみる「キャッシュレス決済の比率」は現金の比率がキャッシュレス決済に比べてやや多いという結果になった。

 もしかすると、生協電子マネーサービスが開始された際に食堂内で発生した混雑の原因は、大学生のキャッシュレス決済の不慣れも原因の一つであるのかもしれない。

 また、「大学生の金額帯別買物回数」のうち、QRコード決済の利用を抜粋したものをみると大学生の半数以上が「500円以下」の買物でQRコード決済を利用すると回答した。QRコード決済のデメリットとしては「銀行口座との連帯をしていないためチャージが面倒」という点や「起動や決済の不便さ」などが挙げられていた。

 おそらく現代の大学生は低価格の商品を購入する場合などは、支払い過程を最小限にするためにQRコード決済を利用することが多いが、高価格な商品になるほど慎重になるせいか、あるいはチャージの頻度を減らすために購入金額に応じた現金決済とキャッシュレスの使い分けが発生しているのだろう。

学生が現金を手放せない現状 キャッシュレス化は本当に進んでいるのか

 上記で取り上げた調査も踏まえ、実際に筆者の大学生の友人26人に「若者のキャッシュレス化は進んでいるか」というアンケートに回答してもらった。

 まず、注目したい点が、26人全員が「若者のキャッシュレス化は進んでいると考える」と回答したのに対し、実際に頻繁に使っている支払方法を尋ねると「現金」と答えた割合が最も多かったという点だ。

 また、「大学の構内にある生協の食堂あるいは学校の食堂で対応している支払方法」についての質問を行ったところ、「現金のみ」が意外にも一番多い結果になったのだ。

 理由を伺うと、大学の構内にある食堂が、食券を現金で購入する方式になっている場合や、自分が普段使用しているスマホ決済アプリが大学構内で対応していないなどの状況があることから、現金で支払わざるを得ない事情があるという。キャッシュレス化が進んでいるという認識があるにも関わらず、完全には現金が手放せない状況にあるのはこうした大学の実態も影響していると考えられる。

 さらに、スマホ決済アプリと現金を併用して利用していると回答した人の半数以上がクレジットカードを所有していないということが明らかになった。この理由として、スマホ決済アプリにはクレジットカード決済では行えない割り勘、送金サービスなどがあり、銀行口座と連携していればクレジットカードを所持していなくても不便さを感じていないことが考えられる。完全な現金離れが進まない背景には、「キャッシュレス決済=スマホ決済アプリのみ」と限定的にしていることも一因なのかもしれない。

「大学生協アプリ(公式)」が浸透するには? キャッシュレス決済のメリットから考える

 消費者庁の調査で明らかになったように、低価格の商品はQRコード決済を行う傾向にあることからも、大学生協が電子マネーの使用を開始したことは評価できる。支払いの効率化が求められる現在、キャッシュレス決済を使用しておつりが出ないことはメリットのひとつでもあり、レジでの支払い過程が短縮することで大学構内の食堂による混雑緩和が期待される。また、「生協電子マネー」での決済金額に応じて付与されたポイントはすぐに電子マネー残高にチャージされるため、このシステムは食費が抑えられることは大学生にとって大きいはずだ。

 今後さらに大学生協のキャッシュレス化が浸透するためには、世間で進んでいるとされるキャッシュレス化に伴い大学側も大学生協の決済アプリだけにとどまらず、様々なスマホ決済アプリとの連携を図ることや、アプリの設計を見直すこと、混雑緩和のためにもセルフレジを導入し、食堂で注文したメニューのバーコードの札を各自読み取り支払いを行う形式などをとることも解決策となるだろう。

 大学生協食堂内の混雑問題は、大学生のキャッシュレス化が完全には浸透していないという現実が浮き彫りになったともいえるが、キャッシュレス決済がより世の中に浸透するための第一歩になったと考えられる。食堂内で混乱が生じる事態が1日でも早く改善することを願っている。

(source)
https://www.univcoop.or.jp/info/faq.html
https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_001/

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